22話 ルール
雲一つない青い空に、綺麗な緑が広がる草原地帯。
いい芝生育ってます……って今はそんなこと語ってる場合じゃなくて!!
只今から、勝負の時。
目の前にはリゼが居て、隣に魔王、そして審判役としてノアが私たちの丁度真ん中に立っている。
公平に審判を下すのに魔王が選んだから、仕方無いけどとても嫌だ。
どうせなら、ちゃんとした審判がいい!!なんて口が裂けても言えない。
実力は認めてるけど、変態だから。
そして、変わった人がもう一人。
さっきはあえて言葉にしなかったけど。
やっぱりスルーできません!!
今、ノアがルールの説明してるけど、叫びたい!!
『『『なんでおまえは白衣なんだ!!』』』
叫びたくてうずうずするくらいに。
だって考えてごらんよ。
普通は動きやすくて、防御性の高い服を選ぶはず。
なのに、リゼは何故だか白衣を着ている。あとは普通に軽装だ。見る感じ防御力が高い風でもなく。
例えて言うなら初心者が初めて買う装備くらいのレベルだと見て取れるし、しかも丸腰。
僕をどこまでなめてるんだろうと思うし、どう戦うつもりだよっと疑いたくなる。
「あの勇者さん聞いてました?」
「えっ?」
まさか聞かれるとは思ってなかったから、ノアの問いかけに反応が遅れた。
ノアは、はっと息を吐いて。
「その様子だと聞いてないですね勇者さん?」
「ごめんなさい」
素直に謝っておく。
これから試合なのだからルールを知る必要がある。
知らなくて違反して失格とか、ないもんね。
「今度はちゃんと聞いててくださいね。また一からの説明は面倒ですから簡単に言います」
「うん」
「ルールは絶対に魔法を使わない剣術勝負です。剣・刀・ナイフ等々、刃物ならなんでも使って良くさらに何本使おうが構いません。勝敗は相手に参った等の降参を認めたり、意識がなくなったりした時点で、勝敗が付く形式です」
なんともわかりやすい説明。
すっごいあっさりだけどさっきあんなに長かった説明はどこへいったのか。
「わかりました勇者さん?あぁもちろん相手を殺したりしてはいけません。あくまでも試合ですからわかってますねリゼ」
なんだ、この言い回しはと疑問に思いながら、目の前のリゼは赤い髪を遊びながらつまらなそうに、
「わかってるよ。気絶ぐらいで、すませればいいだろうアークス?本当なら命がけがいいだけど」
「リゼ」
「はいはい。アークスに説教食らうのはごめんだ。久々に出してもらったんだ。暴れさせてもなわないと」
何故だがリゼはノアを睨んでから僕に向けてふっと笑う。
「せいぜい楽しませてもらわないとな、お嬢さん?」
僕は目を見張る。
今まで会話をしていなかったからわからなかったけど、こないだ会ったときと別人ようだ。
どこがと言われたら、どうと答えられないけど……。
明らかに殺気が含まれた目で笑われ、それに周りの空気が違う気がする。
何故だが緊張した。
丸腰の相手なのに悔しい。
悔しいのに……。
「これおいしいな」
「でしょ!頑張って作ってきたの。でもお兄さまにだからあんまり食べないでよティオ」
「これ、味濃いのよ。大味なのよ」
「文句言うなら食うんじゃね!このトリオ!」
後ろが妙にうるさい。
笑い声が聞こえる。
わかってるよ。もちろん声の主達を。
見事に僕の緊張感をぶった切るような事をしてるやつらは……レベッカや、ティオ、えっと……名前忘れたけどあの鳥もいるな。
きゃっきゃ、きゃっきゃ聞こえて耳障り、ちらっとだけ様子を伺ったが見なきゃよかった。
近い所でレジャーシート開いて、お弁当を食ってるけど、ピクニックに来たのかアンタらは!!!!
『『どこぞの家族かよ!!!!』』
ってつっこみたくなる。
いや、叫んでもいいかな?
僕いつかキレそうだわ。マジで。
笑顔でティオとか、殴りたいもの。
「アンジュ顔怖いぞ。なんか笑顔なのにオーラ黒い……」
「わかってるね。さすが魔王様」
「……見ればわかるよ。誰だって」
魔王がボソッと言った。
まぁいいや、どう言われようと、このイライラは勝負で発散すればいいだから。
いつの間にか、悔しい気持ちも消えてたし、後ろがうるさいけど集中してやればいいことだ。
今も、殺気を放つアイツを、止めればいいだけなんだから。