21話 過去
12話を書き直しました。
追加したので、話が見えないかもしれません^^;
先に読んでもらえると嬉しいです。
それはリゼを追い出した後のこと。
まだ僕は部屋に返してもらえませんでした。
このしーとした空間苦手なんですが……。
魔王に目を合わせると、
「それよりどうするんだ?リゼは強いぞ」
魔王は険しい顔をしながら言う。
もちろん僕はヘラッと笑って、
「大丈夫だよ。あんなやつ僕の剣でイチコロさ」
「……難しいと思うぞ」
勝つ気満々な僕を心配そうな目で訴えいる魔王。
何故さと眉を寄せ聞いたら席に戻って話すといい魔王はベットに腰かけて、僕は近くの椅子に座ったがあまり納得出来ない。
(あんなへなちょこに何が出来るのさ)
ちょっとむくれながら魔王に尋ねた。
「で、何さ」
「リゼは化学者と言っただろ?あれは伊達じゃないぞ」
「うん、で?」
あまり聞きたくはないから適当に頷きだが。魔王も気付いてかため息を一つ吐いて続けた。
「アンジェ。ここからよく聴いておけ」
「はいはい」
「油断すると殺されるぞ」
魔王に真剣な目で見られた。
何故そこまで、心配されるかが不思議で僕はキョットンとしてしまう。
「どうして?まぁ決闘だからってそこまではしないでしょ?」
「……奴は二重人格だからな」
「はぁ!?もうわけわかんないですけど!!」
本当わけわかめで、眉間にしわが寄ってしまう。
「普段は温和なんだ。アンジェを助けたときもそうだったろう?」
「ああ。たしかに」
思い出しながら頷く。
たしかに会った時は、助けって貰ったからいい人かと思ったけど、よく考えると原因もアイツだし、助言も言動も今考えると変なやつだった。
それに突然怒り出すから、短気でもあるのかぁ。
この数分でこれだけ言える人物ってある意味すごいよなっとあきれた。
「だが……。リゼは自身に対する弱さを酷く気にしてる。魔力無しだからな。だからだ、禁句ワードがリゼを否定する言葉例えば"弱い""へなちょこ"等々だ。まぁアンジュは"強くない"だの魔力ナシをバカにしてたからな。もう一つの人格が出かかってた」
「はぁ……」
やる気ない声で、対応してしてしまう。
リゼってどんだけ精神弱いんだよ。
さっきだって泣いてたし。
魔王も僕の気持ちを分かっているみたいで、つっこみはしてこないけど。
「もう一つの人格は危険だ。そこの所は理解してほしい」
「例えば?過去に何かしたことあるのわけ?」
「あぁ。以前もキレることがあって新開発した剣で爆発事故を起こしてる」
表情を変えず、淡々と述べられた言葉には、耳を疑いたくなった。
普通にアリエナイですけど!!
「はぁ!?剣で爆発って可笑しいだろ」
「それが奴の武器なんだよ。言わば破壊ヲタクとも言おうか。キレると手をつけられないし、この前は城の一部破壊してノアにキレられてたからな」
「それは地獄絵図だ……」
なんか容易にノアのキレた姿が思い浮かぶ。
昼間見たからな。苦笑が漏れる。
「それより過去には村半壊で、死者は出なかったが、けが人は50人弱で重体は数人。迷惑な話さ」
「ちょっ魔王!他人事のように話すなよ!!仮にも側近の一人でしょ?」
「だ・か・らリゼは側近なんだ。見張るため兼彼を守るためでもある」
魔王が優しい表情に変わった気がする。
それと今の言葉にどんな意味が込められているか僕にはわからくて首を傾げ、
「どういう意味?」
「アンジェならわかってると思ったんだがな。同じハーフとして見てもわからなかったか?」
はっとした。
なぜ魔王が知っているか、問いただしたかったが、ぐっと堪える。
これでキャンキャン吠えるように、話題に噛み付けば、認めてしまっているようなものだ。
「……知らなかったよ。リゼがハーフなんて、魔力ナシでも気付かなかった」
「リゼは魔族の血の方が多いからな。気付かれにくいが勘がいいやつは気付くさ。それに小さい頃は魔力ナシで虐められた。まぁこれが原因で二重人格が出来たし、被害拡大だし、もうやってられないよ」
「って最後!!愚痴かよ!!」
盛大につっこむ。
そらもう、せっかくシリアスチックだったのに、あんたなにしてんのさ!的に。
「いいじゃん別に」
ぶうぶうっと魔王は口を尖らせながら言う。
そんな姿が……
まぁかわいいから許す!!
「しっしかたないな」
あぁ。できるなら頭とか撫でたい。なぁなんて妄想してると、
「アンジュ。調べさせてもらったよ。アンジュレッタ・ガーネット」
くすりっと笑う姿は、子どもながらに、魔王の風格を醸し出すには充分だ。
何故だか嫌な予感に変わる。
「なっ何をだよ」
「君のことだ」
藍色の目が止まる。
「契約のときに"あんな"条件出すんだからね。早急に調べたら、いろいろわかった」
「……そう。何もかもバレバレってわけだ」
「あの子たちを守るためでしょ?」
そう笑顔で答えられては、反論する気も起きない。
僕も頷いて、
「……そうだよ。只でさえ魔族とのハーフで、孤児院出身なのに、魔王と協力する勇者なんてありえないじゃん。裏切ったと思われて、家族が……大切な人が殺されたんじゃ堪ったもんじゃない」
これは本当の気持ちだ。
魔王に協力するための唯一の方法。
誰も傷つかなくていい。
これでもう人質じゃなくなるわけだから。
なんだか、しんみりした空気が漂う。
はっきりいうとこんな空気は嫌いだ。
まず、魔王の表情もくらいしな。
なぜ魔王が僕ことでそう落ち込むのか、別に協力者だからってまだ1日しか過ぎていないのに不思議だ。
でもこんな表情が見たい訳じゃない。
「そんな辛気くさい顔はやめてよね。これでも元気にやってこうと思ってるだから!」
「ああ」
「だから〜〜!!その顔が辛気くさいって言ってんだ」
僕は椅子から座ったまま、魔王の頬を両側からひっぱり叱る。
柔らかく伸びる頬が笑えてしまう。
「あふんじゅ!はなふぇ(アンジュ!離せ)」
多少笑えたからいいやと僕はほいと手を退ける。
赤くなった頬を魔王は擦った。
そんなに強く引っ張ったわけではないからすぐ引くと思うけど。
「これに懲りたら、もう詮索なんてするなよ?次はデコピンだからな」
「……意外にしょぼいな」
「どうどでも言えよ。殴られるよりはマシだろ?それに今はリゼに勝つだけを考えてるんだから。ほっといてくれ」
ふんっと顔を背ければ、くすっと笑う声が聞こえてきた。
笑ってるのか……。
「まぁ。頑張ってアンジュ」
「言われなくてやるさ」
まだこの剣術で負けたことないだもの。
勝つに行く!心に決めて、明後日の戦いに向けて、意思を固めた。