16話 ティオ
「待ってや!!」
「ぎゃあ゛ー!!!!!!
来ないでえぇえー!!!!…………ぐぃふぅ……」
目が合った瞬間から逃げられたので思わずヤっちゃった勇者です♪
もちろん殴った相手はティオくん。
僕を見るなり、猛ダッシュで逃げだすんだもん。
失礼極まりないよね。
更に僕を苛立たせた原因はティオを引き取りにいったときの案内された部屋。
保護されてるときいたのにも関わらず!!
優雅に紅茶飲んでやがるし、片手には女性の手を添えてはにかんだ笑顔。
もうサブイボです。
耐えられなくて『ティオ』て叫んだら。
案の定逃げられ反射的に追いかけた。
普通は体力的にティオが逃げ切るはずだけど、僕の怒りが思わぬ力か徐々に距離の差が縮まり手が届きそうなところできた。
そこで思い切り、首を猫のように掴んで強烈なパンチをお見舞いしてあげましたけどね。
綺麗に入ったパンチの反動で地面に倒れ見事完全に伸びている。
「いいの?こんな事して」
終始見ていたレベッカは不安そう戸惑っているようだ。
「いいの。いいの。いつものことだから」
僕は笑って誤魔化す。レベッカはティオを心配して言ってくれた事だが本当にいつもの事だ。
毎回毎回、この女たらしは!!立ち寄る村や街にいるお姉さま方に次々と声をかけ、"お姉さん俺と遊ばない?"など言ってナンパをしているし。
たまにだがセクハラ行為を働く事もある。
正義の味方が、こんな犯罪者でいいのか……いや、確実に良くないけど。
まぁ失神程度だから心配する必要もないだろう。
「でもアッシュ。さっきの言い方だとこの人知り合いなの?」
「うん。出来るなら赤の他人って言いたいけど……。説明するなら腐れ縁かな。小さい頃からの付き合いなんで」
「小さい頃から?」
「そう小さい頃からだよ」
笑いながら返すと、
レベッカは交互に僕とのティオを見て、
「……大変ね」
「うん。本当どうにかしてほしい。出来る事なら根性叩き直してほしい」
苦笑が漏れる。
変態で、女たらしだが魔法の腕はピカイチだから仕方ない。
王がティオを見込んでいるのだから。
変態なのにね!!
大事な事だから2回言った。
「それにしても綺麗な顔立ちね」
レベッカは屈んでティオの顔を覗く。
確かにティオの顔立ちは綺麗なものだ。
手入れがいい薄い茶色い髪は短髪で、端整な目鼻立ちだ。
今瞼で閉じているが淡い緑の瞳が隠れている。
そう普通にしていればティオだってかっこいい部類に入るはずだ。
まぁ残念なところがあるから女性に逃げるわけで……。
折角モテ要素があるのに勿体ない話だ。
「でもどうするの?これ」
「どうしようか。そこまで考えてなかった」
僕は腕を組んで考えていると、レベッカは待ちきれなかったのかティオの顔を叩き始めてていた。
「あの……レベッカさん。何やってるの」
「えっ起きないかなっと思って」
笑顔で言われても。
まぁ僕が本気で殴ったからそうそう起きないと思うけど。
「そいつ危険だから寧ろ近寄らない方が……」
「そうなの?凶暴とか」
「そいつ女た「きゃー」
「レベッカ!!」
叫びとともになんかバキッだか鈍い音も聞こえた。
ティオを見るとまた殴られたようで両頬が赤くなっていた。
(片方は僕のせいだけど……)
「あっ!!ごめんなさい。殴るつもりはなかったのに」
「何されたの?」
「えっ急に腕掴まれて驚いてつい」
えへっと笑って誤魔化しても怖いけど。まぁティオも悪から仕方ないよね。
「仕方ないよねってひどいよアッシュ」
「げっ読まないでよって起きてたの?」
瀕死の状態にでも陥ったかと思ったのに、怖いくらいにタフだこいつ。
「それにこの子のはアッシュの鉄拳より数十倍いい!!寧ろナイス☆」
「いいんかい!!」
「うわっ……」
一様突っ込みをいれとくけど親指をたてて、満面の笑みを浮かべているやつにきくとは思えない。
僕はまぁ慣れてるからはいはい的だけど、さすがのレベッカも引いている様子だ。
恐るべしティオ!!
「そこのお嬢さん」
「ナッナニよ」
「僕とデートしない?」
「はぁ!?」
こっ…………こいつバカだ!!!!!
バカと言うしかない。アで始まってホで終わってもいい。
この状況で誘うか普通!!
しかもレベッカ……。堪忍袋の限界なんじゃ
「ねぇアッシュ。もう一回殴っても彼構わないかしら」
「あっうん。大丈夫だと思う」
案の定切れた様子。
黒いオーラ見えます。見えてますよレベッカ!!
僕は僕で苦笑いしながら言ったけど、自業自得だよね。
「へっ?なっ殴る?」
ティオ緊張感ないし。おどけた顔してるけどこれからの裁きを想像すると身震いする。
頑張って!!
その後ティオの叫び声が響いたのは言うまでもない。






