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15話 伝言と告白

 爽やかな風がざわっと木々を揺らし、素肌を通り抜けていく。

そんな中立ち往生している勇者です。


 魔王から伝言をもらっているという鳥…オルセーって言ったかな?

ついさっきまで一緒にいたというのに、わざわざ使いを出させるなんて余程重要な事を言い忘れたのか……。


(……めんどくせぇー)


この魔王なんか言い忘れ多い気がするのは気のせいか……。


「で、言付けって何よ?」


痺れを切らしたレベッカが問う。


「……レベッカ様には聞かれないようにとも言い使っているから教えるのは……その無理なのよ」


「何よそれ!!失礼しちゃうわお兄様たら」


「まあまあ」


苦笑が混じりつつ、落ち着いて貰おうと言ったのに「笑うな」と怒鳴られるし……。

どうしたもんか。


 それでもレベッカはちゃんと魔王の言い付けを守るのか。

ちょっと離れた場所まで歩いていて木に寄りかかりこちらを睨みを気かせている……。


「とりあえず本題に入るのよ」


「うん」


オルセーが仕切り直し、僕も改めて頷く。


「魔王様からの伝言はレベッカ様に身分の事は伏せ、後の事は全部話せとの事なのよ」


……っへ?

今明らかに変な顔になっているだろう僕は、オルセーの言葉に頭がついていかない。


「つまりね、あのレベッカ様が嘘が嫌いのよ。

 それはもう嘘ついた奴はボロボロになるくらい打ちのめされたのよ。

 だからあんたも嘘を付かないように気を付けなさいなのよ」


まさかの手が出る発言!!

笑えない、笑えないよ。


(えぇもう付いちゃってますよ!!

 男って言っちゃったもの−!)


驚きのカミングアウトに僕の口元がひきつる。

そんな人だったとは……。

ただのお節介な女の子だと思ってたのに!!


それに心配までされてしまった……。

ちょいショック。


………つうか!!何回目だよって突っ込みたいくらいに驚くこと多いだけど。。。


「あんたちゃんと聞いてる?なのよ」


怪訝そうに聞かれたので慌てて答えたものの目が絶対疑ってる。


「きっ聞こえてるって!!でも全部ってそんな……言えるわけないよ!?」


「身分以外はなのよ。何をそんな驚いてるのよ。男のくせにしかっりしなさいなのよ!」


飽きれ口調で言われ、渇も入れられた……。

しかも僕は女で……って隠してるから当然バレてないだけなんだけど。

人生で鳥に渇を入れられるなんて……そうそうないよな。

うん。やっぱ鳥だし。


「なんかバカにしてるでしょあんたなのよ」


青い綺麗な翼で指されて言われた。

明らかに疑われてる。


「えっ何「肯定よ肯定なのよ」


「ちっ違う」


「何が違うっていうのよ。そんなに違うなら普通すぐ答えるのよ!!」


……しっ……してやったり顔された!!

なんか逆にからかわれてる気がするよ。

といか絶対……!!


「あんた。顔でモロバレなのよ。だから見え見えなのよ」


「見え見えって!!それに僕はバカにしてないし」


「してた!!これ断定たのよ」


このあからさまな言い方に、僕の中で苛立ちがプチッと音をたてて崩れる。

作り笑顔でそっと手を伸ばせばオルセーは「何なのよ」と言いながらそれほど警戒心もなくただ睨むだけ。

この隙をみて一気に鳥の頬掴む。


オルセーの驚く声が上がる。

うん甲高い声が……。

正直ちょっとうるさいくらい。

そして首を激しく振って掴んだ手を振り払おうとするが、僕の手は決して離さないようにしっかりと掴み外さない。

 やがて鳥の動きが止まり、荒い息が聞こえる。


「はぁ…はぁっはんひのよ!!あんた!!

(はぁ…はぁなにすんのよ!!あんた!!)」


「ナニモシテナイデスケド」


「しへるしへる!!ひぃからはゃくはひゃしはさいはのよ!!

(してるしてる!!いいから早く離しなさいなのよ!!)」


オルセーが翼で僕の手を挟み込み力で外そうと試みているみたいだけど、まったく効果無くただくすぐったいだけだ。まぁ当たり前だけど。


「もう余計な事を喋らないなら離すよ。鳥さん」


「ひっひつれいなのよ!」


「……」

僕はただ冷たい目で応対する。

オルセーがビクッと体をゆらし、


「はっはんた!はんのふくらいひなさいなのよ

(あっあんた!反応くらいしなさいなのよ)」


「……」


言葉に返すのも面倒なのでさらにキツく睨みつけると、

オルセーは更に身震いをして


「いや!!はひ、もうしゃへりません

(いや!!はい、もうしゃべりません)」


裏返った声で叫ぶ。

よっぽど堪えたみたいだ。

強く掴んでいた頬を軽くすると、さっと逃げて距離を置く。


(以外に弱い……?)


掴まれていた頬を擦り軽く涙が浮かんでいるようだ。


「別にそこまでは言ってないけど。で、話は終わり?」


「まだ……まだなのよ」


「えーまだあるの!?」


つい口が滑った。が仕方ないと思う。

本当に多いだもん!!もう。

軽く頭をかきながら改めて聞く。


「で、何?」


「……じゃ言うわなのよ」


怯えていた姿からすっと変わり、パッチリした愛らしい目が此方に向き。

また喉の調子を整え、


『今夜の夜部屋に来てくれ、あっこれは他言無用だから』


「はぁ!?」


さっきの伝言の声とは違い、まるで魔王が喋っているような声。

つまり本気の声だろう……。

って今まで手抜き??

それはそれでムカつくけど、今はそんな事を考えている場合ではなくて……。


またなのか!!

何度目のお呼びだし……。

つうか!!魔王は私の母親か!!

あっこれ、叫んでもいいですかね。

寧ろ叫ばせてくれぇ――!!

それぐらい注文多いなとうんざりし始めていた。


「……また顔に出てるなのよ。それは気をつけた方がいいなのよ」


「あっいけない」


オルセーに言われて、さっと顔を両手で挟む。

いくななんでも緩み過ぎだろう。

それに頭の中で『今夜の夜部屋に来てくれ』がリピートされてる。


うん、行きたくないからね。

面倒くさいのでお断りしたいけど仕方ない付き合うか。


「まぁそう言うことだからあんたも頑張んなさいなのよ。じゃ私はこれでなのよ」


オルセーは急に言い出すと翼を広げ飛び立とうとしていた。


「っちょっちょっと!」


僕の声は虚しく飛び立ってしまった。






「本当伝言だけ……はぁーレベッカにどう話せばいいんだよ」


「私に何を話すのよ?」


驚いて身を捩ると、すぐ後ろにレベッカがいった。


(レベッカ戻ってくるの早すぎ……)


半ば焦りながら、冷や汗が背中を這う。


「それはその……。えっと」


「はっきりしないのね」


レベッカは低音で、はっきりしない僕に吐き捨てるように言う。


「いや、言う!!ちゃんと!!」


一度腹を決めた事。

いや、決めさせられた事だけど。

このまま、ずるずる引きずるよりずっとましだろう。僕は覚悟を決め重い口を開いた。





「……つまり、アッシュはニックネームで本名はアンジュレッタ。

 お兄様の呪いを解く協力者で今いるわけね?」


「はい。そのとおりです」


思い切り視線が痛い。流石、美人の睨みはドスが効く……。


「……っで女の子なの?」


眉を器用に方眉だけ上げ、藍色の瞳がギラリと覗き。

それはまるで鋭く突き刺すかのように眼差しを僕に向ける。

怯みそうになるがそこは堪えて、まっすぐにレベッカと向き合い。


「……私は正真正銘女です。

 嘘付いててごめんなさい」


「それはもういいわ。それより……」


急にガッシッと両肩を掴まれて、背中を木に押し付けられると


「お兄様の事をどう思ってるの?」


「へぇ?」


「だからお兄様の事よ!!」


突然に魔王の名が出てきょとんとしてしまう。

何故?魔王の名前がこの状況で出てくるのだろうか。


必死に考えても魔王と勇者の関係だし、本来は敵同士なのだ。

素直に変な魔王ですと答えるべきか悩んだが、それはレベッカにも失礼に当たる。

だから考え直して、言葉を絞り出す。


「……う~ん、ちょっと強引で天然そうだけど憎めないかな」


「……そうなの。って私は人柄を聞いてんじゃないわよ!!好きかどうかよ!!」


レベッカの発言に目を見開いて驚く。

『好きかどうか』ってまさかのそっち!?

出会ってまだ1日……24時間も経ってない。

ましてすぐ、好きになるなんて一目惚れぐらいしか考えられないじゃないか。

第一に僕は魔王にホの字にもなってはいない。


「別に何とも思ってないけど……」


「えっじゃ恋愛対象外って事よね?」


「そうだよ」


「そう!よかった」


レベッカの険しい表情が一気に明るくなり、まるで花が咲いたように可愛らしい笑顔がこちらを向く。


「えっ何が?どうしたの?」


掴まれていた肩は外され、変わりに両手をぎゅっと握りしめられ、


「もうアッシュが悪い虫かと疑ってしまったわ。ごめんなさいね」


「えっうん、大丈夫」


僕も笑って返す。

もう怒ってないのかレベッカもにこにこしている。

 レベッカがなんでそんなに(こだわ)っていたか謎だが、誤解が溶けただけでも良しとしよう。


「でも、アッシュ」


「何?」


「嘘ついたから罰に何かやってもらうわ」


「!?」


輝く笑みで言われたことにただ驚いて、


「ちょっと罰って何!?」


「そうね」


これ迄の笑顔とは違い、なんか企みを含む笑顔に変わった気がする。


「アッシュの正装が見たいわ」


輝く瞳がこちらを向く。


「……男物で?」


何となく分かったが、あえて気付かないふりをしてみた。

だって着たくないだもん。

女物の服なんか……。そう願っていたのに、


「違うわよ!!女の子の正装よ」


やっぱり、きたー!!


「いや、それは無理!!絶対無理!!」


必死になって無理と伝えるが、レベッカは逆に楽しそうに『駄目』の一点張り。

言葉の最後にハートが付くくらい甘い声で言うし!!


「ほっ他にしよう」


「嫌よ」


「何で!?」


「何でてそれは

 そんなに嫌がるからよ」


誰もがうっとりするような笑顔で言われたら……


「って!!そこかよ!!」

思い切り突っ込みをかました。

こう言われたって普通は頷かないと思いし。

「うんそうよ。でも命令だから着なさいね」

レベッカもレベッカで全く引かず。

黙秘で構えようとしたが、レベッカの目が着ろよと訴えるように訴えかけられ、


「……着ます」


もう頷くしかなった。あははと笑うしかない。


「さぁ行くわよ」


レベッカにぐぃっと腕を掴まれてまた歩き出す。


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