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14話 掃除と喧嘩

 今小部屋で、小さな試練が出されていた。

呪いにかけられた子供の姿は決して背は高くはなく一般的な高さだ。

しかし自分がノアに向けて投げたパイは壁にしっかり付いており、いつの間にか残骸が床に落ちている。

壁や床は一様ノアの魔法で守られているから汚れてないといえば汚れてないのだが、油物を拭き取らないとシミになってしまうので掃除しなければならない。


 俺は長い髪は束ねて後ろに結い、三角巾をかぶり汚れてもいい服となぜがレースがあしらわれたエプロンをつけた。もう強制的につけさせられたんだけど……。

後ろで笑ってるノアを一発殴りたい衝動に駆られるが堪えて。

片手に雑巾を持って今、背で必死に伸ばして、上の壁に付いた油を拭き取ろうと限界まで振り上げるが届きそうで届かない。

常につま先だちしているから、よろつきながらならなんとか落とすが……。


(……何やってんだろう)


情けなくて笑えてくる。

側にいる見張りは俺に休む隙を与えず、作業を見守られてるし。


「なぁノア……」


「なんですか?魔王様」


「何で俺だけこの部屋の掃除なの?」


振り向かずに問いかけると、ノアのの空気が更に重くなったようで怖くて振り向けない。


「当たり前です。汚した張本人でしょ」


「うぅ……。返す言葉もございません」


「……分かればいいです。それにあとでレベッカ様にもドア直してやってもらいますから」


だからちゃんと掃除してくださいよと釘を刺された。

いつもながらに淡々とした口調だったけど、ちょっとだけイラッときたいや、さっきからこいつにイラついてるけど。


(わかるわかるけど……。原因お前のせいじゃなかったか!)


言いたい発言をまた堪え、それに言われたからには手を休めず動かして汚れを取る。

やっぱり身長低いのは不便に感じる。

はぁっとため息を吐き、ずっと伸ばしている腕が疲れてきた。


(……くそっ!!届かない)


もうがむしゃらに掃除してやろうかと更に手を伸ばすが、つま先立ちした足がぷるぷると震えるだけで届かない。

必死にやってるときにすっと影が隣にきてこっとと音がした。音のした方を向くとイスが置いてあり、


「もう、届かないならこれ使って下さいよ」


「あ…ありがとう」


まさかのノアの手伝いに思わず見つめてしまう。

ノアは三角巾に触れて、前にずれていたのだろうか、後ろに引っぱり、


「魔王様……私そこまで鬼畜じゃないですよ。でもちゃんとダメなことは学んでいただかないとそれに26歳なんだからそろそろ落ち着いて下さい」


「いっ痛い所ついてくるね」


「側近ですから」


爽やかに笑われて、つられて笑うが俺の方は苦笑だ。


(やっぱり小さい頃から一緒に居るだけあるよなぁ)


感心していると「さっ早く掃除して下さい!これでも魔力消費してるの私なんですから」言われて素直にイスに上り、壁の汚れを落とした。


「そういえば勇者さんに何か伝え忘れてません?」


「えっ……なんだっけ?」


「とても大事なことだったと思うですけど……」


「『あ!!』」










 魔王城を出て森の道、まだまだ歩き続きけている。

さすがに青空カラオケは終わって、他愛も無い会話をしていたレベッカと僕。

あと10分くらいで着くらしい。

のどかな風景になんだかさっきの出来事が嘘のように落ち着きを取り戻していた。


「アッシュって絶対嘘つかない?」


「どうしたの急に」


「私、嫌いなのよね。嘘が」


「えっ」


握り拳を作りならがだってっと嘘は相手を騙す事なのよいいと思う!!っとレベッカに熱弁されてしまった。


さっきまで穏やかだった瞳がギラギラと闘志を燃やすような瞳に変わり、しまいには僕の肩を捕まれて揺さぶるられて同意を求められた。


「れっレベッか!!ぉっ落ち着…こう」


「だからアッシュはどうなのよ!!」


(完全!!無視ですかレベッカー!!うっっかっ勘弁して……)


流石にここまで揺さぶられると気持ち悪くもなってきたときに空から何か降りてくるのが見えた。

凄い速さで……こっちに何か落ちてくるって表現が正しいかも。うん?こっちに………?

アッ!!!!!!!!!!!!!



「レベッカ!!」


危機を察した僕は大声を呼びかけ、肩を突き飛ばした。「えっ!!」と声が聞こえ、バランスを崩れたのがわかった。が僕の肩を掴んでいたレベッカは僕を巻き込み、押し倒すような形に倒れてしまった。

 咄嗟にレベッカの頭を地面すれすれで支えるように左手で受け止めたけど、はっきり言って今の状況はかなり気まずい。

「だっ大丈夫?」


レベッカの安否を気遣うものの、今の状況では確実怒られるのは目に見えていた。


 今僕の左手は地面に付きレベッカの頭を支え、乗り上がらないように避けて倒れた反面に顔が5cm以内という何とも間近で……。

端正な顔立ちも、綺麗な藍色の瞳も魔王とそっくりでドキリとしてしまう。


(流石兄妹だ)


妙に納得していると、


「大丈夫わけ……ないでしょ!!どういうことよ!!」


叫び声で耳がやられそうになった。

キーンと耳鳴りがするほど。


「おっ落ち着いて」


「これが落ち着いていられますか!!」


やっぱりレベッカの怒りゲージが上がったと同時に"ズドン"と大きな音があがる。


「何、今の!?」


音がした方向を二人して見るとそこはさっきまで僕らが立っていた場所に小動物が入りそうなくらいの穴が出来ており地面は深く(えぐ)れていた。


「……もしかして助けてくれた?」


「うん。……ごめん。咄嗟だったから」


「そう。こちらこそごめんね。怒鳴ったりして」


「いいよ。それよりレベッカに怪我がなくてよかった」


自然に笑みが綻んだ。

レベッカの目が一瞬見開いたような気がしたがすぐに顔を背けられ、ほんのり赤くなっていたのは気のせいか……。


「それよりそろそろ離れてくれない?アッシュ」


レベッカに言われて今の状態を思い出してパッと起き上がって離れた。


「ごっごめん」


「いいわよ!もう謝らないでよ。気にしてないから」


レベッカも起き上がって苦笑して言ってくれた。

そのとき『…………のよ!!』とどっからか声がした。


「今変な声が聞こえなかった?」


「ええ。聞こえたわ」


レベッカが頷き二人は辺りを見回すが特に変わりはなく、のどかな風景のまま。


「変ね……?」


不思議に思って暫くそのまま警戒していると『「まったく間違えたのよ!!もう痛いじゃないのよ。ずれないでほしかったのよ。」』とエコーがかかった声の方を見るとさっき抉れて出来たであろう穴から青い何かが顔を出し地面の端を掴むと、更に青いのがまた出て『よいしょっと』掛け声のような声がする。

最後にひょっこり出てきた頭でわかった。なんと鳥だ。

鳥が這い上がりながらグチグチ文句を言っている!!

唖然とした僕とは違いレベッカは鳥を見据え。


「あんただったのね。トリオ」


地面に足をつけた鳥は軽く羽根についたであろう土を叩き落としてから、くるり首を曲げ。


「トリオじゃないのよ!!レベッカ様ちゃんとオルセーって名前があるのよ!!」


いかにも不機嫌な声で答える鳥がレベッカを睨み、レベッカも負け時と睨み返す。


「あんたなんかトリオで十分。でなんであんな加速して落ちてくんのよ!!

 もしあれに当ったら私たち死んでたわ!!」


「あら?大丈夫ですのよ。レベッカ様頑丈だから大丈夫なのよ」


「なんですって!!!!!!!!!この鳥男!」


「聞き捨てならないのよ!!漢字だからって私の名前じゃないのよ!」



「「「ストップ」」」



僕が声を張り上げて叫ぶと、一人と一羽が一瞬時が止まったかのように言い争いが止んだが逆に二人から睨まれ、


「アッシュ!!邪魔すんじゃないわよ」


「そうよ!!これは私とレベッカ様の戦いなのよ!!」


「でっでも」


「「でもも、それもないの!!黙らしゃい(なのよ)!!」」


息もぴったりに怒鳴られ、また言い争いがはじまりた。

僕はため息を吐いてただ呆れた。


(仲が良いのか、悪いのか……)


 やめてほしくて怒鳴ってもこれでは前に進まないし第一にめんどくさい。

争いは嫌いだし、見るのも起こすのも嫌だ……。

 それでも暫く収まるのを待っていたが、一向に終わるようすがない。


(もう……いい!!使ってやる)


目を瞑り、『大気よ水と成れ。彼の者を溺れさせよ―水の牢獄―』と二人に向けて詠唱を発動させた。


すると一瞬のうちに空気が水の糸に変わり、それがいくつも折り重なって一本の大きな紐ような水の塊に変わった。

それは直ぐ様足元から一気に頭まで覆い尽くす。

それは一瞬の事で叫ぶ事など出来ぬほど早く彼女等を襲ったのだ。


(これで大人しくなってくれればいいんだけど)





―数分後―




「……じょっ……冗談じゃ……なぃ…わ」


「……まっ…まったく……その…通りなのょ…」


ぐったりしている一人と一羽。

流石にやりすぎたかなって思ったけど、魔法が苦手な僕はそんな加減の操作なんて出来るはずも無く。

こんな風になってしまって申し訳ない気持ちがこみ上げ、


「ごめんなさい。でも喧嘩はやめてほしいから……」


「……わかったわ。もうやらないから」


「本当?」


「本当よ」


レベッカは笑顔で頭を撫でてくれた。

鳥も『もういいなのよ。今回のことは水に流すのよ」と近寄ってまるで慰めているようだ。


 和やかな空気が流れたあとレベッカが思い出したように、


「そういえばオルセーなんであんたが此処にいるの?」


「あっすっかり忘れてたのよ!魔王様に言付け頂いてるのよ!朱色の毛の子にって」


「えっ!?」


魔王からっと僕とレベッカは驚き、二人顔を見合わせてまた鳥を見てしまった。

どんなことを言付かって来たのか……。

なんとなく不安が募った。


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