13話 求む
只今、青空教室ならぬ青空カラオケやらされている勇者です。
まだ勇者なはず!!ってあいまか!!
まーそれは置いといて、なぜ青空カラオケかって?
話せば長くな「さっきからごちゃごちゃうっさいわよアッシュ!!歌うときは歌いなさいよ!!」
「なっ!!うっ……はい……」
……実はまさかのレベッカに連れられて、勇者村に向かってる最中です。
えっ話飛びすぎ?
それは僕も思うけど……。
実は契約書にサインしたときに、レベッカが扉を足で蹴り破ってきた。しかも第一声が『どこ行ってたのよバカ兄!!』だ。
これは皆(って言っても三人しかいないけど)固まるよね。
流石のノアも固まってたから、これは相当お転婆と言うのか、パワフルと言うのか。
まぁ苦笑ですよね。
その後珍しくキレたノアの形相といったからなかった。
魔王がパイ投げで壁を汚したのもイラついていたのも原因だけど、決めてはレベッカが壊したドアだ。
『このバカ兄妹!!』
ノアが一喝し、「魔王様はちゃんとして下さいもういい年でしょ!!」とか、
「レベッカ様もいちいち物を壊さないで下さい!!女性なのだから慎ましく淑やかに」とか、
「とにかく物に当たるのはやめてください。
これは貴方達の物ではないのですよ!!」とか、
眉毛がつり上げて、長々とお説教をしていたのは言うまでもないけど。
端から見ていた僕は、ちょっぴり面白かったけど。
なんせ、あの魔王やレベッカがしゅんっと縮こまって素直に頷いていたから。
だから反省しているのかなと思ったけどまさか!?
レベッカが僕の腕を引っ張り、部屋から連れ去られるなんて思ってなくてただただ驚いて、
(だってレベッカが探してたの魔王の方だし!!なんで僕!?)
笑いたきゃ笑え的な精神で今こうしてレベッカについて行ってるしだいです。
でも少しだけありがたかった気がしないでもない。
―回想―
小さな机を精一杯身を乗り出してあんな風に誰かに求められることなんてこれまでなかった。
"勇者"だから称えられ頼られてはあったが僕自身を見てくれる人なんてティオか育ての親と兄弟たちくらいだったから。
他は全て可哀想な人達だったから……。
だから心底驚いた。
ここまで強く、誰かに求められたのは初めてで正直戸惑った。
"勇者"ではなく"アンジュレッタ"として……。
魔王だから当たり前だけどそれでもとても嬉しかった。
(普通勇者にお願いしたりしないしね)
つい緩み笑顔になりそうな顔をなんとか引き締めて契約交わした。
今でも思い出す、あの強い眼差しにキュンと胸が疼く。
これも初めてだから何が原因か謎だけど、でも分かることが一つ。
あのまま彼処にいたのでは、いつか表情が表に出てしまいそうだったから。
(ちょっとだけ。レベッカに感謝かな……)
僕はクスッと微笑み隣で陽気に歌っているレベッカの横を歩く。
勇者村に着くまであと少しの事。