カワイイ♪
「カワイイ♪」
「めっちゃいいよね♪」
「私もついに飼ったの♪」
右を見ても左を見てもSNS でも、その生物を見ないということはないほど、皆がその生き物を飼っていた。
皆を熱狂させるその生物は、ある国の密林で発見された。
それは丸みを帯びて、もふもふで、可愛らしい目をもち、聞き心地のいい声で鳴き、抱くとどうしようもなく幸せな気持ちになった。
しかもこの生物、単体で個体を増やす事ができる。
丸くふさふさの尻尾が大きくなると、体から離れて別の個体になる。
今までの生殖と全く異るその生物を、生物学者者達は我先にと研究したが、その可愛さにやられて研究にならなかった。
それは研究者だけではなかった。
あらゆる者がその可愛さに、仕事や勉学に向かわなくなった。
それを見て、ほくそ笑む者がいた。
遥か上空、月の裏側のUFOに乗っている宇宙人達だ。
「状況はどうか?」
「司令官ご覧ください。あと一息で制覇できます」
「我々の占領政策は完璧だ。武力を使うことなく侵略できる」
「ですが幼子をもつ家庭では戦果が思わしくありません」
「では、KAWAIIレベルをMAXまで上げろ。これでトドメを刺すのだ」
「MAXまで上げました。これで奴らは食べる事すら忘れて、愛で続けるでしょう」
「カワイイは最強だからな」
「大変ですっ!」
「どうした」
「モッフーの生体反応が消えていきます」
「どういうことだ」
「奴ら…こんなことが…!モッフーが圧死していきます」
「具体的に報告しろ」
「強く抱きしめて圧死、窒息、中には食べられた個体まであります」
「映像をみせろ……なんと言うことだ。ここの連中はこんなにも恐ろしい生物なのか」
司令官が見つめる映像からは、『かわいすきるっ』『ぎゆっっってしたい』『いじめたくなる』『食べちゃいたい』と言った声が響いていた。




