第5話 未来は、僕たちが壊した
屋上は、思ったより静かだった。
風の音と、遠くの運動部の声だけ。
フェンス越しに、空が広がっている。
「……結果、見たんだね」
彼女が先に口を開いた。
「うん」
「どうだった?」
一瞬、迷ってから答えた。
「0.01%」
彼女は、苦笑した。
「ほとんどゼロだ」
「それでも」
言葉を切って、続ける。
「君の0.00%よりは、ほんの少しだけ上だ」
沈黙。
彼女は視線を伏せたまま、動かない。
「だから、言ったでしょ」
震えた声。
「期待しない方が、楽だって」
「分かってる」
でも、と続ける。
「それでも、僕は君を選ぶ」
彼女の肩が、わずかに揺れた。
「未来がどうであれ」
一歩、近づく。
「君と一緒にいる今を、選びたい」
「……怖いよ」
初めて、彼女の声がはっきり震えた。
「期待して、裏切られるのが」
「うん」
「私、耐えられないかもしれない」
「それでもいい」
逃げなかった。
「裏切られるかもしれない未来より、何もしない確定した未来の方が、僕は怖い」
彼女が、顔を上げる。
目に、涙が溜まっていた。
「ずるい……」
「そうかも」
「そんなこと言われたら……」
彼女は、ゆっくりと僕の制服の袖を掴んだ。
その瞬間。
校内ネットワークに、エラー通知が走った。
《未来適性観測AI:予測不能事象を検出》
僕たちは、そんなこと知らない。
ただ、彼女の手が、確かにそこにあった。
「……ねえ」
「なに?」
「未来って、本当に決まってるのかな」
僕は、少し笑った。
「少なくとも、今は壊れたみたいだ」
0.01%。
取るに足らない数字。
でも僕たちは、それを“可能性”と呼んだ。
そして、選んだ。
――未来を、信じることを。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
未来がほぼ決まっている世界で、
それでも「選ぶ」ことに意味はあるのか。
そんな問いから、この物語は生まれました。
0.00%と診断された彼女と、
それでも手を伸ばした主人公の選択を、
少しでも心に残してもらえたなら嬉しいです。
ご感想や評価をいただけると、今後の創作の励みになります。
どんな一言でも構いませんので、感じたことを残していただけたら幸いです。
ありがとうございました。




