No.2「潜入、至黒城城門」
「あの小羽根の生えてた狩人達は布石だったんだな。こうもこの羽根付きどもにジャンプされるとこちらのやり方も一定とは行かないのでリズムを崩される」
「分かるよ、私もシコクとやり合ってた時従者としてのこいつらの厄介さには手を焼いていた物だ」
「アンタは人の時分何の武器を使ってたんだ?」
「ナイフだな。エンチャントにも、投擲にも打って付けの小回りの利く武器と言える」
「なるほどですねぇ、一騎当千を実現していたアンタの絵面の説得力が増す新情報だそれは」
おでこに手を持って行き感嘆のポーズを取るハイズ。そこに少女のか細い悲鳴の様な要求が挟まる。
「パパ、パパー、お小遣いぃ~」
「確かに私は青年を上からの物言いで青年と呼んでいるが、正直父親レベルにランクアップさせられるのは心外なのだが…。それはそうともう使い切ってしまったのか、小遣いならぬ施した矢の方は」
「ジャンプが不規則だから命中率が悪いんですよぉ。それに素の矢だと費用対効果が微妙だし。あたしもあたしで矢の生成速度には限界が有りますしね、魔力源たるソラ国領土の心許無いこの強化狩人蔓延るエリアだと」
「だからと言って俺の大剣での打破をお座なりにして進軍を主軸に据えると何処かで魔力の消費と供給のバランスが壊れて袋小路に入り込む危険性も有るんだよな」
「ここが城下だとして城内はもっと危うい敵の配置が成されている可能性も有る。じっくりゆっくり焦らず事を片付けて行こう」
そこから数時間、この戦の膠着は続いたが押されると言う事は無く進軍自体は緩やかでも確かな物として達成する事が出来た。
そして門が見えて来た。黒い煙に覆われている、魔法の門だけあってただの在り様を示してはいない。接近し突如として現れたそれは城下エリアの終わりを物語っていた。
「あ、来ましたね旦那、一旦の終着点が。先生もこっち来てー」
「ああ今行くよ、そろそろフロウの癒しが丁度欲しくなっていた所だ」
三人が集まる。地面に太い蛇の様に連なっているソラ国領土の道のりだがその進路は間違っていなかったと言う事だ。それは刻みの呪いと言う楔を打ち込んだ地点、シコクの現在位置を判って居るフロウの導きの成果に他ならなかった。
「あれを潜ると何が待っているか分からない。二人とも覚悟はいいか?」
「ああ、覚悟出来ている」
「なる様になるでしょーレッツラゴー」
未だ門近くに残っている敵兵のジャンプを交えた攻勢に牽制の応酬をしながら、三人は闇の門内部へと潜入する。




