No.5「仮初の癒し」
場面はアーロゥの初めての無敵化兼コントロールの効かない瞬間移動が有った時に戻るが、ハイズはギスギスと襲う今倒したばかりの狩人の黒い想いと魔法力の負荷に苦しめられ出した。
「よくやったハイズ。切った後は無理せず私を頼ると良い」
“不滅の蝋”フロウの癒しの光が彼を包む。フロウはその尽きない輝かしさで彼らの傷や精神的苦しみを抑える事が出来た。
「すまないフロウ。全く、こいつらを月の満ち欠け二周分、三十日間の二連発で往なしていたと言うのだからアンタの豪胆な武勇伝には恐れ入るよ」
「まあ私の場合は倒す事の出来ない狩人と言うアンデッドにしばしの休息を与えると言う程度の事しか出来なかったがね。その時点で分かってはいたよ、私と言う存在はお前達が来るまでの時間稼ぎのそれでしか無いのだと」
フロウの労いの言葉にアーロゥも空かさず反応する。
「へへっ、あたしみたいな半端者も勘定に入れてくれるなんて太っ腹だね、フロウの旦那」
「期待している分の言葉を吐いたまで。働き如何では撤回しなくてはならんかも知れんがな、”亜の六”少女よ」
「おー怖い怖い。せいぜいハイズ先生の邪魔にならない様上手く立ち回らせて貰いますよっと」
「先生はよしてくれって言ってるじゃないか。それにしてもフロウ。三日狩人を倒し続けて来てやっとこんな質問をするのもアレなんだが、この世界には疲労の概念と言うか、生理的な消耗は無いのか? 睡眠が有ったらお笑い種だが、例えば食事の必要性とか」
「私は六十日ヒトヨ達に対抗し活動し続けたが、はっきり言って夢の力が医学で言う点滴みたいな機能をしていると思われるので直接そう言った消耗に巻き込まれた記憶は無いな。だが”無限永久”であり何より”灰頭”の青年。お前の狩人の残滓としての灰の感情を理解してしまう頭の傷は私の仮初の癒しだけではどうにもならない負荷を抱え込む危険性が有る。そこは忘れない様にして欲しい」
「そそっ、何か有っても先生様々な御一行なんだから、そこら辺の自覚はちゃんとして貰わないとね」
アーロゥは飽くまで先生と言う呼び方を変えず茶化して来る。だがその物言いは成り損ないの六と言う彼女の劣等感から来ていると言うのは想像に難くない。ハイズは思いやりも込めてこう呼び掛けた。
「あんまり謙遜すんなよ? アーロゥの弓術が無きゃ俺のブンブン丸だけだし、太刀打ち出来ない場面も増えて来るだろう。お前には期待しているよ、これからのテレポーテーションの暴れ馬の調教具合込みでな」
「アイアイサー」
アーロゥは何かにつけて繰り返しの言葉を好む。ブンブン丸と言う言い方も彼女のお気に召した様で、口笛交じりに一行を先導している。後方支援の弓兵とは思えない立ち回りに思わず苦笑するハイズ。
「ブンブン丸~ハンブン丸半月~」




