No.4「魔法の二つ名」
持ったとしてもひと月、次の満月の日辺りにはその呪いは溶けてしまう筈で、そうなる前に彼らを次の自分の代わりの者が仕留められればいいと言う想いと共に彼は肉体持ちとしてのラカンソラでの生を終えた。そしてその思惑が叶うかどうかはともかく一定の狙い通りにハイズ、アーロゥと言うヒトヨ陣打破候補者としての二者は来た。彼らが降り立った場所、少し前にヒトヨ陣を弾き飛ばした爆心地、いわゆる刻みの地は恐ろしい戦いの有ったソラ国の庭園としては目を見張る美しさを備えていた。人が安らかに夢見の続きが出来る様にと平和を願い力を行使したフロウの精神世界がそのまま姿を現したかの様な、そんな荘厳な創意工夫に満ち溢れていた。満月の第一陣をヒトヨ、フロウ、第二陣をサイナン、シコクとした場合の第三陣のハイズ、アーロゥ達が今確かな足取りで歩けているのはそこでソラ国斯くあるべしと言う美しさを目の当たりにした経験がそうさせている面も有ると言って差し支えなかった。
また刻みの地を中心として見てヒトヨが飛んで行った方向を上、北方向とした時の西方向にサイナンが縛り付けられているのと同様に東方向にシコクは閉ざされている。彼らは彼らで夢の力による「築城」を始めているだろうがそれがどう妨げになろうとも共闘されるよりはましだ、それがフロウチームの基本方針である。タイムリミットはあと二十七日。ここまでに最低でも最強のヒトヨ以外を排除出来れば一旦は共闘阻止のノルマクリアだ。もし出来るならば増援が来るとも限らない次の満月までにヒトヨも含めての討伐を終えてしまいたいが、それは全てが思い通りに行った場合の話ではある。
そして不滅の蝋、亜の六──これらはそれぞれのこの地での在り方を形作る魔法名であり、ハイズにもそれは有った。8、∞を起こした字形の次にis。”8=∞ is him.”。つまり無限そのもの。「=無限」とでも言えばいいか、”無限とは彼、彼とは無限”と言う響きを借りるなら”無限永久”が彼の魔法人としての一つの魔法名と言える。飽くまで狩人の足止め役であるアーロゥと比べ狩人打破に必要な無尽蔵の夢エネルギーの行使権が彼には約束されている、とそう言う名だ。だが彼には呪いの側面も備わっていて、それは裏の魔法名”灰頭”。彼は決して狩人を狩る時無傷では無い。彼らの懊悩、彼らの怨嗟を断ち切った時どうしても隙間風としてのそれらが瞬時に彼の脳裏を過る様に出来ている。それはカラ国で魔法力を行使して狩人を両断する時の痛みに重なって彼を襲う。
「うぐッ」




