No.4「本当の魔法名」
乙女心。この言葉は妙にフロウに引っ掛かった。アーロゥは思春期には至って居るだろうがまだ子供だ、だが子供はその純粋さから時としてとんでもない狂気を示す事が有る。それは植物に向けられたり、虫や小動物に向けられたりで発散され大人になるにつれ影を潜める物だが、それが出来ない場合は? そう、アーロゥの様に発散しようの無く寝たきりで過ごしていた場合は? 何か嫌な予感がする。今回出口が見つかったとして、その一番手には今度こそ自分が名乗り出るべきかも知れない。ヒトヨに問いたい。魔法名は本当に人夜でいいのか、と。至黒やSu否nと比べて規模が大き過ぎる印象の有るこの言葉。逆に言えばプライベートな傷跡が見えない。この惑星の夢空間イコール人の夜の夢を自分のおもちゃとしようと言う思惑が有るのはいい、如何にも闇の住人の女王として有り得そうな考え方だ。だが、そもそもその惑星を飲み込まんとする怨嗟の巨大なスケール感は、一体全体何処から来たのだ…。
不滅の蝋、と言う名の繊細なプライべートさにはフロウは自身の事だから、たとえ現世との遮断が有ると言う夢の目隠しが自身を探る邪魔立てをしているこの状況でもそこの意味に触れる事を継続的にして来た。要は頂きに火を灯した状況で蝋は継続しない、不滅では無い。だがそれでも不滅と言う状況を構築出来るとすればそれは蝋が延々と積み上げられて行く場合だけだ。そして、絶やしてはならない火とは、恐らくフロウにとっての愛すべき他者の事だ。次々と足されて行く出所不明な蝋、それで自身が自身と呼べなくなる様な、例えば今のこの肉体の無い亡霊の様な状況に追い込まれようともただのひと時でもその火が潰える事が有ってはならない。火は、己の存在理由…もしかしてそれはアーロゥの事なのではとも思ったがそれは何となく違うと思っている。むしろ、今確信が行った。何故ならヒトヨとアーロゥが他人同士では無いと言う実感がこの雨と言う涙を思わせる空間によって強固に塗り固められたのだ。希望の火は、この異空間の殺風景さを見る限りアーロゥやヒトヨの中には無い心模様の筈で、それは端的に言えば絶望だ。アーロゥは良い子に過ぎる。はっきり言って彼女が寝たきりと言うステータスを抱えていてそうである訳が無いと言うレベルでその陽気さは存在している。光と影の、影が無い。このヒトヨとアーロゥの関係性に関する仮説が正しければ、ヒトヨは自身の有り余る闇で惑星の裏側と言う、この夢世界を覆い尽くそうとしている。そして仮説の証明には、ヒトヨの本当の魔法名が要る。
笑顔の現アーロゥの裏側に有る狂気を表現する意味でもパジャマじゃなくこれでいいんじゃないかと思います




