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レンズノ空 〜Sky at the Lenz, Highly Above〜  作者: 白先綾
シュウ斂「人の夜を」

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No.3「ヒトヨの謎」

挿絵(By みてみん)

 門扉の中、そこはしとしと雨の降る空間だった。だがシコクの同エリアで見られた様な水たまりが逆に無い。では床全体がもう浸水しているのかと言うとそう言う事でも無く、水はまた上から降り注ぐ為とでも言った体で吸収され無くなってしまう、言わばそんな渇きの地だった。

「へぇ、また対照的な場所に出たもんだな、影踏みの水たまり、氷の壁と来て今度は水たまりの無い雨模様か」

「あたし達自身にも水で濡れるって状況が発生しないねこれ。ふっしぎー」

「或る意味イミテーションとしての降雨か、これが謎のヒントとして機能するのだろうが」

 フロウの解を探る言葉を聞いたハイズは雨が降りしきる中あちこちで水球が上下しているのに気付く。

「あれ、地面に落ちずに上下している水球が有るな」

「あ、こっちには左右に揺れてるのも有るよ。上下左右、まるで乙女心の揺れ動き方?」

「またお茶目な事言いなさるなうちの姫は」

「いやー姫だなんてそんなそんな」

「姫は姫でもお転婆姫だけどな」

「ぶー。意地悪なセリフ禁止した筈ですー」

 いや、とフロウは黙考する。シコクにしても、サイナンにしても、何か心の奥底の自己表現としてあれら水たまりと氷の空間を構築していた可能性が有る。自身を含めたアーロゥ以外の召喚者達は現世と断ち切られていて夢での在り様だけで存在している様な者達だとしてもだ。シコクの場合、水たまりが自分として描いていたのなら恋焦がれた誰かに月を投影させていたか。そして黒に至ると言う悲劇、脱出口としての水たまりに月は最終的には居なくなっていた。サイナンもサイナンで日食の様に一つになりたい女性が居たとして、それでも思い通りには行かなかった人生の儚さを滑る時空に投影させたのか。最後は人生の輝きとも言える陽光を否むに至る彼、月が居ないのなら自分の存在すら否定に掛かると言う様な心境が見え隠れする。そしてこの空間、水たまりとしての行き場の無い、それでも止まる事の無い雨と揺れる心境の吐露としての上下左右動、こう見た場合このヒトヨの心情とはなんだ? 戦いに明け暮れヒトヨのみならず相手の心情を見透かす事を諦めていた自分だったが、シコクからもサイナンからも人としての在り様はなんとなく門の異界の構成要素と言う断片的な欠片として提供されていた事に気付いた。

 ヒトヨは謎めいて居た。一番に出会い、三十日戦いそして次の三十日で追い詰められ後に刻みの地となる地点で刻みの呪いを発動し身体を失う切っ掛けとなった女性。強大な相手ではあるが、あの苛烈なまでの戦闘能力の根源たる闇を統べる者としての怨嗟の塊は一体何を根拠として成立していたのだろう。

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