No.2「今を往く」
「うっぷ、もうお腹一杯…幼児期のおままごと願望を全て満たした気分だぜ…」
「あはは、お疲れ様先生。あたしも一人でやるんじゃ飽きちゃってたかも知れないから助かったよ」
そう言う彼女の方をハイズは見やる。完全昏睡が有ったとしても自分やフロウ、それに闇の三人はリハビリをすればどうにかはなるのかも知れないが、そう言う世界では無い所に居る彼女。今はこんなに近くに居るのに、それでも果てしなく全く届かない何かが彼女を支配している。この巨大な壁を越えるには圧倒的に、無力だ。
「あれ、どったの? あたしの顔になんか付いてる?」
「いや、つくづく性差の壁の高さを知ったと思ってな」
「まあ性差って言うか、先生は色々と男性としてもゴツい方の身体や性格だから似合わないってのも有ると思いますよ正直」
「ははっ、言ってくれる。あー言い出すんじゃなかったぜ。フロウもやりたかったんじゃないか本当は?」
「うーむ、まあ逆に身体の無い事が幸いするケースも有るのだなとそう言う実感だな今は」
「違いねぇですわ。はぁーババ引かされたチクショー」
ハイズは心底疲れた、とばかり身を花の絨毯に任せている。それを見て二人は笑う。笑える時に笑っておく事の大事さを知って居る戦いの最中での象徴的な出来事だった。
四日間の継続した悪魔型狩人との格闘。それに城下への接近を思い起こさせられながら三人は進み、門の出現を目の当たりにした。
「ふー、挙動はシコクの告死天使型と似ているが道中自体いつもより手古摺らせられたし何より新規のこいつらは魔法球の遠隔手段が厄介だ。もう終わるんだなって実感が湧いて来るよ、こうも抵抗が苛烈だと」
汗を拭きながらハイズが呟く。
「うむ、我々も一日多く道中での日数消費を余儀無くされたしな。ヒトヨの魔法名は人夜。人の夜を司ろうと言う烏滸がましい名、これを打ち砕くと言う悲願の為に我々の血の滲む道のりは在った。呪いの解除まで六日間、もう少しだ、無限永久の青年、亜の六少女」
「こー言うカッコ付けなきゃって状況でも亜の六なんて締まりの無い名前の自分が嫌になりますよ旦那。まあもう終わるんなら終わるんでスパッと終わって貰わないと。あたしにはあたしの現世での戦いが待っているんだ」
現世との繋がり。それは今のアーロゥを奮い立たせるカンフル剤の様な物だ。シコク戦の後の微睡みで一時戻った自分の本当の在り様。そこにまた至る事無く夢世界がヒトヨ陣の思惑に支配されると言う様な事は真っ平御免だ、今は今のまま、夢は夢のままで在らせる為、彼女は夢の中と言う「今」を往く。
奥に見える門がもしやラストに出て来る呪いの〇部屋(なけなしの伏せ字 の入口候補なのでは…(謎の自信度の低さ




