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小さな妖精たちは<最愛>と邂逅を果たす

※※※


邂逅かいこうとは、「思いがけず出会う」ことを意味する。そしてまた「巡り逢い」「巡り会う」とも言い換えられる言葉である・・・。



彼らにとっての『特別な存在』。<最愛>とも呼ぶそれは今も昔も変わらない。



その日、ドラゴンのぼうと仲間たちは約百数十年ぶりの<最愛>との邂逅を果たす。



だが、これは一足早くアルバの転生に気づいた<小さな妖精たち>のお話。



※※※


セヴェルの町の結界をぶち破って飛来した、まさかのドラゴンのぼうや精霊と妖精たちによるご挨拶によって、赤子のアルバの平穏な日々は終わりを告げた。


何故なら、挨拶の後すぐに尋常の数でない<小さな妖精たち>が領主の館に向かって口々に叫び始めたからだ。


(アルバが泣いてる!!!!)


(アルバ、悲しい!?それとも苦しい!?)


(今すぐ行かなくちゃ~~~!!!)



<小さな妖精たち>の暴走が始まるのは、そのすぐ後のお話。


※※※



アルバ誕生の日にどこからともなく彩雲に乗って地上に降りてきた鈍く輝く魂の光を見逃さなかった<小さな妖精たち>。


すでに転生に気づいた時点で、ぽつりぽつりと<小さな妖精たち>はかつてのごとく少しずつではあるが群がり始めてアルバの暮らす領主館の周りをグルグル取り囲み、マリアとともに日光浴をするアルバを見守っていた。



ただ町中に張り巡らされた結界装置による結界とは別に、マリア自身が自分たち家族が暮らしている屋敷に結界を張っていたため、マリウスの娘であるマリアに気づかれぬように、こっそり外から覗き見をしていたのである。



<小さな妖精たち>はアルバの「静かに眠りたい」という最後の言葉を覚えていた。



下手に騒いで自分たちの存在を知られると、【桃源郷】で眠り続けているぼうや四大精霊たちより先にマリウスをはじめとするアルバの七人の弟子たちがやってくるのが分かっていた。到底アルバが喜ぶとは思えなかったのである。



ちなみに彼らのことは嫌いではないが、好きでもない。たまに亡くなったアルバの代わりに様子を見に行く程度しか関心はない。そのついでに外界の食べ物を勝手に貰っていたが、それにも理由はある。



基本的に<小さな妖精たち>は傍にいて楽しい存在が好きなのである。あまりにもアルバに比べて七賢人という存在は退屈な存在だった。


まずぼうに「面白れぇ女」と認定されたアルバとは比較になるはずもなかった。



それでいて何かにつけて自分たち<小さな妖精>を【使役】しようとするのである。そんな彼らに半分辟易しつつ、本当に少しの助力の対価として、自分たちを呼ぶ声が聞こえるたびに時々気まぐれに応えては食べ物を貰っていたのが真相である。



国のため、人々のため、大陸の平和のため・・・。様々な理由を付けては結局は自分たちを利用したいのだと理解していたから、<小さな妖精たち>は簡単には姿を見せなかった。



【桃源郷】と外界を行き来しながら、伝説の存在になっていたのには驚いたが、<最愛>であるアルバ以外には、どうしても力を貸したくなかったのである。



そもそもアルバは初めて会った時から、かけがえのない友であり『特別な存在』すぎたのだ。



※※※


(まず【桃源郷】に行かなくちゃ!)


ぼうたちを起こさなきゃね!)


(アルバを守るのに何人か残ってね。すぐ呼んでくるよ。すぐだからね?)



まさか、結界の張られた館の外で<小さな妖精たち>によるコソコソ話が始まっているとは知る由もないマリアたちだった。




知らないということは時に幸せである。



※※※



そして、【桃源郷】からぼうたちを叩き起こしてセヴェルの町に戻ってくれば、ご挨拶の後に突然のアルバのギャン泣きが聞こえてきたのである。



<小さな妖精たち>は一目散にアルバのもとへと小さな羽を広げて駆けつけることにした。



それを、人々は【暴走】と呼ぶ。



なお平穏な日々を願うアルバが、ぼうや四大精霊たちとの再会という名の邂逅を喜ぶかについては<小さな妖精たち>は全くもって気づかない。



繰り返すが、知らないということは時に幸せなのである。





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