プロローグ
かつて数千、数万の魔物と魔族たちを倒し続け、戦乱の世に人々と世界を救ったと伝説に語り継がれる魔女がいた。
そして人類最強にして最凶と恐れられるその魔女は、強大な魔力ゆえに簡単には死ぬことは叶わず、長い長い幾百の歳月を生きた。
時に友の竜たちと戯れ、また精霊たちと歌い、小さな妖精たちを慈しむ姿から大聖女とも呼ばれたが、彼女は戦乱の世に生まれた以上は戦場に立つ道を選び、その長い生を血に染め上げながら平和を願い、最後の時まで人々の盾となり散って逝った。
ようやく平和が訪れた世界で、彼女が呟いた最期の言葉は、「ようやく静かに眠れる・・・あとは任せた」
その言葉を聞いたのは、長い人生の中で見出した七人の弟子たちだった。
その魔女の名は『夜明けの大魔女 アルバ』
七人の弟子たちは、アルバに託された世界を守るため、大陸中に散り、その強大な魔力ゆえに長命ということも重なり、偉大な魔法士としてやがて人々から七つの国の七賢人と呼ばれるようになる。
暁の国
天明の国
陽光の国
星灯の国
銀月の国
宵闇の国
白夜の国
この七つの国で賢者として、または国を統べる国王として、あるいは国王に代わる指導者として確固たる地位を固めた彼らはアルバの残した思い出を胸に、新たな人生を歩み始めていた。
だが彼らはまだ知らない。
死んだはずのアルバが転生して、第二の人生を送り始めたことに……。
これは思いがけず田舎の貴族令嬢に生まれ変わってしまった小さな大魔女の日常を綴った物語。
静かに眠るはずが、「どうして、こうなった~!?」
今日も辺境の地では元気なチビッ子の叫び声が響き渡ります。