草津に来たる六人と動く黒
とある朝、鷹田は早く朝食を食べていた。いつもなら起きているであろう妹の分をラップで包み、自身はおにぎり2つを平らげ支度をする。昨日妹に連れられた服を着てお洒落をし、そしてリュックサックを背負いスーツケースを持って家を出る。
「えーと、ここかな?」
とある駅前の朝8時頃、時計台の元に6人の男女が揃った。
小鳥遊「お?来た来た!」
鷹田「あー、すまん。電車遅れたわ」
城田「え?電車だけ?」
鷹田「蛮族にインスタントだけど味噌汁作らされたからな」
城田「やっぱりかぁ…」
そんなやり取りをして鷹田は奥を見る。
あ、そういえば女子追加だった。えーと、如月さんに小咲さん、え!?天野川さん!?あの人社長令嬢でしょ、色々大丈夫なのか?
天野川「あ、鷹田さん来たんですね」
サイドテールの少し垂れ目で気品に満ち溢れた少女が鷹田へと話しかける。
鷹田「すみません独裁者に捕まってたもので」
城田「あれ、さっきと言ってること違くない?」
如月「鷹田さん!!今回はよろしくお願いします!!!」
ポニーテルの純真無垢な少女が鷹田に話しかける。
鷹田「あ、は…はい」
うーん、圧倒的光属性……まずい!!消える……!!
小咲「あ、鷹田さん。おはようございます」
ショートボブで前髪によって目を隠し、少し内気な少女が鷹田に話しかける。
鷹田「おはようございます、ぎりぎりになってすいません」
小咲「あ、いえ、私は全然…あ、大丈夫です!!」
小鳥遊「全員揃ったところで行こうか」
城田「おー…旅館だ…」
鷹田「なんだコイツ」
天野川「私が受付してきます」
そう言って天野川は旅館内部へと行った。
小鳥遊「天野川さんの分は鷹田がやれよー」
鷹田「待て待て、ここは城田でしょ」
城田「いやいや、夏の罰ゲームまだだろお前」
鷹田「大罪人が何を!!」
鷹田と城田が取っ組み始める時、5人の後ろから着物を着た切れ目の少女が現れる。
「この旅館に何の用?」
如月「こんちには!!えっと、お客として泊まる用があって!」
「そう、受付は?」
小鳥遊「いま連れがやってる最中で」
「そう、じゃあ着いてきて。その人の荷物は?」
小鳥遊は天野川の荷物を指す。少女は天野川の荷物を持って旅館へと入っていく。
天野川「これで大丈夫ですか?」
受付「うん、大丈夫。愛莉ちゃんがこんなにべっぴんさんになってるなんて……これが鍵ね」
受付の女性は天野川へと鍵を2つ渡す。
天野川「ありがとうございます、星観おばさん」
そう言って天野川が旅館の扉の方へ向かおうとしたとき、扉の方から6人が旅館へと入ってくる。そして先頭を歩いていた少女と目が合う。
天野川「湯加里ちゃん…」
少女、星観 湯加里は天野川へ荷物を返し、奥へと去っていった。
その後、男女それぞれの部屋に分かれ荷物を整理する。部屋は床が畳の一般的な旅館のそれだった。窓の外の景色は立ちのぼる白煙が多い草津をある程度は見わたせた。そして小鳥遊が鷹田と城田へ語りかける。
小鳥遊「ねえ二人共。2人は温泉入りに行ってくるの?」
鷹田と城田は当然だろと言わんばかりに小鳥遊へと返答する。
小鳥遊「じゃあ鍵持っていって。疲れたから寝るね、夕飯前には起こしてよ?」
そう言って小鳥遊は布団を畳の上に引いて、いびきを立て眠る。そんな小鳥遊を少しあきれたのかため息をつきつつ、2人は備え付けのクローゼットの中に入っていた浴衣に着替える。そして2人が部屋を出ると、偶然にも隣の部屋から出てきた小咲と如月と出会う。
鷹田&小咲「「あ」」
小咲「えっと、奇遇、ですね。もしかして二人も、観光しに…いく、ところですか?」
鷹田「うん、そうだね。あれ?天野川さんは?」
小咲「なんか用事があるみたいで…」
如月「一緒に回ります!!?」
城田「そうしようか。鷹田」
鷹田「あ?なんだよ」
城田「あー、2組に分かれて行動はどう?女子だけじゃ危険でしょ」
小咲「どうやって、分け、ます?」
城田「じゃあ俺は小春と行くから…鷹田、小咲さんを危険に晒すなよ?」
鷹田「ああ、分かった。裏路地は注意しろよ、幼馴染を守りたければな」
男2人はそう言って、4人は2組へと別れた。
鷹田と小咲は本格的な温泉には行かなかったものの、足湯だったり少しマイナーな観光スポットをまわり、夕暮れの中で旅館への帰路へとついていた。
鷹田「いやー、楽しかった」
小咲「そう、ですね」
鷹田「あと2日……明日は皆でまわれるから、楽しみでもあるなぁ」
小咲「何事もなければいいですけどね」
鷹田「……本当にそうですね」
鷹田と小咲は旅館へと着く。そして2人はそれぞれが自身の部屋へと戻る。そして鷹田はもう少しで晩御飯のため小鳥遊を起こす。そして鷹田のスマホから着信音がした。
鷹田「先輩か…はい、どうかしました?」
先輩『あーもしもし、鷹田くん?君の妹から聞いたんだけどさあ、いま草津にいるんだってねぇ!わたし知らなかったんだけど!!』
鷹田「あーすんません、完全に刻月先輩のこと忘れてました。それで用件は何です?」
刻月『相変わらず鋭いね……実は君の住んでいるその旅館の近くの山にがあって、それの忠告だよ』
鷹田「何があるんです?」
刻月『今の山の名前は銅街山、あまり人が入ることを勧めていない山さ。君も知ってると思うけどね。何で君に話したのかというとその山がファイリングされていたんだよ、字は掠れて所々が読めないけどね』
鷹田「単騎調査しろと?」
刻月『それはまた後さ、できるだけ情報を得られるとありがたいがね。まあ、君と一緒の天野川 愛莉さんがどーも、縁があるらしいんだよね。彼女に少し聞いておいてくれ、くれぐれも気をつけてくれよ?情報は送っておくから、じゃあね』
鷹田「切りやがった……」
送られたメールに色々書いてんなぁ……祠には気をつけろ?それに山の名前は…『動骸山』、なんかきな臭くなってきたな……まあ、重要なのはこの辺か。
鷹田は城田と小鳥遊の方へと行き、雑談で晩御飯の時間まで暇をつぶし、そして提供されたご飯を美味しくいただく。そして鷹田は晩御飯を素早く食べると部屋をトイレと言って出る。鷹田は扉を開けて辺りを確認し、扉を閉める。視界に入れた天野川の姿を追いかけ、通路で鷹田は天野川へと声を掛ける。
鷹田「天野川さん」
天野川「あ、鷹田さん。こんばんは、どうしました?」
鷹田「いやまあ先輩から連絡があってね、動骸山について」
天野川「銅街山について何を…」
鷹田「いや、俺の所属している部活ってオカルト研究発進部なんですよ。その山について何か知っている事を教えて欲しいなと思っただけなんです…例えば祠とか…」
天野川「祠……あっ…」
天野川が何かを思い出した途端、黒い闇のような何かが天野川の身体を一瞬で包み全身が包まれた瞬間、得体のしれない物事天野川が消えた。
鷹田「くそっ!祠がキーワードかよ!!」
鷹田は慌ててスマホを取り出し誰かにメールで連絡する。そして駆け足で鷹田は動骸山へと向かう。
小咲 莉花は見ていた。自身の友人がクラスメイトと話した途端、得体のしれない黒い何かに連れ去られるところを、そしてクラスメイトが心当たりのある発言をして駆け足で去る所。小咲は浴衣姿であるが鷹田を追った。