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輪廻転々・  作者: ポメ
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第1章 生まれ変わったら

暗闇の中 1匹、佇むオレ。

こんなはずじゃなかった・・・。生まれ変わったら、必ず人間になれるのだと思っていた。人間じゃなくても、せめて鳥とかいるかになって、大空を飛んだり海を渡ったり出来るものだと思っていた。

 人は誰でも夢を見るものだ。生まれ変わったら、自分はいったい何になるのだろうかと…。

それなのに…。

実際生まれ変わってみたら、オレは…オレはゴキブリだった。


ゴキブリ....それは、害虫

ゴキブリ....それは、誰もが忌み嫌う生き物。


それでも生まれ変わりたての頃は、幸せだった。まさか自分がゴキブリだとは思ってもいなかったからだ。虫なのだろうと思ってはいたが、クワガタか、カブトムシか、そこらへんの類なのだと思っていた。自分が最悪の生き物に生まれ変わってる事に気づいてもいなかったその頃のオレは、とにかく気分上場だった。触角は冴えてるし、羽だって最高に完璧だし、とにかく黒光りMAXだった。


調子に乗った俺は、人間だった頃の前世の記憶を頼りに、初恋の香織ちゃんの家に行ってみた。人間だった頃は、恥ずかしくて近づくことも出来なかったが、今のオレは誰にだって会いに行ける!

 大空を飛びながら、道行く人々にオレの低空飛行を披露して、ついでに宙返りまでしてみせた!心なしか、氷のような視線を感じたが、そのときのオレは気付くはずもなかった。


香織ちゃんの家ってどこだっけ?

前世の記憶をたどってみる。オレの初恋の人、香織ちゃんは、近所に住む一つ年上の女の子だった。非の打ちどころのない完璧な容姿をお持ちで、いつもピンクや白のワンピースを着て髪におリボンを着けていた。それに比べてオレは、全くの平民で、勉強もスポーツもそれなりにできたが、特に目立った才能もなく、「あれ?お前いたの?」とたまにいわれてしまうような男の子だった。

 でも、そんな俺に対しても香織ちゃんは優しくて、すれ違うといつも微笑みかけてくれた。とっても優しい女の子だったんだ!あの微笑みにもう一度会いたい!今の俺ならその願いもかなえられる!俺は必死に香織ちゃんちを探して大空を駆け巡った。


なぜだかオレが自由に飛び回るとみんなキャーキャー言いながら振り向いた。まるで国民的アイドル並みの人気だ。なんとか無事に香織ちゃんの家に着いたとき、夢のようなタイミングで家の2階の窓が開かれた。

「ぶうううう~ん」

オレは最高の飛行テクニックで香織ちゃんの部屋に舞い降りたのだ。

「香織ちゃん、香織ちゃん、香織ちゃ~ん!」

ウキウキしながら最愛の人を探す。

ん?目の前に鬼がいた。いや、正確には鬼のような形相をした、小さなおばあちゃんだった。

皺だらけの目は驚きと怒りで見開き、小さくすぼまれた口は少しずつ息を吸い込んでいるように見えた。

「キエエエー!」

おばあさまは突然、異常な雄たけびをあげると、オレにめがけて何かを噴射した。

シュウウウウー!

一瞬何が起こったかわからなかった。強い風と共に白い何かがせまってきた。そして俺の周り一面が真白くなった。そして・・・とにかく、すべてが白かった。ただただ、世界が白かった・・・。


オレは本能的に窓から逃げ出した。なんとか飛ぼうとしたが、体中がひりひりして、羽が開かず、オレはうまく飛べないまま、ヒラヒラと香織ちゃんの家の庭に落下した。身軽な体のおかげで重力は俺の敵ではなかったが、とにかく息苦しい。どうにか生きていたが、すごく気分が悪かった。重い体を動かし、よろよろと歩きだす。

オレは考えた。訳がわからなかった。なぜ、自分がこんな目に遭うのか、あの小さいおばあさんはいったい誰なのか…とにかく、一刻も早くこの恐ろしい場所から逃げ出そうと彷徨っていると、あいつ…そう、あのムカデ野郎と出くわした。


恐らくオレと人気ワーストランキングを競うであろうそいつは、ジメジメとした地面にぬらぬらと存在していてとにかく気持ちが悪かった。どこに目を向けても吐きそうになる為、軽く会釈をして通り過ぎようとしたが、弱ったオレの前にムカデ野郎は立ちはだかった。そして自慢のボディを一つ一つ丁寧に動かして見せた。その連動した動きは、世界一気味の悪いドミノ倒しのようだった。


ムカデ野郎はオレのゴキブリらしからぬ行動を一部始終見ていたらしく、開口一番こう言った。

「あんた、ゴキブリだよ。」

「え―――?」とオレ。

ムカデ野郎は、やたら足だらけの体をくねらせて、にやけた顔でさらにこう言った。

「だから!あんたはゴキブリなんだよ!」

「え――――?オレが、オレがゴキブリ?ゴキブリってあのゴキブリ?ブリ?」

オレの頭はパニックで真っ白くなった。

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