魔法少女ちゅーりっぷん 天才の苦悩
魔法少女ちゅーりっぷんは、悪の組織との戦いに敗れ、捕まってしまった。
「さあ、どうしてやろうかな。お前らはもう俺様のモノだ。」
と、敵の中ボスかなたは言った。
「なによ!かわいい女の子を捕まえてどうする気よ!年下のくせに偉そうに!」
ちゅーりっぷんのリーダー、苺は叫んだ。
「うるさい小娘め。あまり口が過ぎると痛い目に遭わせるぞ。」とかなた。
ちゅーりっぷんのサブリーダー、楓は、かなたをどこかで見たことがあるな。と思っていた。
ちゅーりっぷんのしたっぱ、れもんは、今日の夕食何かな。と思っていた。
「そうだ。いいことを思いついたぞ。」
かなたはメイド服を三つ持ってきた。
メイド服は魔法少女三人の体へ飛んできて、フィットした。
「その服は冥土服。死ぬまでご主人様にご奉仕させる。しかも、俺様が解除しない限り脱げない。よってお前たちは死ぬまで俺様の世話をして生きるんだ。どうだ?嬉しいだろ。」
かなたは端正な顔を、意地悪そうに歪めて笑った。
「変態!助かったら、ぶっ倒してやる!」と苺。
楓はまだ考え込んでいる。
れもんは、
「ご飯がおいしければ、がんばりますよ。」
とほがらかに言った。
こうして、魔法少女と敵中ボスの同居生活が始まった。
魔法少女は、初めは嫌々仕えていたが、かなたが時折寂しそうにしているのを見て、何とかしてあげられないだろうかと思うようになった。
そんなある日、楓がかなたに話しかけた。
「もしかして貴方は、昔TVで騒がれていた天才少年じゃないかしら。」
「覚えているのか。俺様を。」
「5歳にして円周率や日本文学を一字一句間違いなく暗唱してたわ。」
「いかにも。昔はそんな時期もあった。でも今ではみんなにすっかり忘れられてな。あの頃はみんなが俺様を見てくれていた。女だって選び放題なほど寄ってきた。しかし、しばらくしたら、俺様よりも、もっとすごい奴が出てきて、すっかり俺様は忘れられてしまった。だから俺様は、この組織の力で俺様だけが愛される世界を作りたい。みんなにまた見てもらいたい。」
かなたはひときわ悲しそうにうつむいた。
苺が、
「本当の天才なら自分の力で、また人気者になってみせなさいよ!」
と、挑発的に言って見せた。
「俺様は、ずっと屋敷で勉強しかしてこなかったから、どうしたらいいか分からない。」
「そんなの本当の天才じゃないじゃん。ただの暗記マニアじゃないの。」
と、苺。
「俺様だって本当は、暗記なんかしたくなかった。でも、親ができるまでやらせたんだ。できなかったら誰も俺様なんか見てくれないんだ。」
「だから、寂しくていたいけな女の子を捕まえて働かせているのね。ふーん。」と、苺。
「うっ、うるさいな。お前は黙って俺様の肩を揉んでいればいいんだよ。」
かなたは冷たく言ったが、心の中は人に理解された喜びでいっぱいだった。
かなたはボスに呼び出された。
「何でしようか。」
「ちゅーりっぷんを捕まえたそうだな。私に渡せ。」
かなたはちゅーりっぷんを引き渡した。
「忌まわしき魔法少女め。今こそ亡き者にしてやる。」
冥土服を着ているので、魔力で体が動かない。
ボスはちゅーりっぷんに電撃を浴びせようとした。
かなたは見ていられなくなった。
気が付いたら、ちゅーりっぷんを守っていた。
「貴様!何のつもりだ!」
「こいつらは俺様のモノだ!だからお前に壊されたりはしない!」
かなたは冥土服の呪縛を解いて、ちゅーりっぷんを自由にしてあげた。
「逃げろ。そして生きろ。」
ちゅーりっぷんは戸惑った。
逃げたらかなたが死んでしまう!
「行けよ!」
ちゅーりっぷんは魔法の力で逃げた。かなたは強力な電撃を受けて、その場に倒れた。
・・・そうか。俺様は、あいつらのことが好きだったんだ。俺様は天才だったのに、好きな女の為に死ぬなんてバカだな。でもこんな死にかたも悪くないかもしれない。楽しかったな。あいつらとの生活・・・。
ちゅーりっぷんはかなたの悲鳴を聞いて、組織のボスを倒す決心をした。
「もうこれ以上、悪の組織の被害者を出してはいけないわ!」と楓。
「私たち、戦わなきゃ。」とれもん。
「失った仲間の為に!世界の為に!」