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八咫烏の姫君  作者: Ryo
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それぞれの思惑

 それから早くも2日が過ぎ、今日がその宴の日。

 紅葉は、暁と百合子が嬉々として選んだ振袖に身を包み、暁が手配した着付け師によってこれでもかと磨き上げられた。

 これが白い衣装であれば、もはや花嫁だと言われてもおかしくはない。

 暁は玄関で草履を履き、紅葉に向かって片手を差し出した。


「ほら、行こうか。もう迎えが来ている」


 紅葉は慣れない振袖に四苦八苦するものの、暁の手を借りてどうにか履物を履き外へと出た。

 外へ出ると、秋風が肌を撫でるように吹き抜け、思わず身を縮こませてしまう。

 暁は、そんな紅葉の首元に薄手のストールを巻いてくれる。


「ありがとう」

「いえいえ、体が冷えたら大変だからね」


 そんな二人を見送りに、百合子が門先まで送り届けてくれる。


「二人とも気をつけてね。くれぐれも粗相のないように」


 事情を聞いた時の百合子の驚きようといったら、それはもう目をまん丸にさせて口をあわあわとさせていた。

 まさかそんな宴が開会されるなんて、思っても見なかったのだろう。

 これまで百合子からは、「花嫁修行なんて、お婿さんが決まってからでいいのよ。なんなら、四季くんだったらお母さんずっと二人の面倒見てあげるわよ?」なんて軽口を叩いていたものだ。


 それが今は、「まぁ!少しでも淑女の振る舞いを身につけておいて損はないわ!」と、先日から慌ただしく紅葉に教え込んでいたのだ。

 家業と学校の忙しい合間で百合子に教えを受けていたため、おかげで紅葉は寝不足気味だ。その疲れた顔にできた隈を隠すためにお粉を叩いたと言うのもある。


 てっきり安倍統司とお近づきに、と思ってるのかと思いきや、百合子の主張はこうだ。


「四季くんに相応しい女は私なのよって、胸を張って他の女の子達に伝えてきなさいな!」


 息巻いて嬉々として言い放った百合子の主張を聞いた暁と紅葉は、揃いも揃って吹き出してしまった。


「まったく母さんは、ブレないねぇ」


 呆れたようにクスクスと暁は笑う。

 対する紅葉は、顔を赤くして百合子に反論した。


「お母さんってば……。何度も言ってるけど、私と四季はそういうんじゃないから!」

「あら、そうなの?」


 残念そうに眉を下げる百合子だが、ちっとも本気だと思ってはいないらしい。

 そんなゆりこの様子に、紅葉は思わずため息を漏らした。

 確かに、そろそろ自分も四季もそういう年頃になってきたかもしれないけれど、でもきっと、どこまでいっても共に戦う仲間や幼馴染みの域を得ないだろうという思いが拭えない。

 それくらい、二人の過ごした日々は長過ぎたのだ。




 二日前の出来事に思い耽っていると、暁が門を出た先、前方を指さした。


「あ、いた。お迎えだよ」


 紅葉は遠くへやっていた意識を戻し、暁の指差す方を見た。

 そこには黒塗りの車が一台と、その側には、暁と同じように袴を着た男が、車に身体を預けるようにして立っている。


「え、四季?」


 思いもよらぬ人物の登場に、紅葉は目を丸くした。紅葉の驚いた声に反応して、あさっての方向を向いていた袴姿の男、もとい四季の双眸が、二人の姿を捉える。


「よ」


 四季は軽く片手を上げて、二人の方へ歩み寄ってきた。


「お勤めご苦労様」


 暁のその労いの言葉に、四季はジトリとした視線を投げる。


「よく言うよ。無理やり引っ張り出してきたくせに」

「はは、お前、気が気じゃないかと思ってさ」


 二人の間で、紅葉がわからない会話が繰り広げられる。


「え、四季も行くの?」


 今日は一族の女達のみが集まると聞いている。そして、今回は暁が紅葉の同行者として参列することになっている。

 四季は今回、参加の未印はないはずだ。


「……まぁ、ちょっと」


 四季は居心地が悪そうに、少し言葉を濁した。

 そんな紅葉の疑問に答えるかのように、暁が説明してくれた。


「実は統司と同い年だと言うことで、俺にも白羽の矢が立ってしまってね。今回は秘密裏に俺の花嫁探しも兼ねてるんだよね〜」


 ははは、と軽く言うが、これはこれで士門家としては大問題である。


「ええ!?暁兄も!?」


 まさか兄が婚約者を探すなど、紅葉は夢にも思わなかった。目を白黒させて、事実を受け止めることに精一杯だ。


「そうそう、だから、今回の紅葉の同行者は四季ということになってるから、そこんとこよろしく」


 暁はそう言って、四季の肩をポンっと叩いた。四季は四季で苦笑いを浮かべている。


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