「はいはいはい、婚約破棄婚約破棄……は?」
お決まりの第一声ですよ、読者のみなさん。
「リアーナ。お前との婚約を破棄する……」
うっせうっせ! 誰が、イケメンでこの国の第一王子アルファ様との婚約なんて望みますか! 悔しくなんてありませんわ! 復讐もしませんし、一切関わりを断ちます!
何が御茶会ですか! 自分の分が無くなったら帰りましょうっと!
もうテンプレの中で踊らされるのはごめんです。この物語のリアーナは普通に恋愛結婚して幸せに暮らすの。ハイスペックでスパダリと出逢わずとも、私は伯爵家の長女。いくらでも道は有りますもの。
自分の生き方は自分で決めます。
ふん、アルファ王子。さようなr――――
「……と。言うとでも思ったか」
は?
今なんて言ったの? 一応確認しておこうかしら。
「あの、アルファ王子……この流れは俗にいう婚約破棄というやつでございませんか?」
「なんだそれは。知らん。この縁談は一度きりだ。そんな簡単に切るわけなかろう。王族ジョークだ王族ジョーク。ははは」
「……」
違う。
このままだと平凡な物語になってしまう。読者はそんなの望んでいないはず! 理不尽な婚約破棄からの復讐劇とざまぁ。これらがないとブラバされてしまいますわ!
アルファ様には申し訳ないけれど、この婚約を破棄させてもらわなければ……! そうだ、悪態をついて見ましょう!
「紅茶ブーメラーン!」
どうです王子! ティーポットを持ってグルグル回る私に引いたでしょう! 婚約を破棄する理由も出来たし、決め台詞を言うのは今ですわ! アルファ様!
「……す、すごく個性的なダンスだね……」
普通に引くなぁああ!
もっと激昂しろ! お城の中びしょびしょですわよ!? むぅうなら仕方ない。こちら側から言ってやろう!
「アルファ王子との婚約を破棄しますわ!」
言っちゃった!
「……うん。いいよ」
「やった!」
「……良かった。ざまぁされるのがリアーナ。君で」
「へ?」
あ。そう言えば婚約破棄のテンプレは、ざまぁされる側が破棄を言い渡すんだった。もしかして私……。
「はめられた!」
「ふふふ。そういつもいつも男性側がざまぁされる展開は面白くないだろう?」
「うぅ」
頬っぺたを膨らませると、アルファ様がクスッと笑った。
「嘘だよ。仲良くしよう」
「……」
私。テンプレに納まるの、嫌!
「わかりましたわ」
婚約はうまく行き、誰にも何にも邪魔されることなく終わりましたわ! 幸せで何か悪いかしら? あぁ今日も紅茶が美味しい♪
おしまい。