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〜マレッジストーリーは突然に〜ヒロインは 残念年上美人でラブストーリーは無期待しない方がいいかもです。




 「『ジュン・クリムゾン』。貴女、この子―――――アーロンと結婚しなさい」



 その言葉に私は呆気を取られていた。

  

 横で同じく呆気を取られている黒髪ポニーテール、煙草を咥えたクールな年上美人さんも同じ心境でしょう。年齢は20代後半から30代前半。前世で死んでしまった自分と同じ位の歳だ。だけれど、今の自分は10代半ば。正直、自分の2倍の年齢相手と結婚と言われてしまった。



 【すごいことになったのぅ】


 

 他人事みたいに呟くナインさん。


 …………うん、いや嘘でしょ。


 

 「どういうことだ。意味わからんな、当主。何故私がこの子供と――――――」


 「え、この前彼氏に逃げられたんでしょ?しかもまた結婚を約束していた彼氏に逃げられてギャン泣きしてたじゃない。それに“誰でもいいから結婚したい”、“彼氏とか夫が欲しい”って酔いながら言ってたもん」


 「ぁ、いや、それは酔っていただけで」


 「毎度毎度彼氏に逃げられて、その度に同じこと言ってるじゃない。だからいっそこの子、アーロンと結婚させようってなわけ。で、いいでしょ。誰でもいいんだから」


 「あれは言葉の綾で、しかも私よりも一回り下な子供だろう!流石に未成年は―――――」

 

 「そんなことどうにでもなるわよ。あとこの子、『アルスマグナ』家の子供。しかも分家じゃなくて本家の……………ね」


 「!」



 『アルスマグナ』家。どうやら話している内容からして名家の子供っぽかったみたいですね、私。しかも分家じゃなくて本家の…………あ、捨てられている身なのでそんなに価値ないかも?



 「『アルスマグナ』家の…………?い、いや、それが仮に事実―――――」


 「事実よ」


 「――――――では、何故『アルスマグナ』家の子供がここにいる。幾ら何でも『アルスマグナ』家が黙ってはいない」


 「何もしないわ。それに、ここまで言えば察するでしょう」


 「……………クソが」



 ふむふむ。本人の前しては言わないけど、『アルスマグナ』家から捨てられたのです私。で、理由はこんな九尾の狐獣人というバケモノ。でも使いようによっては価値はある。何処ぞの名家の令嬢様の夫にさせればいい、ということ。うん、要するにバケモノでも『アルスマグナ』家の血筋だからその種馬に…………いやぁん、えっちっ。



 【随分余裕じゃのぅ】


 

 だって、だってなんだもんっ!


 世界の、それどころかこの国の情勢や情報なんて一切ないのです。種馬でもほのぼのと生きられるだけでも有り難く思いましょう。あと、この女性ジュン・クリムゾンさんは雰囲気はクールだが…………何故でしょう。


 残念な雰囲気が、ありません?



 【うむ。煙草の匂いに微かにアルコールが…………先程まで呑んておったのか?恐らくこの濃厚な煙草の匂い的にヘビースモーカー、加えて酒を呑んでも顔に表れん。酒豪じゃな】



 ヘビースモーカーに酒豪……………ストレス溜まってるのかな?さっきから少しイライラしてる感じが………。



 【未来の妻じゃ。安心して諦めるんじゃな】



 まあ好き嫌いとかそういう権利無いですしお寿司。


 前世の私ならこんな美人さんと付き合えるだけでもお祭りワッショイな感じだったかもですけど、うん。たぶん大丈夫。たぶん。



 「喜びなさいジュン。その子、まだ精通はまだよ」


 「せ・い・つ・う・が・ま・だ・だ・と!?」


 「えぇ。四六時中監視している者達からはそう報告を受けているわ。アナタ好みに仕上げてもいい初物。女の子みたいな愛らしい子を手を付けられるのは、今しかないわよ?」


 「穢れなき男の子ぉっ!」



 ぶはっ!?


 せ、精通がまだとか、私のプライバシーは!?あと監視してるって、しかも達って複数形だしっ!?



 【なんじゃ、知らんかったのか】



 あ、知ってたのナインさん。



 【そりゃのぅ。鬼神達も全員知っておるし。それに仮に宿主マスターに言ったとして安心して眠れんじゃろう。や、むしろあんまり変わらんかもとも思って言っておらんかった】



 まあ、そうですね。監視されてても特にやること―――――――――って、鬼神さんが夜な夜な外に出ていってましたけど気付かれてない?



 【んなモン、分身作って寝かしときゃバレねぇからな。現にバレてねぇだろ】



 あ、そう。


 うまくやってるんてすね。


 それにしても結婚、いや男に飢えている?のか何やら私の顔を見てブツブツ野獣の様な目で呟く女性、ジュンさんは何やらハッ!と正気を取り戻したらしく左右に顔を振ったのだ。



 「いいや、私は一介の教師だ。教え子と変わらない子供を相手に――――――――」


 「その内欲望に抗えずに教え子を手を出さないようにする為よ。本来なら教師でもある貴女にとって大問題かもしれないけれど、アーロンなら合法よ。いえ、合法に出来るわ」


 「待て待て。やはり、こんな10代の子供となんて…………ましてはまだ穢れなき子を」


 「断ってもいいけれど、この子の貞操は誰に奪われるのかしらねぇ。こぉーんな可愛らしい子ですもん。それに九つの尻尾を生やした獣人でも、かなりの人気になると思うわ」


 「……………だが」


 「じゃぁ、アナタの友達にも彼氏探している子いたよね?確かあの子の家柄も良いから、その子にアーロンを――――――」


 「いやまて!…………………わかった。どうせ彼氏が出来ても重い・怖い・身体的にしんどいと言われて逃げられんだけだ。この子と、結婚する」



 ―――――――へ?



 「あらよかったっ!じゃぁ、ここに結婚届がありまーすっ!あ、アーロンちゃんのは記入済みだからジュン、アナタのサインだけで正式に夫婦よっ!」



 あ、あの、展開速すぎませんかね?


 ジュンさんは用意が速過ぎることに驚きつつもその婚姻届の用紙にサインしてしまう。あ、文字はわかります。と言っても単語くらいだけど。



 「ジュン、アナタこと後帰るんでしょう?ならこのままアーロンを連れて帰りなさい。アナタの夫なのだから」


 「そんな急に――――――」


 「アーロンちゃん。ごめんだけれど、支度をしてもらうから席を外してね。あと、何時もの使用人に任せてるから。頼むわね」


 「承知致しました、『スザンナ』様」



 そう言われて私は美青年執事くんに連れられてしまう。しかも抱っこされてですよ、赤ちゃんですか。過保護ですよ執事くん。しかも本当におんぶですよおんぶ。男としてのプライド完全崩壊です。ヤバくないですかこれ。



 「あの、降ろして――――――」


 「いけません。アーロン様はただでさえ身体が弱いのです。例え貴方がジュン様と夫婦になろうとも、アーロン様に仕えますので」


 「ぇ?」


 「ボクは貴方の剣であり盾だ。アーロン様の為ならばこの命を捧げます」


 「わぉ」


 【ぶっちゃけわしらだけで事足りるから必要ないのが本音じゃがな】



 何故ゆえにこの執事くんが私の為に命まで捧げるのでしょうか。あとナインさん、ぶっちゃけた本音は隠してください。例え本当だとしても、正直私も必要ないかなーって思ってたりするけども。



 【それはそれでどうなんじゃ】



 うん、クズだと思ってるよはい。食事に着替えに入浴までもお世話されてる私がこんなクズな意見を言えるなんて……ある意味すごいかも。勿論自分自身に呆れるほどに。



 「それでは行きましょう。既に用意は出来ていますが、奥様の自宅へ向かうのです。念の為に身なりを整えてましょうね」


 「ぇ、このままで」


 「いけません。身体の隅々まで洗います」


 

 やだなぁ、もぅ。


 おぎゃぁーっ。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



 執事によってアーロンは連れて行かれ、部屋にはこの家の当主であるスザンナとジュンの二人になった。


 アーロンが居なくなった事を確認したスザンナは屈強な身体に右額から右頬まで刻まれた大きなキズ、そして天井から照らされる光を草一つない砂漠と化した鏡のような頭部できらりと反射させながら渋く低い声で娘であるジュンに言うのだ。



 「ジュン。父親として、私は失格なのかもしれないわ。けれど、アナタの男運の無さには見ていられないの。それに、アナタも男なら誰でもいいと自暴自棄になってるでしょう」


 「…………すまん、父上(・・)。やっぱり、そろそろそのオカマ口調は止してくれ。流石に、聞いてて辛い」


 「あらぁそこぉ?」


 「だが、心配してくれているのはわかっている。しかし、アルスマグナ家の息子……………噂では聞いていた。見たこともない、尾が九つに分かれた獣人が産まれたと。それが彼か」



 そう言いながらジュンはスーツのズボンから煙草の箱を取り出し、一本咥え指から火を灯すのだ。直様口から煙をふっと吐き出す姿に父親であるスザンナはため息を溢してしまう。ここで吸うな、と目で訴える父親に気付いたのか彼女は咥えていた煙草をなんの躊躇もなく握り潰す。


 再びその光景に呆れてしまうスザンナであったが、話を続けるのだ。



 「彼の父親は謎の死(・・・)。そして数年後にはアーロンちゃんも死亡とされちゃったの。厳密にはアルスマグナ家内部でアーロンちゃんの利用価値がない(・・・・・・・)と判断され、捨てられたのよ。けれど、殺すこと(・・・・)が出来なかった(・・・・・・・)。故に地下に幽閉し、分家や他の名家や貴族に上手くアーロンちゃんを利用しようとしたの。無論、アルスマグナ家の了解を得てね。でも悉く失敗したの。で、私が引き取ったわけ。使える使えないではなく、アナタの夫にするためにね」


 「色々言いたいことはあるが―――――――何に利用しようとしたのだ。それなりに理由はあるんじゃないか」


 「アーロンちゃんはね、魔力が無尽蔵にあるのよ。それも文字通りでの意味での無尽蔵。本当に底がない。だからアーロンちゃんの無尽蔵な魔力を己の者に、或いは研究対象にしようとしたの。けれど、失敗が積み重なり成果という成果は得られなかったわ。今更アーロンちゃんを誰かの夫にしても文句は言われないわよ。むしろアルスマグナ家が私達クリムゾン家と縁を結べるんだもの。喜ばないワケがないでしょう」


 「母親は」


 「母親は、そうね。再婚しているわ。アーロンちゃんの母親はアルスマグナ家の次女だもの。アーロンちゃんの父親とは深く愛し合っていたみたいだけれど……………その父親が母親を、アルスマグナ家を裏切ったらしいわ。アルスマグナ家を敵に回したのよ。謎の死は自殺と片付けられてはいるけれど、実際は―――――ねぇ」


 「――――――そうか。」



 何事にも裏があり、闇はある。光という名の名声や地位、権力が強ければ強い程に漆黒に塗り潰された闇は大きく深い。アルスマグナ家だけが、というわけではない。珍しい話でもないのだ。

 アーロンは研究対象という名の無尽蔵に魔力を有する人体実験にされていたのだろう。非人道的で、残酷な事をされていた可能性もある。


 大凡検討は付く。


 無尽蔵の魔力を有するアーロンとの間に産まれた子供はどうなるか、と言う話だ。無論、アーロンというアルスマグナ家の血を取り入れる事が最優先だろうが実際は多少の期待はしているのだろう。長男長女は既に結婚し、子供もいる。だからこそ、何時まで経っても男に逃げられ結婚出来ずにいる自分が選ばれたのだと察していた。だが、敢えて気付かない。無視を決め込む。あまり首を突っ込みすぎれば面倒な事になるのは目に見えていたからだ。



 「で、あの執事は何だ(・・・・・・・)



 だが、無視できない事もあった。


 アーロンが連れて行った執事である。



 「…………………ああ、あの子ね」


 「アレ(・・)は何者だ。あの足取りに身のこなし………隠している様だがあの魔力は、もしや(・・・)


 「詮索はダメよ、ジュン」


 「――――――――どういうことだ父上、いや当主!なぜっ!」


 「ジュンちゃん。面倒なのは嫌いじゃなかったかしら」


 「―――――――クソッ!」



 ソレ(・・)が面倒そのものなのだと吐き捨てながら退出してしまうジュン。その様子を見送ったスザンナはため息をついた。



 「仕方がないじゃない。幾ら皇族(・・)相手に逆らうのは難しいわぁ。でも、なんで(・・・)アーロンちゃん(・・・・・・)なんでしょうね…………うふふっ♪ますます興味湧いたわぁ。モチロン、魔力がどうこうじゃなくてアーロンちゃん自身にっ」





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