鬼神は君臨す
スザンナさんは来なかった。
美青年執事くんに何故かと聞いて見るとどうやら急用が入ったとのこと。しかもかなり一大事らしく、【なる・いむる】?となるモンスターがこの国の近くに現れたとか。近くとは言ってもここから車で約6時間ほどの距離………………あ、本当に現代なんだ、ここ。
【なる・いむる】というモンスターは過去に国を滅ぼした大型モンスターらしく、モンスターの中でもトップクラスの脅威を有する危険モンスターだとか。
「―――――ったく、久々に来てみればなんだァ?」
美青年執事くんには既に寝ると言い居なくなってからナインさんに分身を作ってもらい身体を鬼神さんに貸したのです。そしてファンタジー×現代な世界でどんな事が起こるのか。ゲームみたいに冒険者ギルド的なものがあるのかとか興味津々だったんですが――――――。
「お、おいっ、【赤鬼】だ」
「暫く見なかったが…………」
「まさか、受けるつもりか?アレを」
冒険者ギルド――――――ではなく、役所に隣接している【調査課】。国や街には必ず存在しており、国が認めた職業だ。しかも大抵はアルバイト感覚に出来る仕事もあれば、探索者の中でも【調査許可書】という国家資格が必須なものもある。しかも【調査許可書】にも【調査許可書:予備捜査官】【調査許可書:国家捜査官】【調査許可書:国家操作長】と三つに分けられるのです。
【調査許可書:予備捜査官】は車で例えると原付きの様な研修を一日二日行い、極めて危険度が皆無の仕事をアルバイトとして働ける。15歳からこの資格を受ける事は出来るので学生も多い。
【調査許可書:国家捜査官】は一気に難易度が上がる資格。この資格を有する為には知識もそうだが、純粋な戦闘能力と戦闘技術があれば余程性格や前科が無ければ取得は出来る。何が難易度を上げているかは、純粋に高い戦闘能力を求められる為だ。
【調査許可書:国家捜査長】はこの国の最高国家資格。国家捜査官の場合は、国による指揮下に入るのだがこの資格は国家捜査官達を指揮する事も可能であり、更には独立して探索者事業―――――ゲームで例えるとギルドを作る許可を得られ、ギルド長になるもの。しかもこの資格があれば予備捜査官の育成の教員としても働けることも可能だ。戦闘能力だけではなく知識、更には多種多様な人材を扱える能力も求められる為、この資格を有するのは国家捜査官の10分の一にも満たない。と鬼神さんから説明を受けた。一応知識はあるんだね、なんにも考えていないかと思ったーっ。
…………にしても、鬼神さん。この調査課にいる人達から凄い警戒されてません?警戒というより恐れ?ううん、畏怖の念を抱いているような。
「久しぶりね、赤鬼」
「んぁ?」
おっと?唐突に鋭い目つきの美女が!
しかも黒のスーツ姿、動きやすいためかパンツスーツな10後半の元は黒髪だったけど金髪に染めたボブヘアーで端正な顔立ち。しかも両手にはメリケンサックが―――――――へ?しかもスーツだけど関節とか胸部に首にはプロテクターも付けられている。あ、戦う女性ですか、素敵です!
「あぁ、テメェか」
「てめぇではないわ。私には―――――」
「うっせぇよ下僕が。で、何があった?」
ちょ、下僕って。流石に言い過ぎでわぁっ!?
因みに私の身体なのに鬼神に主導権を渡すと見た目が変わっています。具体的には150もなかった身長は2mを超えている。更には筋骨隆々の赤髪伊達男だ。しかも着崩した洒落たスーツを……………え、どこで買ったの?凄く高そうなんだけど?
「(オレが所属してる場所に支給されたモンだ。気に入らねぇか?)」
い、いや……一見ただの裏稼業の人みたいで怖いッス。
「(ハッ!いいねぇ!恐れられることはいいもんだぜ?それに、神の名を冠しているなら恐れられてナンボだからよぉ)」
あ、そ、ソーッスカ。
何もいーません。
「―――――はぁ。現在、【ナル・イムル】による襲撃の危険性があると軍から緊急要請があったの。相手は過去にこの国の元となった大国を滅ぼしたモンスター。神話やお伽噺として誰でも知る【ナル・イムル】相手に警戒するのも仕方がないけれど…………知らなかったの?」
「んーなこと知らねぇし興味もねぇ――――――(って、待てよ。おいナイン。テメェ昨夜お灸を据えた蛇の話ししてたよな?その蛇って、【ナル・イムル】って言ってなかったか)」
【――――――むぅ、何じゃ。あ、そういえばそんな名前を名乗っておったのぅ】
「(ここでオレが撃退した、つーことにしたら報奨金貰えるんじゃねぇか?)」
【わしは興味ないがの。撃退したの、わしじゃけど】
「(…………よし、今から【ナル・イムル】を探し出してボコって持ってくるか)」
うん止めて。多分国がパニックになると思うし。何か後々面倒なことになりそうだからダメよダメよダメなのよぉー!
「(ちっ、わかーったよアーロン。確かに目立つと素性を探られて面倒だ)」
「赤鬼、貴方はどうするの」
「あン?テキトーな仕事で稼いで女抱きに行く予定だ。ナル…………なんとかは現われりゃそんときに相手してやるよ」
「抱きに―――――って、アンタねぇ!」
うん、そりゃ起こるよね。だってナル・イムル?っていうモンスターで皆対策したり警戒してるんだから、そんな中で興味ないから適当に稼いで女抱くって言ったら………ねぇ。同業者からすれば、国のために働いてる中巫山戯たこと言われると嫌でしょ。
「―――――って、おいおい殆どナル野郎のモンばっかだなぁ」
「当たり前でしょ。赤鬼、アタシと組みなさいよ」
「あ?何言ってんだ下僕」
「…………アンタとアタシは同じ仕事仲間でしょうが。って、さっきから下僕下僕って」
「下僕は嫌か?ならバカ弟子でいいだろ」
バカ弟子?
なぜ故に。
「(数年前に慰め者になっていた小娘だ。薬漬けにされても尚、必死に抗う様に興味湧いてな。オレがボスに直談判して傘下に入れたんだよ。条件としてこの小娘を使えるまで鍛えろとな)」
あぁ、なるほど。鬼神さんはこの方の師匠さんなんですね。けど、ボス?ボスって、ドン的な?
「(まあな。一応上司だ)」
「…………名前で呼んでくれてもいいじゃない」
「ションベンくせぇガキ相手の名前なんざ覚えてるかよ」
「な、アタシは子供なんかじゃ―――――」
「色気もねぇ小娘じゃねぇか。勘弁してくれよぉ、オレぁガキは無理なんだって」
「は、はぁ!?」
「そもそも胸もねえし、すぐ折れちまいそうな細い身体に抱き心地ねぇだろ」
う、うわぁ、結構ひどいことを言いますね鬼神さん。
確かにこのお弟子さんは、少女らしさがあるけど必死に背伸びしてる感じではある。あと、うん。華奢だし胸も…………うぅん、何言ってもダメかも。鬼神さん、デリカシーがないからほんと。
「おいお前!」
……………おっと?テンプレみたいな展開?
しかも……………この流れ的には鬼神さんが悪者的な扱いです。あ、異世界転生しても念願のテンプレだと思ったら悪役の場合があるんですね勉強になります。
で、鬼神さんに声をかけてきたのは……………男子高校生?
黒髪の平凡な―――――いや、平均よりも容姿は上。つまり中の上。更には後ろに彼と同じ制服の女子もいる………しかも弟子さんに引けを取らない容姿ですね。うん、うらやま〜!
「…………ンだぁ、クソガキ」
「あんた、人を何だと思ってるんだ!師匠かわからないけど、下僕下僕って…………!」
うーん、多分このお弟子さんが名前呼ばれなくて悲しそうな表情をしていたからだろうか。正義感が強い彼はそれを指摘、そして横のヒロインっぽい茶髪ポニーテールさんも同じ女性としてお弟子さんを下僕下僕と言われているのを見ていられなかったんだろうね…………前世ならパワハラですよ鬼神さん。いや、この世界でも現代っぽいから訴えられるんじゃない?
「(なるほどなァ。ま、下僕なんざ興味ねぇからさっさと手放してぇんだけどよォ)」
あ、本当に興味ないわこの神様。なぜわかるかって、精神も何となく共有してるからわかってしまうんですよね。けど、鬼神さんに喧嘩を売るのは不味いんじゃないかなーって。あと多分………この子達、お弟子さんとお知り合いみたいな?顔見知り?
「下僕は下僕だァ。まあバカ弟子よりかは言いやすいからそう呼んでるだけだけどな」
「あんた、彼女にそんな――――――」
「説教かァ?それともこの下僕に興味あんのかァ?ま、オレぁどうでもいいけどよ」
「どうでもいいって―――――!」
「おい下僕。テメェのトモダチか?知り合いか分かんねーけど同じ同業者ならコイツらと組んどけ。オレぁ一人でいい」
そう言って鬼神さんは面倒臭そうに掲示板に貼られた調査依頼の用紙を取り、受付に渡す。キレ手暴れるかと思ったけど、よかったぁ。けどお弟子さんは捨てられた犬みたいにしゅんっと一瞬悲しそうな顔してたけど、次は友達?顔見知り?の二人に対してキレていますね、はい。
「余計なことしないで」
「いや---さん、あの男は――――――」
「そうよ。私達同じクラス―――――」
あ、お弟子さん学生なのね。で、あの二人はクラスメイト…………と。お弟子さんは迷惑そうにしてるけど。
「(迷惑なのはこっちだクソが。あのバカ弟子は一人である程度は出来るように鍛えた。教える事もねぇし、さっさと取り戻した生活を送れりゃいいっつーのに)」
……………実は鬼神さん、ワザと遠ざけるようなことを?元々は薬漬けで慰め者になってたから元の生活を過ごしてもらいたいって―――――――。
「(勘違いすんなアーロン。あのバカ弟子はオレがやることすることに一々アヒルの雛みたいについてきてウゼェだけだ。追い払うにはそうするのは手っ取り早い)」
あの二人が知り合いっぽいって確信したら占めたっ!てテンション上がってるトコロ、本当にウザかったみたい。私としては可愛らしい娘だなぁって思ってみたり。でも、経緯とか考えてみると仕方がないことかも。師匠な鬼神さんに信頼を寄せる――――――ううん、依存してるみたい。
「(アーロンもそう思うか…………………ったく、失敗したなぁこりゃ。暇潰しだったのによぉ)」
依存は…………うん、お弟子さんの将来を考えたら治した方がいいかもですね。自分の意志が薄くなったらその内一人で生きていけなくなりますし。あと、万が一何かしらの事情などで鬼神さんが居なくなったら新たに誰かを依存する可能性も無いとは言い切れませんし。
「(だからこそのあの野郎だぜェ。前にアーロンが話していた美女を侍らせるはーれむしゅじんこう?みてぇな奴じゃねぇか。あの小娘もソイツのはーれむの中に入れりゃぁ何とかなンだろ)」
うわっ、丸投げする気だこの神様。確かにあの男子高校生、ハーレム主人公っぽいけど…………ハーレムって、一夫多妻って認められてるの?そもそもハーレムって正妻しか寵愛を受けられないイメージがあるから側室だと…………その。
「(そりゃお前、バカ弟子が女として励むしかねぇだろ。そこまで付き合ってられねーよ―――――っと、一仕事終えたらメシ行くかメシ!)」
あ、そっすか。
「(驚けよアーロン。近場の居酒屋――――――――マジもんのマンガ肉があるぜ)」
はい、鬼神さん。仕事は迅速に行ないましょう。そして仕事終わりにマンガ肉を!