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牢獄からこんにちは



 こんにちは。


 前世では、山田太郎という何処にでも居そうな社会人です。


 まあ前世って言ってる時点でわかりますよね。転生しました、はい。


 前世は…………苦しいこと、悲しいこと、口惜しいこと、死にたくなるようなことも経験しましたが、それと同時に楽しいことも嬉しいこと、幸せなことも経験しました。


 プラマイゼロって感じですね。


 よくある異世界転生とか異世界転移、タイムリープ系の主人公って前世とかでやり直したいこと、ざまぁしたいこと、勝ち組になりたいという願望はお持ちでしょう。特にファンタジーものなら勇者になって〜とか、神様からチート貰って幸せな第二の人生を送りたい〜と欲望タラタラなんでしょうね。


 まあ、ストレスフリーだからこそ読者からすれば読みやすいですけど、現実はそう上手くはいかないからこそ、その様な作品を嫌っている風習?的なのもありますか。


 社会人、いえ、世の中を知る者達ならそんなストレスフリーもストレスに感じるかもしれませんね。現実を知らない無知な若者がなにか言ってるよぉ〜、みたいな?


 …………自分でこんな、こと言ってますけど私もファンタジーっぽい世界に転生しました。


 何故確証を持てないか。


 簡単です、外の世界を知らないんですよ。


 というよりか、転生して早14年経過してますけど家に引き籠もってます。いえ、引籠されているんですよね。


 あ、まあ――――――多分、地下の牢獄っぽい場所に幽閉されてます、はい。


 違いますよ?何も悪いことはしてませんし。


 大体4歳位で意味もなく投獄されたんですよ。


 しかも物心が付いたの、それくらいで……………4歳以降は朧げで夢で見た記憶みたい確証は無いんです。もしかすると自分の想像とか妄想、あと脚色されてる可能性もありますし。


 あ、母親の顔は知りません。父親は投獄される前には死んだそうな。多分殺されましたかね?


 まあ…………投獄、幽閉された理由は大体察してはいるんですよ。むしろそうなりますよねー、的なアレです。


 両親は、人間なんですよ。


 そして私は……………獣人です。しかも九尾の狐なんですよね。何で狐じゃなくて、九尾なのでしょうか?


 人間同士の間から産まれた子供が、まさかまさかの獣人。ファンタジーっ!と喜ぶバカは居ないでしょう。血統を辿れば、祖先の中に九尾の狐獣人がいたかもですけど、幽閉されてるってことは居ないんでしょうね…………。


 でも、物心つくかつく前に幽閉するのはどうかと?


 本来の子供なら泣き叫ぶんでしょうが、その時に前世の記憶を思い出しました。まあ、それ以外も(・・・・・)ですが。


 前世の記憶、それのお陰で私は大人しく幽閉されたのです。毎日三食は与えられるがそれほど大したことはない…………が、実際の食事事情は知らないのでこれが普通なのかもしれない。


 今思えば、大人しく幽閉され大人しく過ぎている子供は気味悪かったでしょう。


 牢屋で一人、本来なら発狂モノなのだが生憎私は孤独ではなかった。



 私の名は【アーロン】。名字は不明。多分貴族の息子だと思うけど、突然変異?で産まれた九尾の狐獣人だった為に幽閉されちった可哀想(笑)な子供。


 はてさて、その正体は山田太郎(前世)の記憶を持つ一般人でありある特殊能力的なものを宿している。


 それは――――――。



 【おいアーロン!昨日、【ナイン】に身体貸したんだろ?なら今日はオレに貸せよ!そろそろ女抱きてぇんだよっ!】


 【野蛮な鬼め。節操を保て】


 【地獄の魔神様は真面目だねぇ…………わたしとしてはちっちゃい子達をイジメられるお店とか探したいかなあっ?】


 【イッヒッヒッ!♪天使サマも中々エゲツないご趣味を持ってますネッ!子供達を傷つけるのは辞めてもらいたいデスッ♪子供達は笑顔でないと――――――あ、大人は別にどうでもいいデスケド】


 【鬼も悪魔も天使も道化もどうでもいい。我はこんな狭苦しい地下ではなく緑豊かな自然に満ち溢れた場所に行け】



 私の中には、八つの神様(・・・・・)が宿っている(・・・・・・)のです。


 因みに話すことが可能なのは六つの神様で、残り二つの神様は対話すら出来ません。他の神曰く人間が嫌いだそうだとか。よくある物語の終盤とかで嫌ってたけど主人公の為に力を貸してくれるとかそういう王道展開は無さそうな程に嫌っているそう。



 【鬼神よ。わしは宿主(マスター)の身を、この国を守る為に身体を借りたのじゃ。お主の様に性欲を吐き出すためではないわい】


 

 そしてこの九つの神々を纏め上げる…………というより、唯一私の味方をしてくれるのがこの【ナイン】です。姿は私と同じ九尾の狐獣人。肌は褐色だけど、容姿は瓜二つ。まあ、瓜二つなのは理由があるんですけど……。


 

 【あ゛ぁン?アーロンも性欲くらいはあンだろ?また女の扱い方を教えてやるからヨォ!】


 【そもそも女を抱く金が無いじゃろ。全く、宿主マスターの為に貯めておいた金を使い潰しよってからに】


 【ンだよ!それならオレに抱かれてぇ女達から収集しただろうがよっ!】


 【まずそれは宿主マスターの身体じゃろ!しかも断りもなく売春するとは―――――】


 【ヤッて稼いで何が悪いんだよ、クソ狐】


 【稼ぐことを言ってはおらん!宿主マスターに何の相談もせずにそんな事をした事を言っておるんじゃバカモノっ!】



 第二の人生、その初体験が身体を貸している間に済まされていた件について。まあ、その相手は容姿もスタイルも良かったから良いけど…………せめて、ねぇ?


 脳内で喧嘩をしている最中、私は文字通り牢屋に打ち込まれてます。が、中にいますは八つの神様。神様達が、汚い部屋―――――じゃなくて、牢屋に居られると思います?


 もう牢屋というより、部屋。


 灯りもあるし、ふかふかのベッドもある。更には本や玩具までもがあるのだ。一応風呂もあるし、広さも1ルームほど。まあ元々はもっと狭かったけど色々便宜図ってもらってね。


 神様達は、私の為じゃなく単に自分の娯楽の為だったり、単に綺麗好きとかそういう理由でこうなった訳です。本来ならもうこの世にいないよ、ホント。



 【金なら安心しなァ!この前、アーロン(こいつ)の身体をちっとばかし借りて稼いできたからよぉ!】


 【まさかお主、売春――――――】


 【ちゃんと働きて稼いでるぜェ!確か、『探索者』だったかァ?】



 ………………………『探索者』、とな?



 【あン?言ってなかったか。『探索者』で稼いでンだよ。この狐にどやされてな】


 【全く…………】



 た、『探索者』とはどんな仕事で?



 【あン?そりゃ、指定されたモンスターを狩ったり未開拓の土地の調査だろうがよ】


 

 モンスター?未開拓の土地の調査?


 あ、あれー?私、この世界に産まれて10年以上は経っているんですけど、そんなの知りませんよ!?あと、モンスターとかファンタジーじゃないですかヤダーっ♪


 ファンタジー!夢にまで見たファンタジーっ!!!


 もうっ、なんで言ってくれなかったんですか!外の世界にそんなファンタジー要素があるなんて!俄然やる気出てきましたよぉっ!私も冒険者―――――じゃなく、探索者に!



 【いや無理だろ】


 

 何故ゆえに?


 鬼神様鬼神様、即答ですか。何でですか、ファンタジープレイしちゃいけませんのか、このロクでなしヤリチン野郎がっ!!!



 【ボロクソ言いやがるなクソガキ。まっ、事実だから怒りはしねェけどな】



 ………………説明プリーズ。



 【そもそもテメェはザコだろーが。貧弱で力も皆無、しかも魔法も使えねぇ。唯一あるのは無尽蔵に宿る魔力のみ―――――】



 は?魔法?魔力!?


 ちょ、ちょっとまって!?魔法あるの?私、魔力あるの!?



 【あるぜ。ま、アホみたいにあるだけで魔法に変換出来ねぇ莫大な宝の持ち腐れだけどな。どう足掻こうがアーロン、テメェは施しようのねェザコだ。何考えてるのか容易に想像出来るが、諦めろ】


 

 ちょっ……………ナインさんっ!鬼神さんがザコって………っ!



 【…………宿主(マスター)よ、鬼神の言う通りじゃ。ゲームのステータスで例えると、宿主(マスター)は魔力に全振りしている状態じゃ。その影響か、体力・握力・スタミナ・魔法を使用する術―――――つまり、スキルじゃな。それらが平均以下。モンスターに遭遇すればまず、死ぬじゃろうな】



 そ、そんなぁ…………。


 確かに体力無いし、本一冊よりも重いものは持ったこともない。身長も…………たぶん、前世180cmはあったけど今じゃ150cmもない。あっ、170cmないから人権ない感じです?つらたん……。


 あ、でもナインや鬼神さんに力を貸してもらえればチート、つまり俺TUe――――――――。



 【宿主マスター………申し訳ないのじゃが、わしらが宿主マスターに力を貸すことは出来ん(・・・)。そもそも力を貸したとしても宿主(マスター)の身体がまず耐えられんのじゃ。じゃて、宿主マスターの身体の主導権がわしらにあれば何とかなるがのぅ。宿主マスターは見ているだけじゃ】



 ふぇぇえ〜〜〜………夢も糞もないじゃないですか。


 ……………ファンタジーなのに、鬱だ死のう。



 【アホかテメェはよ。おら、女抱きゃどうでも良くなるからよ!】



 えぇ…………えっと、風俗ッスか。今思えばファンタジー世界ってことは、中世時代みたいな?それなら性病とか怖いなぁ。



 【この国はアーロンの前世、日本と同じだぜ?前世の日本に魔法やモンスターが追加されたようなもンだ】



 あっ………それはそれで何か残念。せめて経済面で〜っと思ってたケド。というより、いつの間に探索者なんてやってたんですか鬼神さん。



 【そりゃ、テメェが寝てる間にだぜ。とーぜんだろうが。まあ基本的に夜に動いて入るな。こんな牢屋じゃ暴れたくて仕方ねぇし、いい発散するからな。それに女も好きなだけ抱けるし】



 ………あ、あの人妻とか止めてね?あと避妊とかもしっかり。知らない間に人様の奥さん寝取ったり、子供出来たりとかもう最悪だから。



 【……………………ぉぅ】



 何その間。


 な、ナインさん?


 

 【すまぬ宿主マスター宿主マスターが寝てる時はわしも宿主マスターの身体のケアの為に寝ておる。故にこのバカ鬼が何かしているかは把握はしておらんのじゃ】



 嫌な予感……天使さん、魔神さん、道化さん、あとエルフさん。何か知ってますか?



 【興味ない】


 【……………わ、わたしは知らないなわぁっ】


 【イヒ?困っている子供達を助けているだけデスよ?変なことはしてまセン】


 【魔神と同じく我も興味ない。巻き込むな】



 ……………怪しいのは、天使さん。あと道化さんは………見た目ピエロだけど子供にはとことん甘いから大丈夫、とは思う。


 天使さん?


 

 【わたしは、無実…………なのよ?】


 【バカ言え。この天使、オレが勧めたSM専門店にどっぷりと嵌っててよォっ!最近はヒーラーか?治癒師の小娘にご執心じゃねぇか。流石はドSの天使様ってかッ!】


 【ばっ!!!この鬼めッ!貴方もこの前人妻に手を出して―――――】



 ――――――――。


 ハッ!言葉を失うとはこのことですか!


 え、鬼神さん――――人妻!?あと天使さん、前々からそういう性癖あるんだろうなって思ってたけどマジっすか。


 あ、頭痛くなってきた。一応確認なんですけど、私の姿じゃないですよね。それだけが唯一の救いですけど…………人妻をNTRとか頭湧いてんのかこの鬼。まだ店に行ってるだけマシだよ天使さんは。



 ――――――――ん?


 ふと思ったけど、鬼神さん。探索者って身分証明無くても入れるものなの?



 【いや無理だな】


 

 では、どうやって探索者に?


 

 【そりゃ、裏の伝でな】



 裏の……………つて?



 【身分証明もねぇからよ、モンスター狩っても財宝持ち込んでも売れねぇンだ。流石にどうすっか――――って考えてたら身分証明偽造してやるから報酬の何割か寄越せってな。ちとボコってその頭に挨拶してな?したらイイ仕事を回すから何割か渡すっていう条件で働いてんだ】



 あ、あの………………その、相手っていうのは?



 【ンあ?闇ギルドだぜ?組織名は忘れたけどなァ】 


  

 や、闇ギルドぉ?



 【あぁ、テメーらの地球で言い変えりゃぁ、マフィアとかヤクザみたいなもンだ】



 ………………………………………………………………………………きゅぅっ。



 【ま、宿主(マスター)ッ!?き、気絶しておる…………】



 アーロン、14歳。


 異世界にて、異世界裏組織―――――闇ギルドと関わっていた様です。ああ、もう前世に戻りたい。



 








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