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エピローグは煙草でお願いしますわ

どうも、お待たせしました最終回です。


蛇足と言っても差し支えないかも。


今までおつきあいくださった皆様、ありがとうございました。次のヤニカスで会いましょう

ブラック・デビルとの熾烈な戦いが終わり数日が経過した。


ブラック・デビルは完全に消滅し、セレスティン帝国には平和が戻った。


商業都市“コマス”での出来事はニッコ・レートが命をかけて封印した古の悪魔が復活を果たしたと、帝国はその真実を明かした。だが、ニッコ・レートが此の世の煙草を撲滅するために500年前にブラック・デビルを召喚したという事実を知る者は王国のごく一部の要人のみに止められた。自らの過ちを自らの命で以て償った大賢者を愚弄するという愚かな行為を皇帝であるエドヴァンは良しとしなかったのである。


ニッコ・レートの生み出した魔道具であるイクォスは、主の不始末は眷属である自分の不始末であるとし、物理的被害はほとんどなかった物の、コマスでブラック・デビルに操られ、ニコチン中毒者となってしまった人々のために診療所を開き、ピアニス配下である数体のウェアウルフ達と共に日夜ニコチン中毒者達の治療を行なっている。


・・・


そして時は移ろい、あの戦いから数ヶ月が経過した。


ピアニスは豪奢に飾られた部屋でいつも通り煙草を吸っていた。


「ふぅーー……やはり金ピースは落ち着きますわ…」


午前9時なのにもかかわらず本日18本目の煙草を吸うピアニス。そこへ


「ピアニス!お前は……お前という奴は今日という日に何をやっているんだ!!」


礼服を着たピアニスの父、マイルドが怒鳴り込んできた。ピアニスを怒鳴りつけるなり、マイルドは杖を振り上げた


「蒼き水龍よ、一切の穢れを流し賜え!!!!」


マイルドの杖から放たれた全てを浄化する水龍がピアニス目掛けて飛翔するだが、ピアニスは一歩も動くことなく椅子に座ったまま


「“根性焼き”」


煙草式魔法一式“根性焼き”を発動させ、水龍を蒸発させた。


「ぐががががががが……!!!」


悔しげに顔を歪ませるマイルド。すると、控えめにドアがノックされ、扉の向こうからセブンス家の執事であるメビウスの声が聞こえてきた。


「お時間です。ご準備を。」


「だそうですわ。お父様、行きましょう!」


「ウィンスよ……ピアニスは君に似て美しく育ったが、私は育て方を間違えたかもしれない……」


真っ白なウエディングドレスを着た、亡き妻の面影が残る娘を見て、マイルドは盛大にため息をつくとぽつりとこうつぶやいた。


そう、本日はピアニスの結婚式なのである。


相手はこの国の王位継承権第一位であるアニス・セレスティン。


何故このようなことになったかというと、ピアニスがブラック・デビルを討伐したことにある。


・・・


古の悪魔を討伐したピアニスは英雄として祭り上げられ、ピアニスの元には連日のように貴族達からの手紙が舞い込んだ。内容としてはほとんどがピアニスにすり寄るための物で、見合いに関するものも多かった。


ピアニスが煙草を吸っていることで遠巻きにしていた連中もそんなの関係ないと、手のひらを返し、ピアニスにすり寄ってきたのだ。仮にも一貴族である彼等に無碍な対応をするわけにも行かず、何人かの手を借りながら当たり障りのない返事を書いていたのだが、一向に減らない手紙に、ピアニスはある日ブチ切れた。


「止めろピアニス!!」


「止めないでくださいませお父様!大丈夫です、人的被害は出しません!貴族の館を一つ残さず灰にするだけです!」


「それを止めろと言っている!!!」


背中から翼を生やし、今にも貴族邸宅を襲いに行こうとするピアニスを必死に止めようとするマイルド。使用人達には最早止められず、ギャアギャアと言い合う2人を呆然とみていた。


そこへ


「……何をしているんだいピアニス?」


この国の第1皇太子であるアニスが何枚かの書類を持ってピアニスの屋敷へとやってきた。そんなアニスに対してピアニスはこう答えた


「五月蠅いハエを灰にしてくるだけですわ」


「だから止めろと言っている!!!!」


アニスの前だというのに恥も外聞も忘れ、ピアニスを怒鳴りつけるマイルド。そんな中、アニスだけはニコニコと笑って1枚の紙をピアニスへと差し出しながらこう言った。


「はいこれ。サインするかしないかは自分で決めてくれ。」


「……は?」


アニスがピアニスに差し出したのは王家の婚姻状だった。夫の部分にはアニスの名前が書かれている。呆けているピアニスにアニスはさらに説明を付け加えた。


「僕と結婚すれば、煩わしい手紙の大半は下の方で処理できるし、貴族付き合いなんかは僕が出れば大体なんとかなる。それに、帝国としても君のような存在を王家に止めておきたい。お互いWin-Winだと思うけどどうかな?」


数秒考え込んだピアニスは思考の海から立ち返ると


「……メビウス、ペンを」


「は、はい!」


さらさらと達筆で婚姻状に“ピアニス・セブンス”と記入した。


そういう訳で、この愛もへったくれもない結婚は成立したのである。


・・・


セレスティン帝国屈指の大神殿の中、帝国の要人達が集まる大神殿の中はしんと静まりかえっており、教皇である老人の朗々とした誓いの言葉が響き渡っている。


「……貴殿らは神の導きにより夫婦になろうとしています。新郎、アニス・セレスティン。汝健やかなるときも、悩めるときも、真心を尽くし、妻であるピアニス・セブンスを愛することを誓いますか?」


「誓います。」


アニスはいつも通りのにこやかな笑みで答えた。


「新婦、ピアニス・セブンス。汝悲しみあるときも、喜びあるときも新郎であるアニス・セレスティンと共に助け合うことを誓いますか?」


「誓います。」


ピアニスはニコチンの切れた少々苛ついた表情で答えた。教皇はピアニスのとげとげしい声に少々顔を顰めながらも続ける。


「では、指輪の交換を」


教皇に言われたとおり、2人はダイヤモンドの嵌められた指輪をお互いの薬指に嵌める。それを見て教皇は続けた。


「では、誓いのキスを」


アニスはピアニスを抱き寄せ、己の唇をピアニスの唇と重ねようとする。ピアニスも抵抗はしない。唇が触れあうまで後1㎝と言ったところでアニスはその動きを止めた。


「……うん、やっぱりこんなのは似合わないな」


そう言って、胸ポケットに手を突っ込む。


「殿下?なにを……んっ!」


アニスはポケットから取り出した金ピースを一本ピアニスに咥えさせると、自身も煙草を咥え火を付けた。その行動を見てピアニスはふっと笑う。


「誓いのキスがシガーキスだなんて、殿下も中々分かってますわね。」


「まあね。君のことはよく見てたから。」


そう言ってシガーキスを交すピアニスとアニス。


当然大神殿にいた参加者達は呆然としている。ただ、親族席にいたアニスの父親である皇帝エドヴァンとピアニスの親友でありアニスの異母兄妹であるイリーナは大爆笑しており、ピアニスの父であるマイルドは頭を抱えていた。また、特別に参列を許可されたイクォスとウェアウルフ達は苦笑いをしていた。


そんなことは気にせず、煙草を吸う2人。時々アニスがむせているのをクスクスと笑うピアニス。


「ケホッ……君こんなキツいやつ吸っているのかい?」


「ふふ、当然ですわ。キツければキツいほど煙草の味が良くしますもの。」


「そんなものなのか。でも、初めて吸ったから僕には煙草の味とか分からないや。」


「……そうですか、では…」


ピアニスは有無を言わさず、アニスの唇に己の唇を重ねた。突然の行動に固まるアニス。


「どうでしたか?」


唇を離した後、アニスにそう問いかけるピアニス。それに対してアニスは呆然としたままこう答えた。


「……甘い」


こうして前代未聞の結婚式は幕を閉じた。



多くを語るは無粋だがその後、ピアニスとアニスは仲睦まじく暮らし、世継ぎにも恵まれ、優れた治世を行なったとされ、セレスティン帝国は大きく発展を遂げた。また、幾度となく帝国を我が物にせんと周辺各国がセレスティン帝国に戦争を仕掛けようとしたが、侵攻する前にたった一人の美しい女性に敗北したとされている。



余談ではあるが王家直轄領の煙草畑に手を出した者は行方不明になるという噂が帝国内で流れており、ピアニスとアニスの数代後のセレスティン帝国内でもその噂が耐えることはなかった。


自身の就活が終わる前にヤニカス令嬢が完結してしまった……!!!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 完結おめでとうございます(*^▽^)/★*☆♪ アニスとピアニスの結婚とは妥当なラストでしたね! 寧ろ、王族入りしない未来像は思い浮かばない感じか(笑) [一言] 完結お疲れ様でした! …
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