ニコチンに限界なんてありませんわ
「煙草式魔法三式“副流煙”!」
ブラック・デビルがピアニスに向けて超大出力の副流煙を噴射する。その早さは音速にも届く勢いで、ブラック・デビルの口から幾筋も放たれる。だが、どれ一つとしてピアニスには掠りもせず、ピアニスは金色の翼をはためかせ、まるで踊るかのように躱していく。
「なんだ……一体何なんだその翼は!!」
自分の攻撃が一切当たらないことに苛立つブラック・デビルに対してこう言った。
「500年の間に煙草は進化し続けてきました。煙草を包む紙も。煙草の葉の配合も。そして、フィルターも」
ピアニスの手にはジェットフィルターを装着したThe Peaceが握られていた。そう、タバコ屋の店主からもらったジェットフィルターをピアニスはThe Peaceのフィルターと取り替えていたのだ。
ピアニスの金色の翼は、ジェットフィルターにより、The Peaceの限界を超えたニコチンが実像となって現れた物である。
「たかがフィルター一つで……!!」
ブラック・デビルは再び煙草を10本一気に咥えると、スモークドラゴンを創り出した。一斉にピアニスに向かって襲いかかるスモーク・ドラゴン。だがピアニスは動かず煙草を咥えると
「煙草式魔法三式“副流煙”!」
ピアニスは“副流煙”発動させた。今までの白い副流煙ではなく、金色に輝く副流煙はスモークドラゴンたちを飲み込んだ。
「そんな物が通用するわけ……な、なに?!」
ブラック・デビルの目は驚愕に見開かれる。なぜならば先程あそこまでピアニスを追い詰めたスモーク・ドラゴンが一瞬で消滅させられたからである。
「残念ながらスモーク・ドラゴンはもう私には通用しませんわ。煙でできているスモーク・ドラゴンはより強い煙を当てれば消滅すると言うことは先程の追いかけっこの時に分かりましたから。」
「ちっ!」
ブラック・デビルは自身最強の技であるスモーク・ドラゴンを潰され、数隼呆然としていたが、すぐに反撃しようと煙草を取り出そうとする。だが
「“根性焼き”!」
ピアニスによって残っていた右腕も灰にされてしまった。
「ふ…フフフフ……なるほど、ここまでですか。」
「力押しでは勝てない相手には策を講じ、そして切り札は取っておくべき物ですわ。貴方がもう少し人の戦い方という物を理解していれば、戦いはもう少し変っていたかも知れませんわね。」
「……なるほど、他者を圧倒しかしなかったニッコ・レートの召喚に応じたことが全ての過ちでしたか。」
何か満足したかのようなブラック・デビル。ピアニスは煙草を咥えた。
「煙草式魔法五式“紫煙”!!」
ピアニスの吐き出した黄金の煙は満身創痍の悪魔へとまとわりついた。そして煙は徐々に形を変え、十字架となり、ブラック・デビルは宙に浮かぶ十字架に磔にされた。そんな状況にもかかわらずブラック・デビルは笑みを崩さずこう言った。
「ではまた地獄で会いましょう。その時は煙草を忘れないでくださいね。シガーキスで迎えてあげますよ」
「私軟派な男は嫌いでしてよ」
言葉とは裏腹にブラック・デビルの言葉にふっと笑うピアニス。そして
「煙草式魔法一式“根性焼き”!」
ピアニスの放った一筋の光が黄金の十字架を貫き、ブラック・デビルは此の世から消滅した。
次で最終回です。
最後までおつきあいください。