戦いに必要な物 それは煙草と知識
どうも、生きてます
「ば、馬鹿な……」
ブラック・デビルは瞠目した。
なぜならば自身がピアニスに放った合計10体のスモーク・ドラゴンが一瞬のうちに自らの制御を放れ、大気に浮かぶ雲へと変化させられてしまったからである。
大気に浮かぶ雲というのは水の形態が変化した物だということが分かったのは今から100年ほど前のことである。
雲は水蒸気と大気中のチリによって構成されており、気圧の低い場所で膨張した水蒸気がチリを核として集まった物は雲となり、空に浮かんでいる。
ピアニスが利用したのはそれだ。
スモーク・ドラゴンの身体を構成する煙を核として、水を与えてやれば、気圧の低い高空域では、無害な空に浮かぶ雲となる。これは500年前に活動していたブラック・デビルには知り得ない知識であった。
「……褒めてあげましょう。しかしっ!勝負は私の勝ちのようですね!煙草式魔法一式“根性焼き”!!」
ブラック・デビルから放たれた数千度にも及ぶ火柱が一直線に地上へと落下するピアニスに向かって放たれる。業火はタールまみれとなったピアニスに直撃し、タールまみれとなったピアニスを焼き尽くさんと包み込み、空中で大爆発を起こした。
「ふ……ふはははは……アハハハハハハ!」
爆炎を見ながら高笑いをするブラック・デビル。だが次の瞬間、爆炎から一筋の白い光がブラック・デビルの左腕を撃ち抜いた。白い光はブラック・デビルの左腕を焼き尽くし、彼の左腕はまるで煙草の灰のようにボロリと崩れ去る。
「ぐああああああ?!?!」
突然の激痛に苦悶の表情を浮かべるブラック・デビル。そこへ何者かが上空から舞い降りた。
「やはり貴方は甘すぎますわね。煙草も詰めも」
「き、貴様……!何故……」
彼の前に少々煤で汚れているものの、5体満足で、尚且つ背中から金色の翼を生やしたピアニスが現れた。
「何故って……煙草を使う悪魔のくせに分からないのですか?貴方の攻撃が私のことを守ってくれたのですわよ?」
「な、何だと……」
ピアニスの言葉に驚愕の表情を浮かべるブラック・デビル。
スモーク・ドラゴンによってタールまみれにされてしまったピアニス。しかしこれもピアニスの作戦であった。スモーク・ドラゴンを雲にしてしまうと言うことは同じ位置にいる紫煙も雲となってしまい、自分は重力に引かれ地上に落下してしまう。新たに“紫煙”を創り出すにしてもブラック・デビルはその隙を絶対に逃がさないだろう。そう考えたピアニスはなるべく全身にスモーク・ドラゴンのタールブレスを浴びながら上空を目指していた。
タールには超高温でなければ燃えないという性質があり、ブラック・デビルが放った“根性焼き”によってピアニスを覆っていたタールはピアニスの代わりに燃え尽き、結果としてピアニスは無事だったというわけである。
「私言いましたわよね?貴方の煙草は時代遅れだと。500年前の旧い知識だけで煙草式魔法を振るう貴方に私は負けませんわ。」
金色の翼を輝かせ、ピアニスは煙草に火を付けた。