人にじろじろと見られながら煙草を吸うのは嫌いです
ブクマと評価と感想をクレ
ヴィンドとの決闘から数日。決闘に勝利したピアニスはいつも通りの日常を過ごしていた。だが
「ふぅーー……」
ヒソヒソ ザワザワ
「……」
此度の一件により、ピアニスは学園中から注目を集めることとなってしまい、いままでは高嶺の花として近づいてくる者などほとんどいなかったのだが、昼食後の至高の煙草タイムですら、遠巻きに眺める生徒が出てきてしまったのである。
(……五月蠅いですわね。私のお煙草タイムを邪魔しないで欲しいのですが。)
内心毒突くピアニス。だが、遠巻きに眺める生徒達は完璧人間であるピアニスが煙草を吸っているその行為を興味津々に眺めていた。
「やあ。随分と人気者だねピアニス。」
するとそこへ4人の仲間を引き連れたアニスがやってきた。
「あら殿下。本日もご壮健そうで何よりですわ」
恭しく礼をするピアニス。それに対してアニスもにこやかな笑顔で応える。だが、後にいる4人の騎士の息子達はどこか不満そうな顔をしている。
すると、何かに気がついたのかアニスに質問を投げかけた。
「殿下、ヴィンド様はどうしたのですか?」
いつもならアニスには5人の王家直轄の騎士の息子達が付いているはずなのだが、今日は4人しかいない。欠けているのは先日ピアニスが決闘で下したヴィンドだ。
「ああ、ヴィンドなら東の森で修行しているよ。」
「あの…魔獣の数多く出る東の森…ですか?」
東の森とは、文字通りセレスティン帝国の真東に位置する森で、数多くの危険な魔物が闊歩する森であり、帝国では森から魔物が出てくることを防ぐため、度々冒険者や軍からの志願者を集い、魔物を間引いている。ヴィンドも今回の魔物討伐軍に参加したようだ。
「君に負けたことが相当彼にとって堪えたみたいだよ。このままじゃ国を守ることは出来ないって言ってね、一ヶ月間の魔物討伐遠征に言ったんだ。」
「そうでしたか。私も影ながら彼の無事を祈っておきますわ。」
「ああ。ありがとう。じゃあ僕はこれで」
そう言ってアニスたちはピアニスの前から去って行った。
アニスが去った後、再び煙草を吸い始めた。皇太子であるアニスが来たからなのか、ピアニスを遠巻きに観察する輩もいなくなり、今度こそ至高の煙草タイムを迎えることが出来たピアニス。その顔はとても幸せに満ちている。
・・・・・
・・・
セレスティン帝国某酒場
冒険者や庶民が入り交じり、酒場内はかなりの盛り上がりを見せている。だが、そんな酒場の端の方で喧噪の中に紛れるようにひっそりと密談をする男が2人。
「で、どうだった?」
「予想以上です。あのままでは計画が台無しになるやも知れません。」
「やはりか……セブンス家の令嬢。噂には聞いていたがまさかここまでのヤニカスだったとは…」
「仕方がありません彼を呼びましょう。彼以外に彼女を倒せる者はおりません。」
2人の男は頷くと、ばらばらに酒場を出て行った。