悪魔の居城に到着ですわ
どうも、お久しぶりです。
未だに就活している男です。
ピアニス達三人は歩き煙草をする人ごみの中を駆け抜けていた。
アニスがブラック商会の位置を検討づけたところへ近づけば近づくほど、歩き煙草をする人の量は多くなっており、何かを探しているかのように、辺り一帯を見回りながら煙草を吸っている。これは暗にこの先にブラック商会があるという事を示していた。
「不味いな……人が多すぎる!このままじゃ人ごみを抜ける前に透明化の効果が切れてしまう!」
「仕方ない、ここは俺が!」
そういってイクォスはアニスの手を離すと、二人から離れた場所で加熱式煙草魔法を発動した。
「加熱式煙草魔法二式“主流煙”!!」
イクォスの口から放たれた加熱式煙草独特の香りのする煙はあたり一帯を飲み込んでいく。そして、煙に気が付いた住民たちは煙の発生する方向。つまりはイクォスのほうへと向かって歩き出した。
「……行こうピアニス!彼の覚悟を無駄にしてはならない!」
「ええ!」
イクォスが住民をひきつけてくれているおかげで開けた道を、アニスとピアニスの二人は駆けていく。その様子を見てイクォスはふっと笑うと、新しい加熱式煙草をセットした。
・・・・・
・・・
「……殿下」
「ああ。どうやらここのようだね。」
通りを駆け抜け数分後、二人は裏路地近くにポツンとある小さな商会の前に立っていた。かなりおんぼろで、見るからに怪しい雰囲気を放っている。そして、看板には“ブラック商会”と書かれていた。そして、商会の壁の隙間からは常に甘い香りのする煙が立ち上っており、また、禍々しい濃密な魔力が商会の二階から感じられる。間違いなくブラック・デビルの居城である。
様子をうかがっていると、古めかしい扉が“ギイィィィ”と、ひとりでに開いた。まるで、二人に入って来いといわんばかりに。
「どうするピアニス?歓迎されているみたいだけど。」
「招待を蹴るわけにはいきませんわ。殿下もよろしいでしょうか?」
「ああ。帝国の皇子として、重要な人物からの招待は断れない。」
「ではお返事をしませんとね。」
そういいながらピアニスは二本の煙草に火をつけ一吸いした後、商会の中へと投げ込んだ。すると数秒後、煙草は爆発し、商会の入り口は跡形もなく吹き飛んだ。
「……どうやら魔力を封じるための罠などはないようだね。」
「ええ。では参りましょう殿下。」
「ではお手を拝借。」
そう言ってアニスはピアニスの手を取りエスコートしながら、パーティー会場へ入るかのように商会の中へと入っていった。その先に彼の古の悪魔がいることを確信しながら。