The Peaceの威力
「ピアニス!無事か?って、なんだこの大量の煙草は?!」
「おい何があった?!」
呆然と立ちすくむピアニスの元にアニスとイクォスが慌てた顔をして入ってきた。
「え、ええ……大丈夫ですわ。」
「一体何があったんだ?魔法の発動を感じて慌てて駆けつけたんだけど。」
「実は……」
ピアニスは先程起きた出来事を包み隠さず話した。ニッコ・レートの魔法が発動し、大量の煙草、The Peaceを創り出したこと。この煙草が悪魔を打ち倒す武器になること。そして、ピアニスが煙草式魔法を使えるのはニッコ・レートの魂の欠片がピアニスに入り込んでいると言うこと。
「そうだったのか……イクォス、君はこのことを知っていたのか?」
「いや、そのことについては知らされていなかった。マスターは俺に煙草式魔法の使い手が現れる。ソレが悪魔を打ち倒す切り札となる。としか言われていなかった。」
イクォスの言葉を聞きながら、ピアニスはニッコ・レートの創り出した煙草の箱を眺める。金ピースの黄色っぽい箱とは異なり、The peaceの箱の色は濃紺で、箱の中心にはオリーブを咥えた鳩をモデルにした金色のエンブレムが刻まれている。その上箱は紙製ではなく、缶ピースのように金属製で、なんとも言えない高級感を感じる
「……?!これは……」
ピアニスが箱を開けると、芳しいバニラの香りがピアニスの嗅覚を襲い、ピアニスの意識を一瞬遙か彼方にある楽園へと飛ばす。だがピアニスはすぐに意識を取り戻すと、箱の中から煙草を取りだし火を付ける。
「フゥーー……あぁ……」
「ぴ、ピアニス……?」
ピアニスが煙草を吸った瞬間、今までに無い恍惚とした表情になったのを見てアニスはぎょっとする。
一方のピアニスはと言うと
「アア……なんと芳しい甘い香り……そしてこの旨み……これこそ私の理想の煙草ですわ……」
「ちょ、ちょっとピアニス?!」
「何処へ行く?」
そしてピアニスはさっさと洞窟の出口に向かって歩き始めた。それを慌てて追うイクォスとアニス。
ピアニスは洞窟から出ると、もうほとんど吸い終わっている煙草を手に持つと、風魔法を使い天高く打ちあげ、そして
「煙草式魔法四式“ポイ捨て”!」
天高く舞い上がった煙草は黄金に輝くと、突如として、天を覆い尽くさんばかりの大爆発を起こした。今までピアニスの煙草式魔法を見てきたアニスもこのような強力な物は見たことがない。無造作に放っただけでもこの威力。ピアニスが風魔法で天高く煙草を打ち上げていなければ、自分たちはおろか周囲の森ですら灰燼と帰していただろう。
「ぴ、ピアニス……」
アニスはそっとピアニスに声をかける。ピアニスはゆっくりと振り返ると、美しい笑みを浮かべこう言った。
「これほど美味しい煙草を吸ったのは初めてですわ。でもこれだけじゃ足りませんわね……殿下、悪魔討伐が終わったらこの煙草を量産するための煙草畑が欲しいのですけど、考えてもらえます?」
「……ふっ…分かったよ。」
ピアニスの言葉にアニスも微笑んだ。