庭などまた造り直せば良いのですわ
「洞窟の外へ!早く!!」
イクォスに言われるがまま、ピアニスはイクォスと共に洞窟の外へとかけだした。幸いにもブラック・デビルの動きは酷く緩慢でピアニス達に追いつきそうにはなかった。
「洞窟を出たら、すぐにこの洞窟の入り口を塞げ!」
「よろしいのですか?」
「ああ!マスターを失うことよりもブラック・デビルをなんとかする方が大事だ!やってくれ!」
イクォスにそう言われ、ピアニスは洞窟を出た瞬間煙草に火を付け一吸いすると
「“ポイ捨て”!」
すぐに煙草式魔法四式を発動させ、洞窟の入り口を爆破し洞窟を塞いだ。
ピアニスの行動に外で待機していたウェアウルフ達は一気に警戒を高める。
「これでしばらくは大丈夫なはずだが1日と持たないだろう。相手が完全ではない今のうちにこの場所から退避しないと。」
「完全でないのであれば今のうちに止めを刺した方が良いのでは?」
イクォスの言葉にピアニスが当然の疑問を投げかける。だが、イクォスは首を横に振った。
「無理だ。悪魔というのは完全に復活するまでの間、とてつもない回復魔法が自動的に発動するようになっている。つまりは不死身なんだ。完全に復活するとその回復魔法はなくなるため、完全に滅するならば相手が完全に復活するまで待たなければならない。」
イクォスの言葉にピアニスはシガレットホルダーを三本咥え、それぞれに缶ピースをセットする。
「全員今すぐ撤収の準備を!脚は私が用意します!煙草式魔法五式“紫煙”!」
ピアニスは巨大な“紫煙”を創り出すと、全員に乗り込むよう伝えた。イクォスは洞窟の入り口があった場所を眺め、名残惜しそうにしていたが、頭を振り、“紫煙”へと乗り込んだ。
そして数分後、ピアニス達を乗せた“紫煙”は空高く舞い上がり、王城へ向け飛翔した。
・・・・・
・・・
王城にて王太子であるアニスは庭園にて本を読んでいた。久々ののどかな時間である。アニスは紅茶を一口のみ一息ついた。ここ最近ピアニスが国を滅ぼしたり、父である皇帝の側妃が国の内部崩壊を企んでいたりと、忙しさが半端ではなかったため、アニスにはかなり疲れがたまっていた。その為このようにのんびりと過ごすのは久しぶりだ。
そんなアニスの束の間の休息も終わりを迎えようとしていた。
庭の美しさを感じながら紅茶を楽しむアニスの元へ大勢の兵士達がやってきたのだ。
「総員警戒体制!!未確認飛行物体がこちらへ向かっている!」
「殿下!こちらへ!」
兵士達はアニスを城の中へと誘導する。
「一体何があった?!」
「謎の飛行物体がこちらに向かって飛翔しているとのことです!報告者の話によると黄ばんだ雲に20名ほどの人影を確認したとか。」
「……まさか」
兵士の言葉にアニスの脳裏にある人物が思い浮かんだ。次の瞬間
ドガァァァァン!!!
「な、なんだこれは……」
「て、庭園が…」
城中に轟音が鳴り響いた。あの美しい庭園には黄ばんだ雲が鎮座しており、濛濛と上がる土煙から一つの人影が城の中へと入っていく。
「……ああ、休暇は終わりか」
「で、殿下?早く避難を……」
「大丈夫だ。あれを見てみろ。」
異常事態にもかかわらず落ち着き払い、ため息はついているアニスに誘導していた兵士は首をかしげる。そして、こちらに向かって駆けてくるアニスの目線の先にいた人物を見て兵士はぎょっとした。
「殿下、至急お耳に入れたいことがございます。陛下への取り次ぎを。」
その人物はもちろんアニスの悩みの種であるピアニス・セブンスであった。
どうも、寝不足です。
なんと今日自分でも忘れていたのですが誕生日だったようで、無事無職のまま23歳を迎えました。