やはり紙煙草こそ至高ですわ
「一つ気になったのですが、貴方はどうして500年も経過した現在、ベイパーやクリーニアに与するような真似を?」
そんなピアニスの質問に対してイクォスはこう答えた。
「5年ほど前からだ。マスターに取り込まれたはずの悪魔の鼓動が再び動き出した。おそらく封印が解けかけている。俺はこの際悪魔を完全に滅するため、わざと悪魔を復活させるための方法を、あの二国に流し、そして協力していた。だが、もう必要なくなったがな。」
そう言いながらイクォスはある物をピアニスの目の前に放り投げた。
「これは……?!」
ピアニスが手にしていたのはクリーニア元国王が身につけていた重厚なマスクであった。あの病的なまでに潔癖な王がこれを手放すと言うことは……
「奴は半ば暴走しかけていた悪魔に喰われた。まあ、そのおかげで暴走は収まり、今のところは大人しくしている。だが、奴の復活は目前まで来ている。このままでは再びこの世界は奴の創り出す煙草によって支配されてしまうだろう。」
「……お話は分かりました。ですが、彼の悪魔に対抗するための手段はおありで?」
「ある。それも目の前に。」
ピアニスをまっすぐ見つめるイクォス。ピアニスは首をかしげる。
「奴は煙草の悪魔。奴を倒すためには君の力が必要だ。君の煙草式魔法なら、奴を今度こそ完全に消滅させることができるはずだ。」
「どういうことですの?」
「奴は君と同じ魔法形態である煙草を触媒とした魔法を主とする。君も知っているとおり煙草式魔法に対抗できるのは煙草式魔法だけだ。」
「貴方も使えるのでは?」
ピアニスは当然の疑問を口にする。かつてイクォスと闘った際、彼はピアニスの煙草式魔法に似た加熱式煙草魔法という物を使っていた。
「残念だが、加熱式煙草魔法は煙草式魔法には敵わない。煙草式魔法の擬似劣化版と言ったところか。」
元々ニッコ・レートの創り出した加熱式煙草は健康に害を極力少なくした煙草であるため、健康の害の大きい紙巻き煙草の創り出す魔法には敵わない。だからイクォスは通常の戦闘では一般的に使われている5属性の魔法しか使わない。
「お話は分かりました。悪魔討伐に力を貸しましょう。」
ピアニスはイクォスの話を聞き、古の黒い悪魔を討伐することを決意した。その瞬間だった。
『く……ククク…我をタオスだと?嗤わせる……』
「?!」
洞窟の奥から不気味な声が響いた。そこにあるのはただ一つ。悪魔を押さえ込み、黒い靄に包まれ眠りについているニッコ・レートのみ。だが、彼にある変化が起きていた。
ニッコ・レートを覆っていた黒い靄は徐々に濃くなり、そして蠢き始め、形を成し始めた。
「あれは……」
「ああ。アレこそが500年前にマスターが命をかけて封印したはずの悪魔。“ブラック・デビル”だ。」
古の黒い悪魔“ブラック・デビル”は黒い翼を広げた。