驚きの連続ですわ
マスターは慌てて悪魔の流通させた煙草を回収するなどの策を打ち出し、そして煙草を吸ってしまった者達の治療を行なったが時すでに遅かった。
悪魔の煙草はとても甘く、当時甘味を味わうこが少なかった庶民にとっては安価で味わえる甘味として老若男女問わず電光石火の勢いで広まり、いくら大賢者と呼ばれたマスターでも食い止めることはできなかった。
マスターはそれでも抗い続けたが、このままでは埒があかないと、無謀にもその悪魔に対して戦いを挑んだ。
マスターと悪魔の戦いは5年にも及んだ。
悪魔は煙草によって従わせた10万の民衆をマスターにけしかけ、劣勢になれば民衆を切り捨て自身は逃げるという戦法を繰り返し、その逃亡していた最中にも民衆を従わせ、一向に決着は付きそうもなかった。
だがあるとき、マスターはいくら大賢者でも数に利には勝てないとして、俺らを創り出した。そこから攻勢は逆転し、ついには悪魔をこの森に追い詰め、最後の戦いが繰り広げられた。
結果としてマスターは悪魔を完全に滅ぼすことはできず、自分の体に悪魔を取り込むことで悪魔の力を押さえ自らを封印した。
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「……これが500年前に起きた真実です。当時の皇帝は再びこのようなことがあってはならない。そして今までの借りを返すからと、この事件を改ざん、そして悪魔の復活をもくろむ輩が来ないようにと土壁を造り、内部に強力な魔物を放ちました。」
イクォスの話が終わった。だが、歴史の裏に隠されていた事実にピアニスは全てを受け止めきれずにいた。何せイクォスの話が本当であれば彼の大賢者は愚者として世間か烙印を押される事になっていただろう。だが時の皇帝は今までの借りを返すためとこの事実を葬り去った。
とんでもない事実を聞かされ混乱していたピアニスだったが、イクォスのある言葉が引っかかり、尋ねた。
「ねえ貴方。あなたマスターに創り出されたって言ったけど、貴方の正体は何なの?」
その質問に対してイクォスはこう答えた。
「俺はマスターに創られし自律式加熱式煙草IQOSⅧ。古の黒い悪魔と悪魔に魅入られた民衆達と闘うために創り出された魔道具だ。」
「?!」
ピアニスはさらに驚愕した。意思を持つ魔道具というのは今の時代に創り出せる者は居らず、後にも先にもそのような魔道具を創り出したのはニッコ・レート1人のみとされている。
いろいろ言いたいことはあるが、ピアニスはひとまずそれを飲み込んだ。
「500年前、創り出された俺の同型機は100体。だが俺以外は戦いにより悉く破壊された。俺も一時は稼働に難が出るレベルだったが、マスターが自分と悪魔の行く末を監視させるため、俺を修理した後、マスターは眠りについた。」
そういうイクォスの目は酷く寂しげなものだった。