テディベアが欲しいですわ
どうも、昨日Wordが吹っ飛び、書きためていた5話が消滅した男。
しばらく投稿時間乱れます。
ピアニス達が扉をくぐったその先には人類未到の地と言っても差し支えないほどの密林が広がっていた。
所狭しと生えている巨木は数百年、数千年の樹齢を感じさせ、その巨木により太陽に光はほとんど地面に届かず、真昼間だというのに森の中はかなり薄暗い。
その上
「……あら?この植物見たことありませんわね。新種でしょうか?」
足下には、どの植物図鑑にも載っていない新種の植物が生えており、植物学者が足を踏み入れようならば狂喜乱舞するような環境となっている。
「あら、良い香りですわね。新種のハーブかしら?少々摘んでいきましょう。」
呑気に植物を採取するピアニストは対照的にウェアウルフ達はかなりの警戒をしていた。なぜならば、うっそうと茂る木々によって先程までとは比べものにならないほど視界が悪く、その上自分たちでは到底叶いそうもない何者かの気配が幾つもあるのだ。少しでも警戒を緩めた瞬間待ち受けるのは死のみ。その為ウェアウルフ達は一瞬の気も許さず警戒をしていた。
そんなウェアウルフ達の様子に気がついたのか、ピアニスはウェアウルフ達の方を見ながら微笑んでこう言った。
「そんなに心配しなくても大丈夫ですわよ。大体の魔物は私がなんとかしますわ。そうですわね……例えば」
ピアニスはゆっくりと、ウェアウルフ達の後ろを指さした。
「そのような魔物とか。」
ウェアウルフ達が慌てて振り向くと、金色の体毛を持つ、10m近い体長を持つ巨大な熊の魔物がいた。
この魔物の名はキング・グリズリー。通常の熊の魔物であるグリズリーが往年の時を生きることによって進化した魔物で、この魔物の素材は小国の国家予算レベルで取引されている。その理由はこの魔物が稀少である事もあるが、一番の大きな理由はキング・グリズリーが強いからである。
並の剣では傷つけることすら叶わず、また魔法による攻撃も効果が薄い。ほとんどの人間は出会ったらまず逃げるしかない。それほどの魔物である。
そんな強大な魔物に出会ってしまったウェアウルフ達は一瞬でキング・グリズリーの気迫に飲まれ硬直してしまった。勝てるわけがない。自分たちはここで死ぬんだ。そんな考えがウェアウルフの脳を支配する。
だが
「大丈夫です。貴方方は私の後へ。」
ピアニスの声でウェアウルフ達の硬直は解けた。そしてピアニスはウェアウルフ達の前に出ると煙草を咥え火を付けた。
「丁度よかったですわ。私可愛いテディベアが欲しかったところですの。」
「ガァルァアアアア!!!」
ピアニスとキング・グリズリーが激突した。
・・・・・
・・・
森の最奥にある洞窟。そこで、黒いローブを着た青年、イクォスが目の前にある黒いナニカに向かって話しかけていた。
「マスター、もう少しの辛抱です。頑張ってください。」
黒いナニカは答えない。
すると突然洞窟の外から轟音が聞こえた。どうやら何者かが魔物と闘っているらしい。イクォスは立ち上がると黒いナニカに向かってこう言った。
「どうやら客人が来たようです。迎えに行って参ります。」
そう言ってイクォスは近くに置いていた2つの加熱式煙草をポケットに入れると洞窟の外へと出て行った。