とりあえず森ですわ
「“根性焼き”!!」
「グゥガアアァァァ……」
ピアニスの“根性焼き”によって巨大なイノシシの魔物が黒焦げになり絶命した。
「では血抜きと解体をお願いします。今夜はもう遅いですしここら辺で野宿に致しましょう。野営の準備を。」
ピアニスの指示の元ウェアウルフ達が動き出す。ピアニスは近くにあった倒木に腰を下ろすと煙草に火を付けた。
「フゥーー……まだまだ先は長そうですわね。」
ピアニスは現在魔物の闊歩する東の森へと来ていた。目的はもちろんニッコ・レートに関する物を発見するためである。
この森へ入る際には皇帝からの許可がいるのだが、
現在この森に入って2日目。普通の公爵令嬢であればこのような生活など耐えられるものではないが、ピアニスは至って平常運転であった。
「あら?もう終わったの?仕事が早いのですね。」
1体のウェアウルフがピアニスの元へとやってきて指示されたことが終わった旨を伝えに来た。みると、野営用のテントはすでに張られており、先程倒した猪の魔物も解体され、現在数体のウェアウルフ達がその肉を使い夕食の準備を始めていた。
「では夕食ができたらまた教えてくださる?それまでテントで休んでいますわ。」
そう言いながらピアニスはテントへと入っていった。
・・・・・
・・・
翌日、ピアニス一行は森の最奥部を目指して再び移動を開始した。そして、一時間ほど歩くと超巨大な土壁が姿を現した。土壁には強固な鍵のかかった扉が一つだけあり、その扉以外からは森の中心部へと行けないようになっている。ピアニスは別段と驚くこともなく胸元から金色に輝く鍵を取り出した。
この東の森は駆け出しの騎士や王国軍が訓練として野営することも多く、以前ピアニスに決闘を挑み、負けた暴風騎士の息子であるシュトゥルム・ヴィンドもここで修行をしていた。
しかし、それらを行なうのは魔物の数がまだ少ない森の入り口周辺。この森は中心に行けば行くほど魔物の凶暴さ、そして戦闘力も上がるため危険であることから皇帝の許可が無ければ立ち入ることができないようにと、数代前の皇帝が幾人もの優秀な土魔法使いによって森の中心を囲む巨大な土壁が造られたのだ。
今回ピアニスはアニスに協力してもらい許可をもらうことができているため、森の中心部へと行けるのである。
ピアニスが扉に鍵を差し込むとガコッという音がして扉が開いた。そしてピアニスの差し込んだ鍵は光の粒子となって消えた。どうやら鍵の流出を防ぐため何かしらの魔法がかけられていたようだ。
扉の先には今までよりも薄暗い森が広がっており、ピアニス達を覗う危険な気配が幾つもある。
「さぁ、行きますわよ。皆さん覚悟はよろしくて?」
煙草を咥えながら言うピアニスにウェアウルフ達は無言で頷いた。
おまけ ウェアウルフ達の会話(特別翻訳)
「なあ、お嬢様の倒したあの猪ってグレート・ボアじゃないか?俺達が群れで狩りをして何とか狩れるレベルだったと記憶しているんだが。」
「ああ、それをお嬢様、出会って一分で倒しちまいやがった」
「……あの時お嬢様に忠誠を誓って良かったな」
「ああ……」