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別にたいしたことはしていませんわ

ピアニスの質問にザンゲルツが一瞬ためらうような仕草を見せる。そこでピアニスは7本目のピアニッシモに火を付けた。すると、ザンゲルツはイクォスについて語り出した。


「我々が奴と出会ったのは3年前。奴は突然玉座の間へと降り立った。城の各所にいた警備兵の全ての警戒網を潜り抜けて。そして奴は我々に対してこう言った。“世界を取る気は無いか?”と」


3年前といえば、マーラスが側妃して迎えいれられた頃だ。そして、クリーニア国王の病的なまでの潔癖症の噂が広まった頃でもある。


と、アニスはザンゲルツの証言を、その当時に起きた出来事を思い出しながら聞いていた。


「そこからだ。我が王の煙草嫌いが加速しだしたのは。最終的には此の世全ての煙草を滅ぼすために本気でこの世界の頂点を目指し始めた。まず手始めに大国である貴国にマーラスを送り込み情報収集をさせ、隣国で会ったベイパーと秘密裏に盟約を交した。そして今回、この国で大きな影響を持つ貴様を人質とすることにより。帝国の力をさらに削ごうとして……失敗した。」


「ではイクォスのことはほとんど何も知らないと?」


「ああ。だが我々は奴のことを信頼できる者と思っていた。理由は分からないがな」


知っていることを話し終えたのか一息つくザンゲルツ。ピアニスはザンゲルツの回答に対して少々思案し、少しだけザンゲルツの目を見る。だがすぐに頭を切り換え次に質問に移った。


「では、彼の大賢者ニッコ・レートが終の棲家に選んだ森と、古の黒い悪魔について知っていることがあれば教えていただけますか?」


「彼の大賢者の住む森の詳しい場所は知らない。だが、我々のみが発見した古文書にはこう書いてあった。“大賢者を守るため、森の中では恐ろしい魔獣達が住み着いている”と。分かっているのはそれだけだ。」


「では古の黒い悪魔については?」


「ほとんど何も知らん。我々はその悪魔を復活させるためにイクォスと協力していたのだが、その正体について教えられることはなく、復活させるための方法のみ聞いていた。」


「その方法とは?」


「まず手始めに大量の煙草を燃やすことだ。だから戦争と見せかけて貴国の煙草畑を燃やそうとしたのだ。」


・・・・・


・・・


ザンゲルツとの面談が終わり、ピアニスはアニスの執務室へと戻ってきていた。ピアニスが紅茶と煙草を楽しんでいると、アニスが切り出した。


「それで、今度は一体どんな魔法を使ったのかな?」


「あら?一体何のことでしょう?」


「誤魔化さなくても良いよ。どうせ気が付いてたのは僕だけだろうし。」


アニスはにこやかに言う。ピアニスはため息をつくと、アニスに対してこう言った。


「私が用いたのはある種の魅了魔法ですわ。」


「魅了魔法……」


そう、ピアニスは先日フーレンから献上されたピアニッシモを使うことで煙草式魔法六式“魅了煙”を発動。これにより頑なに口を割らないザンゲルツから証言を取ることができたのだ。


「なるほどね。それで、今回の証言で何か分かったことはあったかい?僕としてはなぜクリーニアが煙草畑を燃やそうとしたのかは分かったくらいだけど。」


「ええ。私も行くべき所が分かりましたわ。しばらくの間、魔物の闊歩する魔境、東の森へ行って参ります。」


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