面談の時間ですわ
明くる日、ピアニスは王城へと来ていた。
「やあ、待っていたよピアニス。」
「殿下、面談の申し込みを受理していたき、感謝致します。こちら御礼の品です。」
執務室にてピアニスを出迎えるアニス。ピアニスは御礼を言いながらアニスに手土産を渡す。
「ああ、ありがとう。じゃあ早速だけど行こうか。向こうには話を付けてある。」
そう言うとアニスは立ち上がり、ピアニスの手を取った。
・・・・・
・・・
アニスに手を引かれ、ピアニスがやってきたのは王城の地下にある牢屋であった。地下牢の入り口にいる兵士はアニスに声をかけられると敬礼しながらこう言った。
「お待ちしておりました。準備はできております。ただ、何も喋ることは無いと言っており、仕方なく強制的に面会室へは押し込みはしましたが、情報を話してくれるかどうかは……」
「大丈夫だ。後はこちらでなんとかする。ご苦労だった。」
「ありがたきお言葉!ではご案内いたします。」
兵士に案内され、ピアニスとアニスは面会室へとやってきた。面会室はとても簡素な造りとなっており、面会者の囚人が直接会うことは無いように囚人の席と面会者の席の間には会話ができるように最小限の穴が少しばかり空いたガラスが張られている。
そしてガラス向こうには
「お久しぶりですわね、ザンゲルツ元宰相。」
マーラスの父であり亡国クリーニアの宰相だった男、ザンゲルツ・ゲバルがいた。
「貴様か、我を呼び出したのは。」
「ええ。少々貴方に聞きたいことがございまして。」
「貴様に話すことなど一つも無いわ。」
あくまでもにこやかに話をするピアニスに対してガラスの向こう側でそっぽを向くザンゲルツ。ピアニスはため息一つ付くと灰皿を取り出した。
「仕方ありませんわね。では、貴方が話したくなるまで待たせていただきます。」
そう言っておもむろに煙草を吸い出した。部屋の中に果実のような甘い香りが広がる。
この煙草は先日発売されたピアニッシモの新作で、フーレンが女性にも吸いやすいようにと、フルーツフレーバーで売りだした物だ。
見張りの兵士は驚いた顔をしているが、ピアニスは気にもせず煙草を吸い続けるその様子をアニスは苦笑しながら見ていた。。
そして、ピアニスが6本目のピアニッシモを吸い終わったところで
「……何が聞きたい?」
なんとザンゲルツの方からピアニスに向かって聞いてきたのだ。ピアニスは笑みを浮かべると、ザンゲルツに向かってこう聞いた。
「まず始めにイクォスとは一体何者なのでしょうか?」