決して!八つ当りでは!ありませんわ!!!!
「ねえ、貴方あの話知ってる?」
「え?」
「ピアニス様よ!売国奴マーラスにクリーニアに送られて監禁されたのに、脱出するどころかクリーニアを滅ぼしちゃったって話!」
「しってる!!ピアニス様単騎で国の重臣全員を捕らえて国を滅ぼしちゃったんでしょ?すごいよね!」
「本当に完全無欠よねピアニス様」
「それに優しいし!この前なんか私が落としちゃったハンカチを……」
ピアニスが1週間ぶりに学園へと戻ってくると、学園内ではピアニスの噂がそこかしこで飛び回っていた。どれもこれも事実であるためピアニスも否定する気はさらさら無いのだが
「あの、そこの方落としましたわよ?」
「ひぃ!!」
この噂が広まったためか、一部の生徒(大体下級生)から必要以上に恐れられるようになってしまった。これはピアニスとしてもかなり居心地が悪い。
今も目の前の下級生の女子がハンカチを落としたので拾って届けようとしたのだが、ピアニスに恐れをなして悲鳴を上げ、逃げられてしまった。
どうしたものか、と思案するピアニスの横で
「……ククッ………」
必死に笑いをこらえるアニス。
それを見たピアニスの額に青筋が走る。ピアニスは煙草を取り出すと
「フゥーー……殿下」
「は、はい?!」
絶対零度のピアニスの声に思わず敬語になるアニス。ピアニスはそんなアニスを意にも介さず、壁際に追い詰め、壁に手をつくと凍り付きそうな冷たい声でこう続けた。
「いますぐ“根性焼き”でお仕置きされるかあの子を探してくるかを選びなさい。」
「さ、探して参ります!!」
アニスはもの凄い勢いで女子生徒が逃げた方向へ走っていった。
すると
「おい!ピアニス・セブンス!殿下を使いぱしりにするとは何事だ!!」
「そうだ!自分でまいた種だろう!」
「大体貴様はいつも……」
「殿下、こんな奴の言うことなんて聞かなくて大丈夫です!」
と、いつもアニスに付き従っている5人の騎士の息子達がピアニスに文句を言いにやってきた。
「ちょ、ちょっと皆落ち着いて……」
アニスが静止しようとするが、アニスに忠誠を誓って着る5人は止まらない。
「貴様殿下をこき使うなど、仮にも公爵家の令嬢がそんなことをするなど言語道断だ!!」
「叛逆罪として捌かれたいのか?!」
ピアニスを糾弾する5人の若き未来の騎士達。
そんな彼等に対し、ピアニスは煙一つ吐くとこう言った。
「そも、このような自体になったのは誰の所為か、貴方方はご存じで?」
ピアニスの言葉にビクッと身体を震わせるアニス。他の5人もピアニスのあまりの迫力に声を出せずにいる。
確かに原因は自分にもあるとは思うが、半分は八つ当たりでは無いか?
と言う疑問をアニスは心の内にしまう。ここでなにかを言おうものなら決して無事では済まないだろう。そんなことを考えていると
「では決闘でどちらが正しいかはっきりさせようじゃ無いか!」
「よろしいですわ!」
いつの間にか5人の騎士達がピアニスとの決闘を決めており、アニスは顔を真っ青にさせ固まった。
後日、ボロボロになった5人の未来の騎士と、未来の皇帝がピアニスに付き従う姿を学園中で目撃され、ピアニスの噂はさらに尾ひれを付け、広まっていった。
ちなみにハンカチを落とした女子生徒の元には責任を持ってアニスがハンカチを届けた。
大晦日はやっぱり星が輝いてなんぼだとおもうので、星をください。
皆様良いお年をお迎えください