もうわけがわかりませんわ
「そ、そんな馬鹿なことが……」
「いや、ピアニス。君から聞いた特徴に当てはまるのは今のところニッコ・レートのみなんだ。当時、黒髪で黒いローブ姿というのはニッコ・レートの代名詞みたいなものだったらしい。」
そう言いつつアニスは一冊の本を取り出した。本のタイトルには“ニッコ・レート伝記”と書かれている。アニスは伝記をパラパラとめくり、とあるページを開いた。
「このページを見てくれ。彼は大の煙草嫌いで、全ての煙草を絶滅させる“古の黒い悪魔”というものを召喚しようとしたとまで書かれている。」
「……と言うことはイクォスがニッコ・レート本人だった場合、クリーニアに協力するのは納得できますわ。ですが腑に落ちない点が一つ。」
そう、イクォスは加熱式煙草魔法という煙草魔法とよく似た体系の魔法を使って見せたのだ。煙草嫌いであるはずならあのような魔法は決してつかわないはずである。
「加熱式煙草……僕も調べてみたよ。そしたら……」
アニスはまた別な本を取り出した。タイトルには“魔法道具大全”と書かれている。アニスは不戦の付いているページを開いた。
「あった。加熱式煙草。古代文明時代に流行った煙草で、身体に取り入れるタール量が少ない分通常の煙草より身体に優しいらしい。“IQOS”そして“GLO”の二つのタイプがあったらしい。それで発明者はニッコ・レート。」
「……ますますイクォスがニッコ・レート本人である可能性が高まってきましたわね。でもなぜニッコ・レートは煙草が嫌いなのにもかかわらずそのような煙草を?」
「ああ、何でも彼は健康至上主義者だったらしくて、健康に害をなす煙草は本当に嫌いだったらしい。だから健康に害の無い加熱式煙草を造りだしたんだそうだ。」
「そうだったんですか。しかし解せませんわ。なぜ500年も経った今、彼は活動を始めたのでしょう?」
「それは……わからない。だが複数の国を巻き込んでいると言うことは何かしらの目的があるはずだ。彼等の野望を止めるために協力してくれるかい?ピアニス。」
アニスはピアニスに手を差し伸べる。それを見てピアニスは微笑むと
「分かりましたわ。全ては此の世の煙草のために」
「そこは帝国のためにとか言って欲しかったんだけどなぁ」
ピアニスはアニスの手を取った。
・・・・・
・・・
「もうすぐだ……もう少しの辛抱だ主。」
黒いローブの男の前には黒く蠢くナニカがあった。そのナニカに向かって話しかける黒いローブの男イクォス。その右手には恐怖の余り声も出ないクリーニア国王が。
「やっと見つけた。主を救い出せる魔法の使い手を。だから今はこれで我慢してくれ。」
イクォスはクリーニア国王を黒く蠢くソレに向かって投げる。すると瞬時にソレはまるで蛇が獲物を丸呑みにするかのようにクリーニア国王を飲み込んでいく。
「お、おい貴様なにを……うわあああああああ!!!!」
クリーニア国王は断末魔の悲鳴を上げるとそのままソレに飲み込まれた。
星を集めよという天啓があったので星をください。