反撃の煙草の煙を上げますわ
ピアニスはこうなることを予見していた。
クリーニア国王が自分を幽閉することも。連れて行く侍女達も監禁されることも。手荷物もすべて押収されることも。そして、自分が帝国内で監視されていたことも全てピアニスは知っていた。
だからこそピアニスはそれらを全て見越した上で準備していたのだ。大量に買い込んだ紅茶も便箋も全てダミー。監視者に煙草を密造しているのではないかという偽の情報を掴ませるためである。
「さて、証拠品は集まったようですし、そろそろ本丸を堕としましょうか。貴方たちは隠れていてください。」
「お、お嬢様、しかし今は煙草が……」
「大丈夫ですわ。私ほどのヤニカスになりますと……」
ピアニスは窓を開け、夜空に向かって手を伸ばす。すると、無数の小さな何かがピアニスに向かって飛来してきた。それらはピアニスめがけてまっすぐと飛んでくるが、ピアニスはひょいと避けると、無数のそれらは部屋中に散らばった。
突如部屋に飛来してきた物を見て2人の侍女は驚愕する。
「お、お嬢様、これは……」
そして、最後に飛んできたものキャッチするピアニス。
「私ほどにもなりますと、煙草の方から私に向かって来てくれるのですわ。」
そういうピアニスの手にはSeven-Starと書かれた箱が握られていた。
これは煙草式魔法零式“「」”
名も無きこの煙草式魔法はピアニスが発動するものではない。ピアニスの体内からニコチンが無くなり、24時間以上経過するとピアニスの所持する煙草の方で自動的に発動し、ニコチンが無くなった主人の下へ煙草達が自ら向かう摩訶不思議な煙草式魔法である。
故に、ピアニスの意思で発動できないこの煙草式魔法には名前が無く、ピアニス自身もなぜこのような魔法が発動するのか解明に至っていない。
「フーー……さて」
早速煙草を吸うピアニス。するとその瞬間、耳を劈くような警報が鳴り響き、瞬時に塔周りが騒がしくなってくる。どうやら、ピアニスが煙草を吸っているのがバレたらしい。流石は清潔な国クリーニア。何らかの魔法で煙草の煙を感知すると警報が鳴る仕組みをこの部屋に組み込んでいたらしい。
部屋の外では兵士達の足音が聞こえてくる。
ピアニスは目にも止まらぬ動きで煙草をポケットの中に入れる。そして、吸い終わったセブンスターを床に捨てると、新たに金ピースを口に咥え火を付けた。メリメリという音を立ててピアニスに咥えられた金ピースは一気に燃え、フィルターを残し、先程咥えた金ピースは灰となってしまう。その瞬間
バァンッ!!
勢いよく扉が開け放たれ、何十人もの武装した兵士が部屋へとなだれ込んできた。
「セブンス・ピアニス!!違法薬物密輸の疑いで……」
「フーーーッッッ!!!!!」
即座にピアニスは煙草式魔法三式副流煙を発動した。副流煙は兵士達を包み込み、ピアニスの部屋になだれ込んできた兵士達は全員呼吸困難に陥り、戦闘不能となった。。
「さあ、反撃開始と行きますわ!!」