手先が器用な侍女は役に立ちますわ
どうも、モンハン中毒者です
「……退屈ですわね。」
ピアニスはそう言いながら紅茶を飲む。
「相変わらず不味い紅茶ですわね。クリーニアの方は味覚がお馬鹿ちゃんなのでしょうか?」
クリーニア産の紅茶は清潔さを重視しているせいか、農薬がふんだんに使われているらしく、紅茶本来の旨みをかなり殺した味わいとなっており、ピアニスもできるだけ飲みたくはないのだが。
「紅茶も全て没収されてしまいましたしね。」
そう、ピアニスの持ち込んだ物は全て没収されてしまったのだ。
昨日、クリーニアへと到着したピアニスに待ち受けていたのはクリーニア高官からの検閲という名の没収であった。
ピアニスが持ち込んだ衣服、及び大量に買い込んだ紅茶、便箋などは全て没収され、ピアニスの連れてきた侍女達もどこかへと連れて行かれてしまい、ピアニスは言葉通り身一つでクリーニア国王に謁見した。クリーニア国王はピアニスをゴミでも見るような目で見ると、王城から少し離れた塔にいるようにと言い、ピアニスは塔へと閉じ込められた。
塔の中には侍女という名の監視役しか居らず、紅茶卯や食事くらいは持ってきてくれるが、食事とは形容しがたい残飯のような物しか与えらず、ここまであからさまに嫌がらせをされるとピアニスも流石に嗤うしかなかった。
ピアニスはこの部屋唯一の窓からクリーニアの城下町を見る。
「……やはり、良い国とは言えませんわね。」
街行く人々の顔に生気は無く、ただ兵士達の言いなりとなり働いている様な。まるで魔術師がゴーレムを動かしているようにしかピアニスには見えなかった。
ピアニスはそっと窓を閉める。
「さて、あの子達はどうなったかしら。今日の夜に期待ですわね。」
・・・・・
・・・
その日の夜。就寝していたピアニスは僅かに塔の窓をノックする音を察知し、静かに目を開けた。そして、窓を開けるとそこには
「ピアニス様、開けてください。」
昨日、どこかへと連れ去られてしまったピアニスの侍女がそこにいた。ピアニスは急いで窓を開けると、侍女2人を部屋へと招き入れた。
「良く抜け出せましたわね。監視はいなかったのですか?」
「ええ。私たちは城の地下牢へと閉じ込められましたが、監視はいませんでした。その代わり、食事も水もありませんでしたが。」
「まあ、そのおかげで抜け出すのは容易だった。」
ピアニスは満足そうに頷くと、2人の侍女にこう聞いた。
「それで、首尾の方は?」
「ばっちりです。ベイパーと秘密裏に交わされた文書、並びにマーラス妃との手紙。等々、帝国を陥れようとしていた証拠は十分なほどそろいました。」
「警備がザル過ぎて罠かと思った。でもベイパーの王印がされているし、たぶん本物。」
彼女たちはただの侍女ではない。手先の器用さを買われ、ピアニスに雇われたピアニス専属の隠密集団である。