我が煙草道を塞ぐ者は誰一人としていませんわ
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「貴国の領外での戦闘だったのにもかかわらず、我が国の兵士を捕らえるという蛮行。いくら帝国と言えども看過できるものではない!」
「こちらも同意見だ。これは我が国とクリーニアの問題。横槍を入れるのは止めていただこうか。」
会談が始まるや否や、皇帝代理としてきたアニスにクリーニア。及びベイパーの外交官からの厳しい言葉が飛ぶ。
「ではなぜ、戦地の付近にあった我が国の畑に爆弾が仕掛けられていたのか。それと、なぜ両軍の武器が演習用の模造刀だったのか、その理由を納得のいく形で説明してもらえますか?」
アニスはそんな両国の外交官に対して優しげに言う。しかし、そんな優しげな態度に外交官達は調子に乗ったのか
「そんなことは関係ない!!早急に我が国の兵を解放せよ!!」
「そうだ!今回は帰国の要請に応じてここにいるが、我が国とクリーニアは未だ戦争状態にある!一刻も早く兵士を帰してもらおう!!!」
などと、喚き始めた。そこへ
「この度は申訳ありませんでしたわぁ。第三側妃であるこの私が皇帝陛下に直談判し、両国の兵士達を解放することを約束いたしますわぁ。」
アニスに付いてきていたマーラスが急に名乗り出たかと思うと、とんでもないことを言い始め、アニスはもちろん、側にいた兵士、そして退屈そうにアニスの横に座っていたピアニスでさえ愕然としていた。
「おお、流石はマーラス様。では、そのようにお願いいたします。」
「ええ。私にお任せくださぁい」
クリーニアの外交官は先程までの態度とは打って変わって和やかにマーラスのみと話し始める。
「ま、マーラス妃!いくら何でもそれは……」
「大丈夫よぉ。責任は私が取りますわぁ。では両国ともこちらの書類に……」
軽々しく言うマーラスに苦言を呈すアニスだったが、マーラスは何処吹く風。事前に作成していたのか、誓約書を取り出した。内容としては無償で兵士達を返還するという物だった。
「こんなの認められません!!いくら貴方が第三側妃だからと行って……」
そう言いかけるアニスだったが、急に後の兵士から肩を掴まれた。
「王太子はご乱心よ。落ち着けるために別室へ連れて行きなさい。」
「な?!貴様!!」
嵌められた時にはもうすでに時遅し。アニスは数人のマーラスに付き従う兵士に押さえつけられ、別室へと連れて行かれてしまった。
それを見送るピアニス。アニスはピアニスを見ると、口パクで何かを伝え、そのまま連れて行かれてしまった。
「さて、ここからは私が仕切らせていただきますわぁ。」
邪魔者がいなくなってすっきりしたと言いたげにマーラスは会談の再開を宣言した。
「さて、マーラス様。我が国への保証はどうするおつもりでしょうか?」
「何もないというわけには行くまい?」
下品な笑みを浮かべながら外交官達がマーラスに言う。それに対してマーラスも怪しげな笑みでこう言った。
「もちろんですわぁ。両国には今回の件に関して、賠償金として白金貨100枚をお支払しますわぁ。」
白金貨100枚と言えばセレスティン帝国の1年間の運営予算だ。そのような多額の金額を払うわけにはいかない。
ピアニスは流石にやり過ぎだと文句を言おうと立ち上がる。だが、マーラスの言葉に絶句することになる。
「それと、今回の事態を引き起こした責任を取ってもらうため、ピアニス・セブンスをクリーニアに差し上げますわ。」
ニヤニヤと嫌な顔をしながらピアニスを見るマーラス。ピアニスの思考は一時停止し、激高しかける。その瞬間、先程アニスがピアニスに口パクで伝えたことを思い出した。
『頼むぞ』
そしてピアニスは多少思考し、そして
「分かりました。私、ピアニス・セブンスはクリーニアへと向かいます。」
こうして帝国とベイパー、及びクリーニアは誓約を交わし、ピアニスは白金貨100枚とともにクリーニアへ人質として向かうこととなったのであった。
だが、マーラスもクリーニア、そしてベイパーの外交官も知らなかった。ピアニス・セブンスという人物を。
「煙草のためならば国の一つや二つ、滅ぼして見せますわ!」
彼女は煙草のためならば何でもやると言うことを。