ふふお礼が煙草とは分かっているじゃありませんの
「や、やっと……終わりましたわ……」
書類の積み重なった机に突っ伏すピアニス。
つい先程ベイパーとクリーニアの兵士達、約4000人の取り調べが完了し、取り調べの報告書の作成が終わったのだ。
「お疲れ様ピアニス。ちょっとこっち来てもらっても良いかな?」
そんなピアニスの元にアニスがやってきた。ピアニスが来たことにより多少余裕ができたからなのか、二日前よりも顔色はよく、目の下にあった大きな隈も消えている。
ピアニスはアニスに言われるがままついて行く。
そして、連れてこられた先は王城の商人用の応接室だった。貴族のための応接室とは異なり煌びやかな装飾は少ない。
何故このようなところへ連れてこられたのか皆目見当も付かないピアニスは首をかしげる。
「アニス様、一体……」
「まあちょっと待ってて。君にお客さんだ。」
そう言ってアニスは近くにいた騎士に声を掛ける。すると騎士は頷き、部屋から出る。そしてすぐに一人の中年の男を連れて戻ってきた。
そして男はピアニスを見るなり
「ピアニス様、此度の件誠にありがとうございました!!!」
ピアニスに向かって土下座したのであった。
・・・・・
・・・
「……つまり貴方はあの煙草畑の」
「ええ。未熟ながら代表をさせていただいております。」
いきなり土下座した中年男を落ち着かせ、話を聞いてみると、この男の名はフーレンという、ピアニスの守ったあの煙草畑の集落のまとめ役らしい。
今回、王城へと来たのは戦火から煙草畑を守ってもらった礼をしに来たという。一介の煙草農家である彼はベイパーとクリーニアが共謀し、煙草畑を燃やそうとしたことは知らず、ピアニスが戦火から煙草畑を守ってくれたと、アニスはフーレン含む、煙草農家の全員にそう説明していた。
「で、今回は集落を代表してピアニス様へのお礼をと思いまして……」
そう言ってフーレンは包みを取り出した。包みの中には2つの箱が。一つは無骨なロゴが掘られており、もう一つはかなりおしゃれなデザインのは異なっている。
「こちら、ピアニス様を称えまして創り上げた新作の煙草でございます。こちらの煙草の名前は“セブンスター”そして、こちらの煙草は“ピアニッシモ”と命名させていただきました。」
「これは……」
渡された二つの煙草をまじまじと見つめるピアニス。
「ピアニス様が愛煙家であることは我々の耳にも届いておりました。そんな貴方様は今回、私どもの畑を守ってくださいました。私を含む皆は感謝しても仕切れません。なので今回、貴方様の家とその名前を称えるための煙草を創り上げました。どうぞ、お納めください。」
ピアニスはそれを聞いて、にっこりと笑うと
「ありがたくいただきますわ。これからも美味しい煙草を宜しくお願いいたしますわ」
と言った。フーレンはそれを聞いて満足そうに頷くと応接室から出て行った。