具合の悪いときは煙草に限りますわ
「と、言うわけで私はこの戦争にほかの目的があると確信し、彼等を捕らえたというわけです。ああ、ご心配なく。彼等の中に死者はいませんし、怪我は私が治しましたわ。」
さらりと事も無げに言うピアニスだったが、そうは問屋は下ろさないと言わんばかりにアニスとエドヴァンは声を上げる。
「いやちょっと待ってくれピアニス!僕は煙草畑の民を助けて欲しいと君にお願いした覚えはあるけど、ベイパーとクリーニアの兵士を捕まえてこいと一切言った覚えはないんだけど?!」
「ピアニス嬢!確かに我が国の煙草畑を守ってくれたのはありがたいが、国境線上ギリギリでの戦いで彼等を捕らえたとなると我らも困るのだ!」
そういう2人に対してピアニスは
「そこら辺の面倒臭いことをお願いしに今日は参ったのですわ。と言うことで、アニス皇太子殿下、エドヴァン皇帝陛下、ごきげんよう。」
そう言ってピアニスは、応接室の窓から飛び出すと、王城の横に付けていた“紫煙”に飛び込み、そのまま学園のある方向へと飛び去っていった。
そして、応接室に残された親子は
「……」
「……」
互いに向き合い大きなため息をついた後
「マイルドの奴を呼べ!この後始末をしてもらう!」
「早く衛兵をありったけ連れてきてくれ!彼等から詳しい事情を聞きたい!」
ピアニスの残していった、ベイパーとクリーニアの兵士達の事情聴取(面倒ごとの後始末)に追われるのであった。
・・・・・
・・・
数日後、ピアニスがいつものように学園の中庭で煙草を吸っていると
「ピーアーニースー……」
「?!“根性”……?」
ピアニスの肩に冷たい手が置かれピアニスは咄嗟にその不埒な手を焼き尽くさんと、煙草式魔法一式“根性焼き”を発動しようとするが、その手の持ち主を見て、魔法の発動を止めた。
「あら、アニス殿下。ご機嫌……良さそうではありませんわね。具合が悪いのでしたら医務室へ行くことをお勧めしますわ。」
そう、ピアニスの肩に手を掛けたのはアニスだった。だがいつもの優しい笑顔を振りまいている彼とは違い、今現在彼の両目の下には大きな隈ができており、顔色も若干青白く鳴っており、まるで亡霊のような出で立ちだ。
アニスは連日、ベイパーの衛視とクリーニアの兵士の目的を探るため、日夜仕事に追われていた。その為、彼はこの数日学園に登校するどころか、寝る時間すらほとんど無かったのである。
そのような面倒ごとを持ち込んだのは目の前にいる……
「……誰の所為だと思っているのかな?」
ピアニスの問いかけにアニスはゆっくりと答える。その口調はいつもの優しい雰囲気とは裏腹に酷く冷たいものであった。
それに対してピアニスは少し考えた後アニスに向かってこう言った。
「……なんだかよく分かりませんが…ご公務が大変なら、私がお手伝いしましょうか?」
「最初からやってくれないかな?!?!?!元はと言えば君が持ち込んだ案件なんだからさ!!!!」