お目々見開きすぎると煙草の煙が目にしみますわよ?
セレスティン帝国王城にある豪華な応接室。
そこでピアニスは最高級茶葉による紅茶を楽しみながら煙草を吸っていた。目の前には呆然と青い顔をしている王太子であるアニスがいる。
「……ごめんピアニス、もう一回言ってくれるかな?」
「あら?少し見ない間にお耳が遠くなりましたの?アニス王太子殿下。」
ピアニスがきょとんとした顔で首をかしげる。そんなピアニスを見てアニスは頭を抱える。
「そうだったね……君はこんな遠回しな言い方は通用しないんだったね…じゃあ聞くけど」
アニスはピアニスの後にいるボロボロになり拘束された兵士達を指さしながら叫んだ。
「なんでベイパーとクリーニアの兵士がいるんだい?!?!」
「我が国の煙草畑を燃やそうとしたからですわ。」
半狂乱のアニスに対してしれっと答えるピアニス。その返答にアニスはさらに頭を抱えた。
・・・・・
・・・
半狂乱の後、なんとか平静を取り戻したアニスは自分だけでは処理できないと言って
「なんとかしろと言ったはずだぞアニス!」
「私一人の手では余るから呼んだのですよ父上!!!」
父であり皇帝であるエドヴァンを連れてきた。
「エドヴァン皇帝陛下、ご壮健そうで何よりですわ。」
「う、うむ。マイルドの娘か。元気そうで何よりだ。しかし、相も変わらず美しいな。どうだ、アニスの嫁にでも……」
「ふふ。考えておきますわ。」
「父上!!!今はそれどころじゃないでしょう!!!」
関係の無い話に広がりそうな所をアニスは全力で阻止する。
「そ、そうだなアニス。ゴホンッ!で、ピアニス嬢。端的に聞きたいのだが一体何があった?」
「そうですわね。ではまずこれをご覧いただけますでしょうか?」
ピアニスがフィンガースナップを鳴らすと、ウェアウルフの一体が大きな麻袋を抱えてやってきた。ウェアウルフはエドヴァンの目の前まで来ると、ゆっくりと麻袋の口を開けた。
「こ、これは……!」
麻袋の中にエドヴァンは絶句する。なぜならば麻袋の中には幾つもの魔力で起動する爆弾。ピアニスが煙草畑で回収した爆弾が入っていたからだ。
「これは、我が国の煙草畑。都合38カ所に仕掛けられていた魔力起動式の爆弾ですわ。殺傷能力と言うより、火焔による炎症を目的とした物でしたわ。」
「なぜこんなものが……」
アニスは思案するが、その答えはピアニスからすぐに聞くこととなる。
「これは、ベイパーの部隊が仕掛けていった物ですわ。魔力をたどったところ、起爆の顕現はすべてベイパーの総大将らしき方に繋がっていましたわ」
「「?!」」
アニスとエドヴァンは驚きのあまり絶句する。
「そして」
ピアニスが再び口を開くと同時にまた別のウェアウルフがいくつかのベイパーとクリーニアの兵士が持っていた武器を持ってきた。
ピアニスは持ち手ではなく刃の方を躊躇いもなく持つ。
「お、おい!」
「ピアニス!!」
アニスとエドヴァンが慌てて制止の声を上げる。だが、当のピアニスはけろりとした表情で
「大丈夫ですわ。彼等の持っていた武器は全部刃を潰された、所謂模擬刀でしたわ。」
アニスとエドヴァンは再び絶句した。
その光景を見てピアニスは一言
「お目々見開きすぎると煙草の煙が目にしみますわよ?」
そう言いながら煙を吐いた。