本当に良い子達ですわね
ピアニスがベイパー国軍総大将ウィルノス・ガーレスとの一騎打ちに勝利した頃、ピアニスの使いまであるウェアウルフ達は森の中を疾走していた。目的はクリーニア国軍の足止めである。
「ガルゥ…ハルァァア!」(訳;総員戦闘配置!目標、前方クリーニア国軍)
「ゴルルゥ……」(訳;行くぞ)
「ウオォオオオオン!!」(訳;お嬢様のために!)
「「「「「「「ウオォオオオオン!!」」」」」」」(訳;お嬢様のために!!!!!)
次の瞬間、進軍するクリーニア国軍の踏みしめる大地が一斉に崩落した。
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・・・
突如として大地が崩落したことによりクリーニア国軍は阿鼻叫喚の大混乱に陥っていた。
「あ、脚が…」
「た、助けてくれ!」
ある者は乗っていた馬に押しつぶされ身動きがとれず、またある者は落下の衝撃で大怪我をし、動けないでいた。
「一体どうなっている!状況を説明しろ!」
「分かりません!魔術の痕跡が無いことから自然発生したものと……」
「馬鹿者!我が軍の周りだけが崩落しているのだ!どう考えてもこれは攻撃だ!!」
なんとか無事だったクリーニア国軍総司令のアグラム・グローは側近を怒鳴りつける。そんなところに一人の兵士が息も絶え絶えになりながらやってきた。
「ほ、報告します!」
「どうした?!」
「ウェアウルフが我々を取り囲んでいるようです!」
「なんだと!?」
その報告にアグラムは目を剥く。そして上を見上げると、そこには屈強なウェアウルフ達が穴の周りを取り囲んでいた。
「そ、総員戦闘準備を……!」
慌ててアグラムは兵士達に向かって叫ぶが、兵士達の半数は地面が崩落した際の影響により動けず、残り半数も怪我人などの救助に追われ戦闘などできる状況ではない。
そこへクリーニア国軍の軍師がやってきてアグラムに向かって言う。
「アグラム様!ここは撤退するしかないかと!この状況で戦闘を行なえば全滅します!!」
「ぐっ……」
軍師に言われ歯噛みするアグラム。その間にもウェアウルフ達は兵士達の攻撃しようと兵士達の落ちている穴の周りで様子を覗っている。
そして
「……総員、撤退の準備をせよ!」
アグラムは苦渋の決断を下した。
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・・・
今回の地面の崩落。これはピアニスの使いまであるウェアウルフ達の仕業であった。
ウェアウルフ達はピアニスト別れた後、ピアニスに指示された位置に巨大な落とし穴を地力で製作していたのだ。
一応ウェアウルフは狼に分類される魔物であるため穴を掘ると言うことはできる。その上15体のウェアウルフ全てにピアニスによる強力な身体強化の魔法を掛けてもらっているため、ものの30分で落とし穴の作成が完了していた。
後は先程のように落とし穴の真上を通ったクリーニア国軍が落とし穴に落下。戦闘不能としたのである。
今回のウェアウルフ達の目的は2つ。
一つはクリーニア国軍の兵力を奪うこと。
そしてもう一つは
「お待たせいたしました。どうやら成功したようですわね」
ピアニスが到着するまでの時間稼ぎであった。
クリーニア国軍総大将の名前が皇帝の名前と被ってしまったのでエドヴァン→アグラムと変更いたしました