おイタをしたので根性焼きですわ
「煙草式魔法三式“副流煙”!!」
「無駄だ!“バースト・ウィンド”!!」
ピアニスの副流煙を風魔法であっという間に吹き飛ばすベイパー軍総大将ウィルノス・ガーレス。
「足下がお留守ですわよ!!そこ!“ポイ捨て”!」
「なんの!“ウォーター・カッター”!」
煙草式魔法四式“ポイ捨て”を発動させる前にウィルノスはピアニスの手から離れた煙草を小さな水の刃で全て切り刻んだ。
「中々やりますわね。でも」
「話している隙があるのか?!“アクア・ブラスト”!!」
強力な水魔法がピアニスに向かってゆく。だが
ジュワァァァァア……
ピアニスは煙草式魔法一式“根性焼き”を発動。相殺した。
「でも私の方が貴方よりも上にいるようですわ。」
余裕の笑みを浮かべるピアニス。それを見てウィルノスは一瞬たじろぐが、すぐに立ち直り魔法の詠唱を始める。
「暴風よ全てをなぎ払え “サイクロン・ブラスト”!!」
圧倒的な暴風の塊がピアニスに向かってくる。ピアニスはそれを見ても動じず、煙草を吸う。
そしてピアニスは吸いかけの缶ピースがセットされたシガレットホルダーを咥えたまま、煙草の先をウィルノス・ガーレスへと向ける。そして
「フッ!」
ピアニスはシガレットホルダーの先に付いていた煙草をまるで吹き矢のように発射した。
「馬鹿め!我が暴風の前にそのような物など…!!」
「…知っておりまして?風という物は温度の低いところから高いところへ流れ込む物。そして」
優雅に語るピアニスに不審に思ったウィルノスは先程ピアニスが発射した煙草を見て驚愕した。
(な、何故だ!?何故あの暴風の中を煙草が突き進んでくる?!)
荒れ狂う暴風の中、ピアニスの発射した煙草はまるで風の影響を受けていないと言わんばかりに、徐々に加速し、ウィルノスへと一直線に向かってくる。
その上、煙草からはメラメラと、まるで炎のように蜃気楼が立ち昇っている。いや、それだけではなく煙草が通過した後の地面が悉く干上がっていたのだ。
「…ば…馬鹿な!!!なんだあの熱量は!!」
「私の煙草式魔法一式によってこの煙草が放つ熱はおよそ一万度。貴方の魔力のみの風など簡単に押し返せますわ。」
なんとピアニスは発射した煙草に煙草式魔法一式“根性焼き”を発動。気温の低い方から高い方へと流れる風の特性を利用し、ウィルノスの放った風魔法を押し返していたのだ。
「くっ…ならばぁ!!!」
ウィルノスは剣を掲げ、魔法の詠唱を始める。
「清き水よ、邪悪なる物を切り伏せ給え!“キリングス・ウォーター”!!」
ウィルノスが剣を振り下ろす。すると、その剣筋に沿ったかのような巨大な水の刃が出現し、ピアニスの放った煙草へと一直線に向かっていく。
そして水の刃と煙草が激突した。
火花を散らし、押し返さんとする水の刃と煙草。
だが
「なめてもらっちゃ困りますわ。言ったはずですわよ。あの煙草の温度は一万度。そんなちっぽけな水で」
水の刃から煙が出始める。なんと、煙草の持つ熱に耐えきれず、刃を形成している水が蒸発しているのだ。
「私の煙草を止められると思わないことですわ!!!」
「な、なにいいいいいいい!!!!」
次の瞬間、水の刃は完全に蒸発し、邪魔する物が無くなった煙草は一直線にウィルノスの脳天へと向かってゆく。
そして
「ぐあああああああ!?!!」
ベイパー国軍総大将ウィルノス・ガーレイは額に巨大な根性焼きを残し倒れた。