煙草にはリラックス効果があることをご存じ?
「では貴方たち、煙草畑の方々を頼みますわ。それと、気になることがあればすぐにこのペンダントを使って私に連絡を。」
三頭のウェアウルフがピアニスの言葉に頷き、セレスティン帝国学園から勢いよく駆けだしていった。
数時間前、アニスに(断れない)お願いをされたピアニスは、自身の使い魔であるウェアウルフを数頭、クリーニアとベイパーが衝突するであろう場所の近くにある煙草畑へと派遣することとなったのだ。ウェアウルフ達にはセブンス家の家紋の入ったペンダントと食料、そして武器をそれぞれ渡した。
ちなみにウェアウルフ達が活動しやすいように現在は夜である。
「お嬢様、夜風は身体に障ります。お早く室内へ。」
メビウスがピアニスを案じ室内へ入るように促す。
「ええ」
ピアニスはそれに従い室内へと戻っていった。
・・・・・
・・・
翌日
正午のチャイムが鳴った瞬間、ピアニスは昨日と同じように中庭へと向かう。
「やあ、待ってたよ。」
そこには昨日と同じようにアニスが1人で中庭のベンチに座っていた。ピアニスは何の迷いもなく隣に座り煙草に火を付ける。
「ふぅー……言われたとおりウェアウルフを3体煙草畑の方へ向かわせましたわ。」
「本当かい?僕のお願い聞いてくれたんだね。ありがとう。」
アニスのわざとらしい笑みにため息をつくピアニス。
「そういうのは良いですわ。ご命令ならば命令と行ってくだされば良いのに。」
「もういいですわそんなことは。それよりも両国の状況はどうなっておりますの?」
ピアニスの質問にアニスのへらへらした表情は一気に引き締まる。
「ああ。ベイパーの兵もクリーニアの兵もあの地点に向け進軍しているようだ。予測としては二日後に。」
「そうですの……せめて煙草農家の方々だけでも無事でいてほしいものですわ。」
・・・・・
・・・
夜
寝室で煙草を吸うピアニス。そんな優雅な時間を過ごしていたピアニスだったが、この夜3本目の煙草が吸い終わったとき、首から掛けているペンダントが赤く輝いた。
「……!」
ピアニスは煙草の火を消し、ペンダントを握り意識を集中させる。このペンダントには遠距離の相手との通信、そして視覚の共有ができる魔法道具である。
ウェアウルフ達は言葉を話せないため、今回はウェアウルフの視覚を共有している。
(ここは……視覚の高さから高台にでもいるのでしょうか。そして…この高台の下にあるのが煙草畑ですわね。)
ウェアウルフと共有した視覚情報から、どうやらウェアウルフ達は見晴らしのよい高台にいるらしく、その他課題のしたには煙草畑と思わしき畑が広がっていた。
そして、煙草畑の向こう側には松明の光らしきが見える。どうやらベイパーかクリーニアの軍がもう到着しているらしい。
(どうやらもう戦争は避けられないようですわね……あら?)
初めは松明の光に目を奪われ気がつかなかったが、ピアニスは煙草畑で動く複数の影を見つけた。だが、闇夜に溶けるような黒い衣装を纏っているところから煙草畑の関係者というようには見えない。
(あれは……!!)
「メビウス!今すぐ出立の用意を!!」
黒い衣装を纏う者達が何をやっているのかが分かったピアニスは急いでメビウスに出発の用意を命じた。