煙草吸いたてのとき、私もむせましたわ
どうも
貧乏人です。
遅れてすいません
「……お久しぶりですわね。マーラス様」
マーラス・セレスティン第三側妃。セレスティン帝国皇帝エヴァンの第三側妃で、エヴァン皇帝に嫁ぐ前は隣国クリーニアの侯爵家令嬢であったが、クリーニアとの友好のため、彼女はこのセレスティン帝国に嫁いできたのだ。
ピアニスは彼女のことが苦手……いや、はっきり言って嫌っている。
出会う度に何かと付けては嫌みのオンパレードは当たり前。すれ違いざまにヒールで足を踏んでくる。などといった嫌がらせを仕掛けてくるのだ。だが相手は第三側妃。このような嫌がらせにもピアニスは耐えなければならない。
「2人して何を話していたのかしらぁ?」
ニタニタと、嫌らしい笑みで近づいてくる。あの顔は何かを企んでいる顔に違いないと、ピアニスの直感は告げる。
「ま、マーラス様、ピアニスには私の視察の様子を……」
「貴方には聞いてないわぁ。」
マーラスのこの一言によってイリーナは黙り込んでしまった。ただ、叱られた子供のように縮こまっているわけではなく、額に幾筋もの青筋を浮かべ、拳はぎっちり握りしめられすぎて血の気が引いて真っ白になっており、どちらかと言いえば湧き起こる怒りを我慢しているようだ。
「さてピアニスさぁん…いや、ヤニカス令嬢と呼んだ方がよろしいかしらぁ?」
「…お好きにどうぞ。して、私に何か?」
「久しぶりにお会いしたのでぇ、ご挨拶したまでよぉ。別に煙草の悪臭がしたからここに来たわけではないわぁ」
と、オブラートに包むようなこともせず、ピアニスに向けて嫌みを言うマーラス。そんな嫌みを気にもせずピアニスはすまし顔でぷかぷかと煙草を吸う。
「ではごきげんよお。そこの放蕩娘とのお茶会楽しんでぇ。」
最後にイリーナにも嫌みを言ってマーラスは従者と共に城の中へと戻っていった。
「はぁ……全くあの人いるからあんまり戻ってきたくなかったのよねぇ…」
イリーナが小声でため息をつきながら言う。ピアニスも同じように煙草の煙と共にため息をつく。
「本当ですわね…あの方嫌みにも程がありますわ。放っておいて欲しいですわ。」
そう言いながら新しい煙草に火を付けるピアニス。そんな光景を見てイリーナはピアニスにこう言った。
「……ねえピアニス。私にも1本頂戴。」
その一言を聞いてピアニスの目は驚きのあまり見開かれる。
「そんな驚かなくても良いじゃん。ピアニスってストレス解消のために煙草吸い始めたんでしょう?私今ストレスたまってるから吸わせて!」
「仕方ないですわね。1本だけですわよ?ですがイリーナ様、お煙草を吸ったことは?」
「ないわよ。でも吸い方ならピアニス見て覚えたから大丈夫よ。」
そう言ってピアニスから煙草を受け取ったイリーナは、煙草に火を付けた。そして煙を吸い、その煙を肺に入れた瞬間
「げぇっほ!ごっほ!!」
思い切りむせた。