ヤニカスと言えども人格までカスじゃありませんわ
時は遡り、魔物使いの男がロックバードに乗り逃げた後、ピアニスの周囲には煙草魔法四式“ポイ捨て”によって焼かれたウェアウルフ達が倒れ伏していた。幸か不幸か、ウェアウルフ達に掛けられていた火耐性の魔法が彼等の命だけは守っていたらしい。だがそれだけだ。
ウェアウルフ達の怪我は酷く、すぐに治療をしなければ1時間待たずに死んでしまうだろう。
“ここまでか”
ウェアウルフ達の脳裏に諦めの一言が浮かぶ。
“まだ生きていたい。”
そうは思うが身体が自由に動かない。
そんなウェアウルフ達にピアニスはまっすぐ向かってくる。止めを刺すきなのだろう。ウェアウルフ達が覚悟を決めるかのように目を瞑る。その時だった。
「貴方達、一度しか聞きません。私に忠誠を誓えますか?」
ウェアウルフ達は一瞬目を見張る。まさか自分たちを打ち倒した相手から、下に付かないかという申し出があったからだ。
前の主人との契約はもう切れている。自分たちは見捨てられたのだ。
ならば、選ぶ道は一つしか無い。
ウェアウルフ達は静かに頷いた。それを見てピアニスは優しげに笑った。
こうしてピアニスに15体のウェアウルフが配下に着いた
・・・・・
・・・
その後、ピアニスはウェアウルフ達を治療し、使い魔の契約を結んだというわけである。
こうしてピアニス達は無事学園へと戻ってきたのだが
「しかしお嬢様、彼等の寝床はどうするので?身体の大きなウェアウルフ達を15体も収容できる施設など学園には……」
メビウスが心配そうな顔でピアニスに問う。そう、ウェアウルフ達の寝床問題である。
ピアニスは現在セレスティン学園の女子寮にて生活している。流石に貴族令嬢や子息が生活する寮とだけあって、一部屋一部屋かなり広い。中でも公爵令嬢であるピアニスの部屋は女子寮の中では一番広い部屋を与えられている。
だが、大柄な魔物であるウェアウルフを全員収容するにはいささか狭い。そもそも、使い魔を同じ部屋に住まわせる貴族などいない。
なのだが
「あなたと、あなたとあなた…そしてあなたも雌ね。なら貴方たちは私の部屋で寝て貰いますわ。」
なんとピアニスは雌限定ではあるが、ウェアウルフ達を自分の部屋で寝泊まりさせるというのだ。ウェアウルフ達も戸惑っている。
「で、雄の方々、申し訳ないのだけど今夜は……」
ピアニスが呪文を唱えた瞬間、周囲の土が盛り上がり、あっという間に平屋建ての形を取る。
「ここで寝て貰うわ。急ごしらえだからすきま風なんかがあるでしょうけど、煙突は付けたから寒かったら中で焚き火しても良いですわよ。メビウス、後で薪を運んであげなさい。」
「か、畏まりました……しかし、学園側にはなんと…」
「学園長には私から説明いたしますわ。さ、貴女たち行きますわよ」
ピアニスに言われ唖然としながらもしっかりとついて行く雌のウェアウルフ達。その光景を雄のウェアウルフ達は呆然と眺めていた。
前々前話のウェアウルフを狼男と表記していましたが正しくは人狼です。もうしわけね!
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